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[国際税務入門] 恒久的施設(PE)その1

国境を越える取引や活動を行なう場合、外国で発生した所得については、通常、自国だけでなく、その所得が発生した外国(=源泉地国)が課税を行ないます。
これを源泉地国課税といいますが、源泉地国で発生した外国企業の事業所得については、外国企業が源泉地国に恒久的施設を有するか否かにより課税の有無が決まります。
これは、恒久的施設がなければその活動による事業所得に対しては課税をしないとする、事業所得に関する国際課税のルールがあるためです。
恒久的施設は、PE(Permanent Establishment)とも言い、この事業所得に関する国際課税の原則を、PEなければ課税なし、などと言うこともあります。

PEとは

PEの範囲については、各国の国内法、二国間の租税条約、OECDモデル租税条約、国連モデル租税条約のそれぞれに規定があります。課税関係の確認のためには、国内法と他国との租税条約の規定を確認する必要がありますが、多くの国の国内法や二国間の租税条約は、OECDモデル租税条約の規定に沿った内容となっているため、ここではOECDモデル租税条約の規定を中心に紹介します。
OECDモデル租税条約では、PEを「事業を行う一定の場所であり、企業がその事業の全部または一部を行っている場所」と定義しています。簡単に言うと、外国企業が営業を行なっているとみなされる場所のことです。PEとされるものには次の3種類があるとされています。
(1)支店PE
事業の管理場所、支店、事務所、工場、作業場、鉱山・石油又は天然ガス等天然資源を採取する場所を通じて事業が行なわれている場合、その場所が外国企業のPEとされます。

(2)建設PE
建設工事現場又は建設若しくは据付工事で12ヶ月を超える期間存続するものを外国企業のPEとしています。
建設PEは、二国間の租税条約では、日中租税条約のように、これら工事の存続期間を6ヶ月超としている場合もあります。

(3)代理人PE
企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使し、企業に代わって行動する者(従属代理人といいます)は、その外国企業のPEとして取り扱われます。
但し、通常の方法で業務を行なう仲立人、問屋その他独立の地位を有する代理人(独立代理人といいます)を通じて事業活動を行なっている場合には、PEとはなりません。

なお、上述のような、事業を行なう一定の場所がある場合でも、次のようなものは、準備的・補助的な活動であるとしてPEには該当しないこととしています。
a)企業に属する物品または商品の保管、展示または引渡しのためにのみ施設を利用すること。
b)企業に属する物品または商品の在庫を、保管、展示または引渡しのためにのみ保有すること。
c)企業に属する物品または商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有すること。
d)企業のために物品若しくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有すること。
e)企業のためにその他の準備的または補助的な性格の活動を行なうことのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有すること。
f)aからeを組み合わせた活動を行なうことのみを目的として、事業を行なう一定の場所を保有し、また、その活動の全体が準備的または補助的な性格のものであること。

PEの有無の判断は、上述のような規定をもとに判断されますが、基準が抽象的であることから、PEの解釈や適用につき税務当局と納税者との間で論争となることがあります。
このため、OECDは今年2月までモデル租税条約にある恒久的施設の定義等に関し意見募集を行なっており、2014 年を目標に恒久的施設の規定に関する解釈をアップデートすることとしています。