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[香港の確定申告] 法人利得(所得)税の申告と計算について(1)

毎年4月初旬は、香港税務局(IRD, Inland Revenue Department)から法人利得税(Profits Tax)に係る申告フォームが各法人宛に発行される時期です。毎年決まった時期に申告納税すれば良いと思いきや、ここ香港では決算月によって税務申告期限が変わってきます。申告書の提出を怠ると罰則(通常は罰金のみ、悪質な場合は雇用主禁固刑の規定も有)の対象になる可能性があります。日本にならい3月度もしくは中国本土にならい12月度を決算月とされることが一般的かと思いますが、その他の月で決算月を設定した場合も含め、下記の通り申告から納税までの流れと税額の基本的な計算方法について解説していきますので、ご参考頂ければと存じます(利得税には、法人以外の事業税も含まれていますが、ここでは法人利得税に絞って解説します)。

1. 法人利得税申告書(Profits Tax Return – Corporations, Form B.I.R.51)

毎年4月初旬に香港税務局より各法人宛に法人利得税申告書が発行されます。必要事項を記入し、法人利得税計算書(Profits Tax Computation)及びその他の必要書類(監査報告書等)を添付した上で、発行日から1カ月以内に申告する必要がある旨が申告書上に記載されています。実務上は決算月を決定の上、税務申告代理人を選定しておれば、その代理人がクライアントの決算月別のリストを予め作成し、香港税務局に提出することで、その決算月によって別途規定されている税務申告期限に延長されることとなります(表1参照)。

※上記日程については、毎年香港税務局からの通知で延長されることが多く、2010年度では8月16日が申告期限となっています。

話が前後しますが、初年度の申告書は、会社登記完了後約15カ月後に発行されることが通常で、申告期限は発行日から3カ月以内となっています。これは、香港会社条例(Companies Ordinance)によって、初回株主総会は会社設立後18カ月以内に開催される必要があることが規定されていることが所以で、株主総会開催時には通常法人利得税計算を含む決算が固まっている必要があることから、その点を考慮して設定されているものと考えられます。時には16~18カ月後に発行されることもあるので、会計監査が終了しているのに税務申告が完了していないことに対して何となく焦燥感に駆られる方は、香港税務局に問い合わせて早目の発行を依頼することも可能です。

ここで、課税対象所得がない、もしくは損失で申告した場合、通常香港税務局から法人利得税に係る指示書(Profits Tax, Form I.R.C.1812)が発行されます。これは、事業を開始していない休眠状態の法人、もしくは課税対象所得(繰越損失がある場合はその相殺前の所得を指す)を創出していない法人については、申告書の申告期限通りの提出を要求しない旨を示したもので、①課税対象所得が発生した場合は、会計年度末から4カ月以内に、また、②不動産を売却した場合は、その売却日から1カ月以内に香港税務局へ通知する必要がある旨や、7年間の会計資料保管義務等について説明が記載されています。また、赤字続きであったとしても、調査という形で香港税務局から申告書が発行される場合がありますが、受領後は赤字であろうが速やか(原則発行から1カ月以内)に申告が義務付けられます。

余談ですが、香港会社条例で規定されている会計監査と香港税務条例で規定されている税務申告は確かに別の手続であり、会計監査だけ完了し、法人利得税計算等の税務申告に係る手続だけをなおざりにしておくケースがございますが、たとえ赤字続きで税務申告義務が一時的にないとしても、税務局からの突然の調査への対応や黒字転換した際は、結局過去に遡ってすべての税務申告を完了する必要があるので、毎年タイムリーに会計監査と税務申告(計算書のみ)までは完遂しておくことをお奨めします。

2. 法人利得税申告書の記入事項(原則英語、申請すれば中国語繁体字版も発行可能)

申告の際、香港税務局はすべての法人に対して監査報告書及び監査済決算書の提出を義務付けています。支店や駐在事務所については、監査報告書の提出は義務付けられていないため、未監査の決算書を提出することとなります。

3. 確定税額通知書(Assessment Demanding Final Tax & Notice for Payment of Provisional Tax, Form I.R.C.1931)

申告後、香港税務局は、提出された申告書、計算書、及びその他必要書類を基にして、法人利得税を算出し、計算結果と共に確定税額通知書を各法人宛に送付してきます。この通知書では、翌年度分の税金も前年実績を基準に算定されているので、営業開始初年度(課税利益発生時)においては、予定納税制度(Provisional Tax)の下、最初の2年分をまとめて納税する必要がある点にご留意ください。また、実際の納税期限は、確定税額通知書上に明記されていますが、例えば、決算期が7月の場合、翌年4月末日までに申告すると大体翌年8~11月頃に通知書が発行され、当年度分と翌年度予定納税分合計額の75%を翌年1月まで、残りの25%を翌年4月までに納めることが要求されます(表2参照)。なお、支払った翌年度予定納税は、翌年度の確定税額から控除される、またはその確定税額を超える場合や、課税対象所得自体が発生しなかった場合は、香港政府発行の小切手にて還付されます。

一方、決算期が7月の場合で、翌年4月末日までに申告、とここまでは上述と全く同じ状況なのですが、その後翌年7月に通知書が発行され、翌年11月初旬に当年度分と翌年度予定納税分合計額の100%を納めることを要求されるといった、イレギュラーなケースも稀にあるので、注意が必要です。

4. ホールド・オーバー(Holding Over)

上述の通り、予定納税とは、翌年度の課税対象所得が当年度の確定税額の基となった課税対象所得と同額と仮定し納税するものですが、ある一定の条件の下、香港税務局に申請することでその支払いを減額することが可能です。申請期限としては、①予定納税期限の28日前まで、または、②確定税額通知書の発行日から14日以内のいずれかで、遅い方の日となります。なお、条件としては、①当年度の見積課税対象所得が、前年度の90%未満の見込みであるとき(8カ月以上を網羅した署名済み月次決算書を添付する必要あり)、②前期までの繰越損失が考慮されていない、または誤っているとき、③納税者が事業を廃止している、またはする予定であり、前年度の課税対象所得よりも少ないと見込まれるとき、④パーソナル・アセスメント選択しており、その結果税額が少なくなる見込みのとき、または、⑤前年度の税額査定について、香港税務局に異議を申し立てているとき、となっています。

ここまでは法人利得税の申告から納税までの流れについて要約解説しましたが、イメージを掴んで頂けましたでしょうか。次回は税額の基本的な計算方法について解説していきます。