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シンガポール進出で日本企業が最初に検討すべき5つの論点(その2)~論点① 税務(PE)~

Permanent Establishment(PE)とは何か

PE(Permanent Establishment:恒久的施設)とは、税務上「その国で事業を行っている拠点」とみなされる概念です。ある企業が外国にPEを有すると認定された場合、その国で課税を受ける可能性が生じます。

日本企業がシンガポールに子会社を設立した場合、通常は子会社がシンガポールで課税され、日本本社はシンガポールでは課税されません。しかし、日本本社の活動がシンガポール国内で一定の要件を満たすと、日本本社自体がシンガポールにPEを有するとみなされ、シンガポールでも課税対象となる可能性があります。

逆のケースもあります。シンガポール子会社の活動が日本国内でPEと認定されれば、シンガポール子会社が日本で課税されることになります。

PEの認定基準は、日本・シンガポール間の租税条約(二国間で締結された課税ルールの取り決め)で定められており、「支店PE」「建設PE」「代理人PE」など複数の類型があります。

日本本社が関与するとPEになる典型例

実務で問題になりやすいのは、以下のようなケースです。

ケース1:日本本社の役員・従業員が頻繁にシンガポールで活動する

日本本社の営業担当者がシンガポールに頻繁に出張し、現地で契約交渉や締結を行っている場合、「代理人PE」として認定されるリスクがあります。特に、契約締結権限を持つ者が継続的に活動している場合は要注意です。

ケース2:シンガポール子会社が日本本社の「指示どおり」に動いている

子会社に実質的な意思決定権限がなく、日本本社が価格決定・契約条件・取引先選定などをすべてコントロールしている場合、子会社が「日本本社の代理人」とみなされる可能性があります。

ケース3:日本本社がシンガポール国内に物理的な拠点を持つ

たとえば、日本本社名義でシンガポール国内にオフィスや倉庫を借りている場合、「支店PE」と認定される可能性があります。子会社とは別に、本社名義の契約が存在していないか確認が必要です。

これらのケースでは、「実際にどのような活動が行われているか」という事実認定が重要になります。契約書上の建付けだけでなく、メールのやり取り、出張記録、意思決定プロセスなどが税務調査で確認される可能性があります。

PE認定された場合の影響

日本本社がシンガポールにPEを有すると認定された場合、以下のような影響が生じる可能性があります。

1. シンガポールでの法人税申告義務

シンガポールPEに帰属する所得について、シンガポールで法人税の申告・納税が必要になります。日本で既に課税されている所得であっても、シンガポールで追加課税される可能性があり、租税条約に基づく外国税額控除(二重課税を調整する仕組み)で調整できるとは限りません。

2. 過去に遡っての修正申告・追徴課税

PE認定は、現時点だけでなく過去の事業年度にも遡って適用される可能性があります。数年分の追徴課税に加え、延滞税や加算税が発生するケースもあります。

3. 移転価格の再検討

PEが認定されると、日本本社とシンガポール子会社の間だけでなく、日本本社とシンガポールPEの間の取引価格(内部取引)も移転価格税制の対象となり得ます。論点が複雑化し、対応コストが増加します。

4. 日本側での税務リスク

シンガポールでPE課税を受けた場合、日本側での外国税額控除の適用可否、損金算入の可否など、日本本社の税務処理にも影響が及びます。

PE認定のリスクは、「子会社を作ったから安心」ではなく、「本社と子会社の関係性をどう設計・運用するか」によって大きく変わります。進出前の段階で、親子間の役割分担・契約関係・人の動きを整理し、PEリスクを最小化する設計を検討することが重要です。

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