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シンガポール・GST登録の抹消(Cancellation of GST Registration)

1. 必須(強制)抹消が必要なケース

以下のいずれかに該当する場合、30日以内にGST登録抹消の申請が必要です(IRAS規定) :

  1. 課税売上取引がなく、今後も予定がない
  2. 事業が停止した
  3. 事業を他者にまるごと譲渡した
  4. 事業形態が変更された(例えば、個人事業→法人へ移行など)

なお、ACRAの情報からシンガポール税務当局(IRAS)に自動的に伝達されるケース(例:個人事業からパートナーシップへの変更など)があり、この場合は企業側の追加申請は不要となることもあります。

2. 任意で抹消できるケース

抹消が必須ではない企業でも、以下の条件を満たせば自主的に登録抹消が可能です:

  1. 直近12か月の課税売上高や、今後12か月で予測される課税売上高が SGD 1,000,000以下であること(具体的な資料の提出が必要)
  2. GST登録が 任意登録だった場合、少なくとも 2年間は登録状態を維持していることが必要です

3. 抹消申請の流れと処理

  1. 申請方法:承認権限を持つ者が IRASのmyTax Portal にログインし、「GST > Cancel GST Registration」からオンライン申請を行います。
  2. 処理時間:通常その日のうちに承認されますが、場合によっては 1~10営業日かかることがあります。
  3. 抹消の効力発生日:IRASから承認とともに抹消の「Effective Date」が通知されます。

4. 抹消前後の義務

抹消日の前日までは:

GSTを請求・徴収し、GST税務申告・納税を継続する必要があります。

タックスインボイスの発行も可能です。

抹消日以降は:

GSTの請求・徴収は 違法となります。

既存の税請求書(Tax Invoice)には「GST cancelled with effect from (date)」など明記し、GST登録番号や「Tax Invoice」の表記を削除する必要があります。

輸入時にはGST免除系スキーム(MES、IGDSなど)が使えなくなるため、輸入GST支払いの義務が発生します。

最後のGST申告として GST F8(Final GST Return) の提出が求められます。提出期限は、F8に記載された会計期間終了から 1か月以内です。

資産に関しては、最終登録日における 時価に基づいて、GSTを出力税(output tax)として処理する必要があり、特に時価が SGD 10,000 を超える資産については注意が必要です。

記録保存:事業取引の記録は、抹消後も 最低5年間保存する義務があります。

5. 実務上のポイントと留意点

抹消を見越した売上予測が必要:将来の課税売上高が SGD 1,000,000 を上回る見込みがある場合、抹消申請は認められません。予測には契約の解約状況や事業縮小証拠などが必要になります 。

抹消後の再登録リスク:売上が再び SGD 1,000,000 を超えた場合には、再度GST登録が義務付けられる可能性があります。

価格設定・取引文書の修正:抹消に伴ってGSTを含んだ価格や契約内容の見直しが必要となる場合があります。

業務への影響:GSTを扱っていた仕入や請求業務、会計処理の運用変更が伴うため、関係者への事前説明や調整が重要です。

まとめ

項目 内容(更新ポイント)
強制抹消要件 30日以内の申請義務、ACRA経由の自動情報転送が反映
任意抹消要件 売上予測+2年登録維持ルールが改めて明記
申請方法 myTax Portalでのオンライン申請が中心・処理時間は当日~10営業日
抹消前後義務 最終GST F8申告、インボイスの修正、輸入GSTスキームの終了など最新義務を網羅
記録 抹消後も5年保存が必要
注意事項 売上予測、再登録、業務調整など、実務的留意点の補強

(注)上記は、出稿時点の情報であり、最新の実務は変更されている可能性があります。