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[実務入門] (20) 税効果会計(実践編)

今回も、税効果会計について説明していきます。税効果会計とは、簡単に言うと、税務と会計のずれを調整するための会計上の修正のこと。そのずれには2種類あり、将来的にそのずれが解消される差異である一時差異と、そうではない永久差異があること。これらを前回までで説明してきました。

今回はその一時差異の具体的な内容を解説していきます。具体的な例を見ていけば、税効果会計を理解しやすくなると思います。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1)貸倒引当金

第18回で例示しましたように、売掛金や受取手形に対して設定する貸倒引当金の繰入額は会計上費用として計上されます。一方で中国の税務上は貸倒引当金の計上が特定業種にしか認められていないため、損金として算入することができません。したがって、会計上で認識した貸倒引当金繰入額については税効果を認識することになります。

(2)棚卸資産の評価

仕入れた棚卸資産がその保管中に品質が悪化したり、陳腐化したことで市場価格が下落して製品の販売価格が原価より低くなったような場合、棚卸資産の評価損失引当金を会計上認識します。しかしながら中国の税務上はそのような棚卸資産評価損失引当金の計上は認められていないため、その繰入額は損金として算入することができません。したがって、会計上で認識した棚卸資産評価損失引当金繰入額については税効果を認識することになります。

(3)経費が損金算入限度額を超えるケース

広告宣伝費については、税法上当年度の売上高の15%までの損金算入が認められています。たとえば当年度の売上高が100,000元とすると、広告宣伝費が損金として認められるのは15,000元までとなります。ここで当年度に20,000元広告宣伝費を実際に支出した場合には損金算入限度額の超過額が5,000元ありますが、この部分は以降の年度に繰り越して控除することができます。つまり、仮に翌年度の広告宣伝費が損金算入限度額いっぱいに発生しなかった場合には、翌期の課税所得を減少させることができるのです。このとき、20,000元のうちの5,000元は当年度の会計上の費用になりながら、税務上は翌年度の損金になるので会計上と税務上にずれが生じます。これに対して税効果を認識します。
 同様に従業員教育経費支出については賃金総額の2.5%まで損金算入が認められています。これについても超過部分は将来減算一時差異となり、税効果を認識します。

(4)訴訟損失引当金

たとえば訴訟を受けていて、敗訴が確実などの見込みによって将来に損失が発生する可能性が高い場合、会計上見積負債(偶発損失引当金)を計上します。一方、税務上は損失が確定していないため、損金計上できません。したがって当該差異(訴訟損失引当金繰入額)については税効果を認識する必要があります。

このほか、実現主義で認識した収益と発票主義で認識した益金で差がある場合、繰越欠損金が存在する場合など、いろいろと一時差異は存在します。中国の会計と税務双方を正しく認識することが、税効果会計の理解につながると考えます。

次回は、金融商品関係について解説したいと思います。