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シンガポールのWork Permit制度(概要)

本記事では、シンガポール法人がWork Permitで外国人を採用する際の制度について説明いたします。まず、業種共通の手順を説明し、その後、業種別の相違点を解説します。

なお、すでにシンガポール国内でWork Permitにより別の会社で勤務している方を雇用する場合と、新たにシンガポール国外から採用する場合では、勤務開始までのリードタイムが異なります。

目次

1. Work Permit採用の基本手順

Step 1: 事前準備・適格性確認

Step 2: 必要書類の準備

Step 3: オンライン申請

Step 4: In-Principle Approval (IPA) 取得

Step 5: 入国前の手続き

Step 6: Work Permit発行

2. Quota(枠)の計算方法

基本概念:Dependency Ratio Ceiling (DRC)

DRCとは、外国人労働者(WP + S Pass)が占められる最大比率を指します。

計算式

最大外国人労働者数 = (ローカル従業員数 × DRC) ÷ (100% − DRC)

計算例:製造業(DRC 60%)、ローカル従業員10人の場合

= (10 × 60%) ÷ (100% − 60%) = 6 ÷ 0.4 = 15人(WP + S Pass合計)

Local Qualifying Salary (LQS) のカウント方法

ローカル従業員の給与によってカウントが変わります(2024年7月〜 LQS = SGD 1,600)。

月給 カウント
SGD 1,600以上 1.0人
SGD 800〜1,599 0.5人
SGD 800未満 0人

上記の「ローカル従業員10人」は、全員が月給SGD 1,600以上である必要があります。

3. 業種別のDRC・Levy(2025年時点)

DRC(外国人比率上限)

業種 DRC ローカル1人あたり雇用可能数
建設(Construction) 83.3〜87.5% 約5〜7人
造船(Marine Shipyard) 75%(2026年1月〜) 3人
石油化学等(Process) 83.3% 約5人
製造(Manufacturing) 60% 1.5人
サービス(Services) 35% 約0.5人

S Pass サブQuota

業種 S Pass上限
サービス(Services) 10%
製造、建設、Marine、石油化学等 15%

Work Permit Monthly Levy(2025年)

業種 Higher-Skilled Basic-Skilled
製造(Manufacturing) SGD 330 SGD 650
サービス(Services) SGD 450 SGD 650
建設(Construction) SGD 300〜500 SGD 700〜950
造船(Marine Shipyard) SGD 350(2026年〜) SGD 500(2026年〜)

※DRC超過時は、より高いLevyが適用されます。

4. 2025年の主な変更点(参考情報)

項目 変更内容 施行日
雇用期間上限撤廃 従来14〜26年の上限が撤廃され、無期限更新が可能になりました 2025年7月1日
年齢上限引き上げ 新規61歳、更新63歳までに引き上げられました 2025年7月1日
ソース国追加 ブータン、カンボジア、ラオスが追加されました 2025年6〜9月
S Pass最低給与 SGD 3,300(金融SGD 3,800)に引き上げられました 2025年9月1日
S Pass Levy一律化 一律SGD 650に統一されました 2025年9月1日

5. 実務上のポイント

(1) Quotaの更新タイミング

Quotaは毎週土曜に更新され、翌営業日に新しい残高を確認できます。

【重要】Quotaはリアルタイムではなく、CPF納付実績ベースで計算されます。そのため、ローカル採用・退職が即日反映されるわけではありません。通常2〜3週間のラグがあるため、採用計画は余裕をもって設計する必要があります。

(2) Levyの支払期限

Levyは、毎月17日までに支払います。GIROによる自動引落しが推奨されています。

(3) Primary Care Plan (PCP)

建設・Marine・石油化学等(Process)業種では、PCPの購入が必要です。

(4) M-SEP制度

一定条件を満たす企業は、DRC超過により+5%の追加枠を取得できます。

(5) 違反をした場合の罰則

以下の違反をした場合、罰則が科されます。

コンプライアンス違反時の主なペナルティは以下のとおりです。

故意ではない場合でも違反となることがありますので、適切に専門家の判断を仰いでください。

(6) WPの最低給与

Work Permitには法定最低給与が存在しないため、「最低給与規定は無い」と誤解されがちです。しかし、極端に低い給与はMOMにより不適切と判断され、申請却下や監査対象となる可能性があります。

実際には以下の制約があります。

(7) Dormitory/宿舎規制

シンガポールではWork Permit保持者の住居確保は、雇用主の法的義務です。

建設(Construction)・造船(Marine Shipyard)・石油化学等(Process)では、以下への配慮が重要です。

(8) Transfer rules(在星者の他社からの転職時の注意点)

他社WPからの転職の場合、以下の点に注意が必要です。

トラブルが多発するポイントですので、事前に十分な確認をお勧めします。

(9) 業種判定の注意点(サービス vs 製造)

日系企業で最も混乱する論点は以下のとおりです。

Mixed businessの場合は、主業の判定が必要です

サービスに分類されるとQuotaが半分以下になるため、業種判定は非常に重要です。詳細は、後述の「業種判定の仕組み」をご参照ください。

※業種判定の仕組み(サービス(Services) vs 製造(Manufacturing))

① 日系企業で最も混乱する論点は、以下の通りです。

Serviceに分類されると、Quotaが、半分以下になるため重要です。

② 主業判定の仕組み

(i) まとめ:判定フロー

イ) 売上・付加価値の最も大きい事業を特定

ロ) 該当するSSIC Code(5桁)を確認

ハ) ACRAにPrimary SSICとして登録

二) MOMが自動的にセクター分類

ホ) Quota(DRC)・Levy が確定

(ii) 基本原則

主業判定は2段階で決まります。

段階 内容 担当機関
① ACRA登録時 SSIC Code(Singapore Standard Industrial Classification)を選択 ACRA
② MOM申請時 Business Activity Declaration(業種宣言)で確定 MOM

重要)MOMのセクター分類は、ACRAに申告したPrimary Business Activity(主たるSSIC)に基づいて決定されます。複数セクターで事業を行っていても関係ありません。

日系企業で特に注意が必要なのは、「シンガポール法人で何をしているか」であって、グループ全体の事業内容ではない点です。実際の業務内容とSSICが乖離していると、MOMの審査で問題になることがあります。

(iii) 主業判定の基準

ACRAの定義(SSIC選択時)

Principal Activity = 会社が生産する財・サービスの「付加価値に最も貢献する活動」、または会社の活動の中で「最も付加価値の高い活動」

実務的には以下の要素で判断されます:

判定要素 説明
売上構成比 どの事業が最も収益を生んでいるか
付加価値 単なる売上ではなく、粗利・マージンの大きさ
主要資源の配分 人員・設備・資本がどこに投入されているか

複数の主要事業がある場合、最も売上の大きい2つの活動をACRAに登録できます(Primary + Secondary)。

6. 離職・キャンセル時の義務

雇用終了時の手続は以下のとおりです。

7. 業種別の相違点まとめ

業種によってWork Permitの手続で異なる主な項目を整理します。

業種別の特徴

業種 特徴
建設(Construction) 枠が広く、Levyは高めです。研修・PCP必須、MYEありです
造船(Marine Shipyard) 建設に近いですが、DRCは段階的に引き締め中です
石油化学等(Process) 建設に近く、MYEありです
製造(Manufacturing) 中程度の枠で、比較的シンプルな運用です
サービス(Services) 枠が最も狭く、ソース国も限定的です。手続きは比較的軽いです

日系企業のシンガポール進出では、サービス業(飲食、小売、物流、医療等)で進出する場合、DRC 35%という厳しい制約があるため、ローカル採用とのバランスが特に重要になります。また、S-Passの枠の管理も並行して、常時モニタリングが必要となる場合があります。

(詳細)Dependency Ratio Ceiling(DRC)

最も大きな違いはDRCです。サービス業が最も厳しく、建設業が最も緩いという特徴があります。

業種 DRC 実務的な意味
建設(Construction) 87.5% ローカル1人で外国人7人を雇用できます
石油化学等(Process) 83.3% ローカル1人で外国人5人を雇用できます
造船(Marine Shipyard) 77.8%→75% ローカル1人で外国人3〜3.5人を雇用できます
製造(Manufacturing) 60% ローカル1人で外国人1.5人を雇用できます
サービス(Services) 35% ローカル1人で外国人約0.5人を雇用できます

(詳細)Foreign Worker Levy(月額)

建設・石油化学等(Process)系は、技能レベルによる差が大きいです。

業種 Higher-Skilled Basic-Skilled
建設(Construction) SGD 300〜500 SGD 700〜950
造船(Marine Shipyard) SGD 350 SGD 500
石油化学等(Process) SGD 300 SGD 700
製造(Manufacturing) SGD 330 SGD 650
サービス(Services) SGD 450 SGD 650

(詳細)採用可能なソース国

サービス業はソース国が最も限定的です。

業種 採用可能国
建設、Marine、石油化学等 マレーシア、中国、インド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、フィリピン、スリランカ等 + NTS国(ブータン、カンボジア、ラオス等)
製造(Manufacturing) 上記と同様です。職種によりNTS国からの採用が拡大しています(2025年〜)
サービス(Services) マレーシア、中国、香港、マカオ、韓国、台湾が中心です。NTS国は限定的です

(詳細)必須研修・プログラム

業種 必須要件
建設、Marine、石油化学等 SIP必須、安全研修必須です
製造(Manufacturing) 初回WP者はSIP必須です
サービス(Services) SIP不要です(社内オリエンテーション推奨)

(詳細)Primary Care Plan (PCP)

業種 PCP要件
建設、Marine、石油化学等 必須です(ドミトリー居住者含む)
製造、サービス 原則不要です(ドミトリー居住の場合は必要です)

(詳細)Man-Year Entitlement (MYE)

建設・石油化学等(Process)業種には、MYE制度(NTS国・中国からの採用割当)が適用されます。

業種 MYE適用
建設、石油化学等 あり(年間採用枠の管理)
その他 なし

(注)建設・プロセス分野では、MYE制度は段階的に廃止・枠組みが変更されています。2026年時点の最新運用状況(Quota制への完全移行など)をMOM公式サイト等で確認することをお勧めします。

(詳細)Security Bond

対象 金額
非マレーシア人労働者 SGD 5,000
マレーシア人労働者 不要

これは全業種共通ですが、建設・Marine・石油化学等(Process)は非マレーシア人比率が高いため、実務的な影響が大きいです。

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