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香港・2023-24年度香港予算案

2023/24年度予算案で財政司長は、下記の税制措置を提案した。当該措置の全ては施行前に、関連する法規の修正を必要としている。

当該法案及び実施内容のハイライトは下段に示されている通りである。よくある質問に対する回答(FAQ [1])及び当該措置が実施された場合に、上記の各項目が如何に納税義務者の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減するかを示す例示 [2]も併せて提供されている。

当該措置が実施された場合の給与所得税並びにパーソナル・アセスメントの税額を計算したい方は、香港政府によって提供されている納税額自動計算プログラム [3]を使用することが可能。

2022/23年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減

財政司長は、2022/23年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメント [15]の税額に対し、当該税年度に限定して、6,000ドルを上限とする100%の減税措置を提案した。当該減税措置の実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。

利得税(法人・個人事業)に係る税額控除上限額は、事業単位毎に適用可能である。給与所得税に対する控除上限額は、納税義務者毎に適用可能であるが、夫婦で共同申告(ジョイント・アセスメント)を行う場合は、夫婦単位毎に適用される(すなわち、合計で6,000ドルの控除上限額)。パーソナル・アセスメントにおいて、納税義務者個人もしくは既婚者で配偶者と別々の申告を選択している場合、個々人に対して当該控除上限額が適用される。夫婦単位でパーソナル・アセスメントを選択する場合は、6,000ドルの控除上限額が夫婦単位毎に適用されることとなる。

当該減税措置は、資産所得税には適用されない。賃貸収入がある個人は、パーソナル・アセスメントを適用できる場合 [16]、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。

給与所得税及び利得税(法人・個人事業)それぞれに課税される納税義務者(パーソナル・アセスメントを適用できない場合)は、それぞれの税金に対して当該減税措置を享受することができる。事業収入や賃料収入のある個人でパーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。当該ケースの場合、パーソナル・アセスメントを選択しない場合、享受しうる減税額とは異なる可能性がある。正確な減税額は、ケース毎に判断される。香港税務局は、パーソナル・アセスメントの選択が納税額を減額できるかどうかをケース毎に確認し、最も有利な方法で納税義務者を査定する。

パーソナル・アセスメントの適用を希望する場合、納税義務者は、2022/23年度給与所得税申告書(BIR60)の項目7に記入しなければならない。事業収入もしくは賃料収入がなく、給与所得のみの個人は、パーソナル・アセスメントを選択する必要がない。

当該減税措置は、2022/23年度の税額査定における納税義務者の納税債務を軽減する予定。納税義務者は例年同様、2022/23年度利得税(法人・個人事業)申告書並びに給与所得税申告書を提出しなければならない。関連法案の成立後、香港税務局は、最終査定において当該減税措置を有効とする。当該法案の成立前に発行された2022/23年度の最終税額査定書に関して、香港税務局は当該法案の成立後に再度査定を実施する予定である。これに対し、納税義務者は特段申告や照会を香港税務局にする必要はない。

当該減税措置は、2022/23年度最終税額に対してのみ適用され、同年の予定納税額に対しては適用されない。従って、当該減税措置とは区分して、納税義務者は依然として予定納税額を期限通りに納付する必要がある。既に納付済みの予定納税額は、2022/23年度最終査定額及び2023/24年度予定納税査定額に対する納付に対して充当される。万が一、超過残額がある場合は還付されることとなる。

課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)

評価年度 以前(2017-18年度まで) 現行(2018-19年度以降)
課税所得純額
(累進幅)香港ドル
税率 課税所得純額
(累進幅)香港ドル
税率
第1段階 45,000 2% 50,000 2%
第2段階 45,000 7% 50,000 6%
第3段階 45,000 12% 50,000 10%
第4段階 50,000 14%
135,000 200,000
残額 17% 17%

人的及び所得控除各項目の増額(※従前の項目は前年度より変更無)

評価年度
単位:香港ドル
2017/18年度
(以前)
2022/23年度
(現行)
2023/24年度
(予定)
人的控除
基礎控除(独身) 132,000 132,000 132,000
基礎控除(既婚者) 264,000 264,000 264,000
寡婦(夫)控除 132,000 132,000 132,000
子供扶養控除
第1子から第9子まで各一人当たり 100,000 120,000 130,000
誕生年における追加控除 100,000 120,000 130,000
兄弟(姉妹)扶養控除 37,500 37,500 37,500
父母祖父母扶養控除
父母祖父母扶養控除
60歳以上または60歳未満の障害者 46,000 50,000 50,000
55歳~59歳まで 23,000 25,000 25,000
付加父母控除祖父母控除
(年間を通じて納税者と同居している)
60歳以上または60歳未満の障害者 46,000 50,000 50,000
55歳~59歳まで 23,000 25,000 25,000
障害者扶養控除 75,000 75,000 75,000
自己障害者控除 75,000 75,000
所得控除
自己学習費用税額控除年間上限額 100,000 100,000 100,000
老人介護施設費用控除 92,000 100,000 100,000
住宅借入金利息控除年間上限額 100,000 100,000 100,000
MPF自己負担控除年間上限額 18,000 18,000 18,000
適格医療保険制度任意負担控除額(※2019-20年度より追加された項目) 8,000 8,000
適格繰延(据置)年金MPF任意負担控除額(※2019-20年度より追加された項目) 60,000
住宅家賃控除額(住宅不動産無所有が条件)(※2022-23年度より追加された項目) 100,000 100,000
寄附金控除=下限100~上限(課税所得総額-所得控除-減価償却費)×35%

子供扶養控除の増額

財務司長は、2023/24年度から子供扶養控除額を増額することを提案している。子供一人当たりの基本子供扶養控除及び誕生年度における追加子供扶養控除の両方が、現在の120,000ドルから130,000へ引き上げられる。当該増額後、子供が誕生した年における子供扶養控除額は260,000ドルとなり、それ以降の年度は130,000となる。

関連する法規の制定及び施行後、香港税務局は、2023/24年度の予定納税額を計算する際に、新しい子供扶養控除額を自動的に適用する。納税者は、2022/23年度の給与所得税申告書を完成させる際に子供扶養控除を申告するだけでよく、別の申請を行う必要はない。詳細はFAQ10~12 [17]並びに例示3 [2]を参照頂きたい。

電波利用料の所得控除

財務司長は、電気通信ネットワーク事業者が、将来的に入札する無線スペクトルに対して支払う電磁波スペクトル(周波数)利用料について、課税所得控除を提供することを提案している。

雇用主による65歳以上の従業員に対する任意のMPF拠出に対する所得控除の増加

財務司長はまた、雇用主が65歳以上の従業員に対して実施した任意のMPF拠出金に対する課税所得控除を、現行の100%から200%に引き上げることを提案している。

生計面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

2023/24年度については、①18歳以上の香港永住者に対する5,000ドルの電子消費券の支給、②課税対象となる個々の居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1及び第2四半期に各々最大1,000ドルを免除、③適格対象となる居住用不動産の電力口座所有者に対し、個々の口座当たり1,000ドルの電気料金補助金を交付し、毎月50ドルの電気料金支援金の交付を2025年末まで継続、④公共交通費用補助計画(Public Transport Fare Subsidy Scheme)により、元々公共交通機関の月額利用額400ドル以上を対象に月額400ドルを上限、2022年5月から月額利用額200ドル以上を対象に月額500ドルを上限として、利用額の3分の1を返金補助しているが、2023年10月まで延長特別措置、⑤総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)や高齢者手当(Old Age Allowance)、高齢者生活手当(Old Age Living Allowance)並びに障害者手当(Disability Allowance)などの各種社会保障給付額を半月分追加給付し、就労家族手当(Working Family Allowance)についても同様の措置が適用、⑥2024年度香港中等教育修了試験(Hong Kong Diploma of Secondary Education Examination: HKDSE)を受験する学生の受験料を政府予算から拠出、⑦女性の能力開発支援を強化するために1億ドルを割当、⑧特別なニーズを持つ未就学児への支援向上のため、第一層(Tier 1)支援サービス恒常化を目指し年間約1億7,000万ドルの経常支出、⑨高齢者や障害者への恒常的な支援計画を推し進めるために13億ドルの経常支出、並びに⑩慢性疾患共同治療パイロット計画(Chronic Disease Co-Care Pilot Scheme)や高齢者医療券措置(Elderly Health Care Voucher Scheme)のための予算を確保し、中医薬発展基金(Chinese Medicine Development Fund)への5億ドルの追加拠出、などの措置が実施され、これらの他にも市民の生計を支援すべく、逐次政策を策定していく予定である。

経済面に関する一時優遇措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

2023/24年度に関しては、⑪香港における大規模イベント開催のために2億5,000万ドルを拠出しつつ、更なる大規模イベント、国際会議や展示会の開催促進に3億ドル、香港のアピールのために5,000万ドルを割当、⑫課税対象となる個々の非居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1及び第2四半期に各々最大1,000ドルを免除、⑬中小企業によるデジタル化を援助するため、デジタル化支援パイロット計画(Digital Transformation Support Pilot Programme)の開始に5億ドルを確保、⑭香港政府のサービスアプリ智方便(iAM Smart)の利用者体験の改善に2億ドルを充当、⑮大学と研究期間による生命健康科学技術専門研究所の設立援助に60億ドルを拠出、⑯AIや量子技術など先端技術分野の基礎研究の強化に30億ドルを割当、⑰スマートライフを促進するスタートアップ企業を育成するため、サイバーポートに2億6,000万ドル超を注入、⑱サイエンスパーク企業向けの科学技術企業投資基金(Corporate Venture Fund)へ4億ドルの増資及び共同起企業加速計画(Co-acceleration Programme)に1億1,000万ドルの投入、⑲香港へのファミリーオフィスの誘致に香港政府投資促進機関であるInvestHKに1億ドルを提供、⑳ハイエンド海運サービス業界の研究及び交流のために2,000万ドルを割当つつ、海運及び空運人材訓練基金(Maritime and Aviation Training Fund)へ2億ドルを注入、㉑香港企業の新興市場における商機開拓を支援すべく貿易発展局HKTDCへ5億5,000万ドルを提供、㉒ブランディング、国内市場の更新と開拓のためのBUD基金(Dedicated Fund on Branding, Upgrading and Domestic Sales)へ5億ドルを投入、㉓大湾区グレーターベイエリアでの芸術的演出や創作の支援に1億5,000万ドルと創意智優計画(CreateSmart Initiative)に5億ドルを注入、などの措置が実施され、これら以外にも土地開発や環境関連などと連動した、住みよい都市を目指した幅広い優遇支援措置が取られる予定である。

その他の措置や一部増税(※個別に法改正や既に実施済み)

2023/24年度においては、環境問題に更に積極的に取組み、㉔水素燃料の2階建てバスや大型車両の走行試験に2億ドルを割当、㉕電気フェリーと関連する充電ステーションの建設・試験を行う港湾フェリー事業者への補助金として3億5,000万ドルが計上、㉖公共賃貸住宅の生ごみ回収試験制度を拡張して関連施設を増設するために、6,200万ドルを追加投資、㉗建設関連プログラムの参加者に対するOJT手当支給に1億ドルが追加拠出、㉘建築測定研究所(Building Testing and Research Institute)の設立と先進建設産業ビルの建設、モジュラー統合建築(MiC: Modular Integrated Construction)の供給に対し7,500万ドルが投入、㉙過年度に引続き、元々65歳以上の申請要件が修正され、香港居住者で60歳以上の高齢者を対象とした銀色債券(Silver Bond)も500億ドルが発行され、前々年度において発表された、向こう5年間の間で環境配慮型の事業に使途が限定された緑色債券(Green Bond)1,755億ドルの発行のうち、次年度中に150億ドル発行、その他、㉚健康促進を考慮しタバコに対する物品税が1本当たり60セントの増税、㉛2023/24年度の土地売却計画、鉄道物件開発、民間開発・再開発計画及び市区再建局プロジェクトによる住宅用地20,000戸分の12ヶ所、また、商業用地3ヶ所と工業用地3ヶ所において、それぞれ約20万平方メートルと約17万平方メートルの建設用地が供給され、今後5年間で72,000戸以上の民間住宅用地が確保される。2023年以降の5年間における毎年平均の供給件数は約19,000戸強の予定で、向こう3-4年の新たな民間住宅の供給見込みは約10万5,000戸の予定、一方で、約36万戸の公営住宅のための住宅用地が供給される予定である。

Scale 2(第二標準税率)における従価印紙税率の累進幅を調整

財務司長は、Scale 2(第二標準税率)における税率での従価印紙税が課される累進幅を調整することを提案した。香港政府は、提案された調整事項を進めるべく、2023年印紙税(改正)条例草案(以下「条例草案」)を立法会へ提出する。不動産購入者ができるだけ早く、当該措置の恩恵を享受できるようにするために、行政長官は、公共収入保障条例(第120章)に基づいて、2023年公共収入保障(印紙税)令(以下「命令」)を策定し、当該条例草案が制定されるまでの間も完全な法的効力を有することとなる。当該命令に従い、当該条例草案に係る立法会における審議が実施される予定だが、以後施行されるScale 2の従価印紙税率を対象とする新たな税率の累進幅は、2023年2月22日の午前11時以降に締結された居住用もしくは非居住用不動産の売買証書に適用される。詳細は従価印紙税 [18]並びに関連するFAQ [19]を参照頂きたい。

特別追加サッカー賭博税を徴収

財務司長は、2023/24年度からの5年間、賭博税条例(第108章)に基づき、現在の賭博税率は変更されないまま、香港ジョッキークラブに年間24億ドルの特別追加サッカー賭博税を課すことを提案した。

原文:IRD : 2023-24 Budget – Tax Measures [20]