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インドネシア・インドネシアにおける役員と従業員の差異

インドネシアにおいては、役員(取締役とコミサリス)は定款に記載され、従業員とは条件面・待遇面で大きく異なります。会社法上、役員は会社との委任契約を締結し、従業員は会社との雇用契約を締結します。

雇用契約が行われる従業員の場合には労働法が適用されますが、役員には労働法は適用されません。特別な契約・規定がない限り、役員は報酬という形で株主により決定され、労働時間の規定や、有給などの規定などの労働法規定は適用されません。

役員は株主の決定により条件面や退任が決定されます。また、取締役は会社を代表し、会社の意思を決定します。退職金規定も別途株主による決議をもって決定されます。

日本では取締役の報酬について、「1 株主が取締役会へ報酬決定について委任し、2 取締役会が代表取締役へ委任する」方法で、各取締役の報酬額を決定している場合が多々あります(会社法上争いはある者の、通説実務上は認められています。)しかし、インドネシア会社法上、取締役の報酬決定方法は、株主が個々の役員の報酬を決定することを原則とし、例外的にコミサリスへの委任(取締役報酬決定についての委任)が認められています。

一方で従業員は、(特別契約をしているManager等を除いて)残業等の規定、業務時間、有給、法定賞与(THR)、退職金、解雇規制、強制保険への加入義務など、労働法規定が適用されます。従業員への債務(未払い給与や退職金)は、時効の無い債務という扱いがされることもあり、従業員の労務・給与計算などについては、細心の注意が必要です。

従業員から取締役へ昇格させる場合、雇用契約から委任契約への変更となることから、雇用契約期間についての清算や契約・条件面の合意・アップデートを行っておくことを推奨いたします。

日本では使用人兼任取締役の地位が一般的であるもののインドネシアでは珍しく、定款記載の役員・取締役と従業員との差が大きく分かれています。会社と取締役との委任契約や付随契約・合意の中で、従業員としての期間をどのように扱うか、従業員として退職して取締役就任となる場合の退職金について、取締役就任となった期間においても従業員と同様の規定を踏襲するか、など、詳細を定めるべきです。

労働省の判断においては、効力のある定款に取締役として登記された時点で、特別な定め(会社と従業員との間の特別な契約など)が無い限り、労働法管轄外となる。一方で、従業員期間の会社債務(退職金など)は、その者が役員となっても、役員を退任しても請求する権利を有するという判断となっています。