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[M&A] シンガポール系ホテルが日本進出:M&C・アマン、訪日客増に期待

シンガポール系ホテルが今月、日本に相次いで進出する。17日には大手複合企業ホンリョン・グループ傘下のミレニアム&コプソーン(M&C)ホテルズが、三井不動産子会社の三井不動産ホテルマネジメントと共同で日本1号店となるホテルを開業。シンガポール資本の高級リゾート運営アマンリゾートも22日に新ホテルをソフトオープンする。シンガポール系ホテル2社は世界各地に顧客基盤があり高い集客力を持つ。訪日外国人が増加している日本で宿泊需要の取り込みを狙う。

M&Cと三井不動産ホテルマネジメントは17日、東京・銀座に「ミレニアム三井ガーデンホテル東京」をオープンする。M&Cと、三井不動産ホテルマネジメントが展開する三井ガーデンホテルズの2ブランドを合わせて命名した。客室数は329室で、宿泊料金は1部屋2人で2万5,000~5万8,000円。両社が共同で開発を手掛け、ホンリョンが土地・建物を所有。三井不動産グループが賃借し、運営を手掛ける。投資額は明らかにしていない。

三井不動産の広報担当者によると、先月26日から本格的に予約の受け付けを開始しており、予約状況はおおむね好調。ウェブサイト予約の約半数は海外専用サイトからの申し込みという。同社グループとホンリョンはこれまで、シンガポールに設立した合弁会社TIDを通じて、同国で高級ホテル兼コンドミニアム「セントレジス」の開発などを手掛けてきたが、両社が共同で日本のホテル事業に取り組むのは初めて。三井ガーデンホテルズが海外のホテル会社と組むのも初となる。新ホテル事業にTIDは関与しておらず、M&Cが独自資本で日本に新会社を設立した。シンガポール企業による日本でのホテル買収案件はこれまでにもあったが、日本企業と共同でホテル開発から関与するのは珍しいとみられる。

M&Cは、「ミレニアム」「コプソーン」ブランドで世界24カ国に100軒以上のホテルを所有・運営する。三井不動産は、M&Cが持つ世界規模の顧客基盤を活用して新ホテルに客を呼び込む仕組みを作りたい考え。M&Cも、三井不動産が日本で持つホテル事業のノウハウを活用できる。

三井不動産ホテルマネジメントは、銀座で別に「三井ガーデンホテル銀座プレミア」を運営している。外国人宿泊客が多く客室稼働率は約90%に達しており、「新ホテルも同水準の稼働率を見込んでいる」(同担当者)。日本のホテル業界はインバウンド(訪日外国人)客の増加で追い風が吹いており、長期的に成長が見込めると期待している。

地場高級リゾート・グループ、アマンリゾートも今月22日、日本1号店として東京・大手町に「アマン東京」をソフトオープンする。超高層ビル「大手町タワー」の最上階6階分を占有しており全84室。宿泊料金は1室当たり7万5,000~16万円。アマンの担当者によると、22日から一部の部屋で宿泊が可能となるほか、レストランなどの一部施設が開業する。アマン東京の予約を受け付けている東京の代理店によれば、当初は来年3月1日から全面的に宿泊可能となる予定だったが、計画を前倒して1月から宿泊できるという。アマン・グループは来年、京都で高級旅館も開業する予定だが、「詳細は未定」(同代理店担当者)。

アマンは世界16カ国で約30軒の高級リゾートホテルを展開。徹底した超高級志向が売りで、日本人にも人気が高い。

■シンガポール企業のホテル買収加速
今年に入り、シンガポール系企業が日本のホテル業界への新規参入や事業規模拡大を図る傾向が強まっている。4月には不動産投資信託(REIT)運営会社のアセンダス・ホスピタリティ・トラストが「大阪なんばワシントンホテルプラザ」を89億円で買収。2012年に東京の「ホテルサンルート有明」を買収したのに続く日本で2軒目の買収案件となる。

ホンリョン系不動産開発大手シティー・デベロップメンツ(CDL)の不動産信託部門CDLホスピタリティー・・トラスト(CDLHT)は今月、東京のビジネスホテル「ホテルマイステイズ浅草橋」「ホテルマイステイズ蒲田」の2軒を計58億円で買収すると発表している。

サービスアパートでは、政府系不動産キャピタランド傘下のサービスアパート運営大手アスコットが4月、大手町で三菱地所が建設する高層ビルで最高級ブランド「アスコット・ザ・レジデンス」を運営すると発表。アスコットは日本でサービスアパート3軒を運営しているが、同ブランドとしての日本進出は初となる。

JTBによると、日本では東京五輪が開催される2020年に向けて外資系高級ホテルの開業ラッシュが始まっている。安倍晋三政権の成長戦略による高技能の外国人招致などが定着すれば、東京五輪以降の訪日需要も明るいと見込まれており、ホテル業界にはプラス材料が多い。一方で、客室総数の供給過剰を懸念する声もあり、外資系ホテル、日本国内勢との間で競争が激化しそうだ。(NNA.ASIA [1]