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[実務入門] (23) 外貨建取引の会計 (3)

前回は外貨建取引の取引発生時と月末の会計処理についてみていきました。原則として、取引発生時の為替相場による元換算額をもって記録するというものです。また、為替予約をしたとしても「旧」企業会計準則では簿外処理がなされるというものです。月末では、売掛金や外貨預金を月末時点での為替レートによって換算し、換算によって生じた差額を為替損失に計上するというものでした。そこで今回は、外貨建取引の決済時の会計処理についてみていきます。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1)決済時の会計処理(為替予約なし)

 外貨建金銭債権債務の決済に伴って生じた損益は、当期の為替損失として処理します。

[例] A社は、2011年11月30日に製品をドル建てで1百万ドル輸出した。A社は取引発生時の為替相場を使用して継続的に記帳している。直物為替相場の推移は次の通りである。
 取引実行日(11月30日) 1ドル=6.4元
 月末(12月31日) 1ドル=6.35元
 月末(1月31日) 1ドル=6.35元
 決済時(2月28日) 1ドル=6.2元

会計処理

  1. 取引実行日(11月30日)
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)
  2. (翌)月末(12月31日)
    借方; 為替損失 50,000 貸方; 売掛金 50,000 (元)
  3. 決済時(2月28日)
    借方; 為替損失 150,000 貸方; 売掛金 6,350,000 (元)
    借方; 現金 6,200,000

(2)月末の会計処理(為替予約あり)

[例] A社は、2011年11月30日に予定されている製品のドル建輸出に関して、元高による決済金額の増加を懸念して、この取引をヘッジするための為替予約を11月15日に行った。A社は取引発生時の為替相場を使用して継続的に記帳している。取引量及び価格の予想に基づいて、2月末を決済期日とする為替予約を1百万ドル行い、為替予約相場は1ドル=6.37元であった。直物為替相場の推移は次の通りである。11月30日に2月末を決済日とする、1百万ドルの輸出取引が行われた。
 為替予約締結日(11月15日) 1ドル=6.405元
 取引実行日(11月30日) 1ドル=6.4元
 月末(12月31日) 1ドル=6.35元
 月末(1月31日) 1ドル=6.35元
 決済時(2月28日) 1ドル=6.2元

会計処理

  1. 為替予約締結日 (11月15日)
    仕訳なし
  2. 取引実行日(11月30日)
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)
  3. (翌)月末(12月31日)
    借方; 為替損失 50,000 貸方; 売掛金 50,000 (元)
  4. 決済時(2月28日)
    借方; 為替損失 △20,000 貸方; 売掛金 6,350,000 (元)
    借方; 現金 6,370,000

(3)「新」企業会計準則上の月末の会計処理(為替予約あり)(ご参考)

時価評価した金融派生商品勘定は決済時にすべて取り崩します。
[例] 上記(2)に加えて当該為替予約の時価評価額
 為替予約締結日(11月15日) 0
 取引実行日(11月30日) 0
 月末(12月31日) 40,000元(益)
 月末(1月31日) 10,000元(損)

会計処理

  1. 為替予約締結日 (11月15日)
    仕訳なし
  2. 取引実行日(11月30日)
    借方; 売掛金 6,400,000 貸方; 売上 6,400,000 (元)
  3. (翌)月末(12月31日) (元)
    借方; 為替損失 50,000 貸方; 売掛金 50,000
    借方; 金融派生商品 40,000 貸方; 金融派生商品評価損益 40,000
  4. (翌)月末(1月31日) (元)
    借方; 金融派生商品評価損益 10,000 貸方; 金融派生商品 10,000
  5. 決済時(2月28日) (元)
    借方; 為替損失 △20,000 貸方; 売掛金 6,350,000
    借方; 現金 6,370,000
    借方; 金融派生商品評価損益 30,000 貸方; 金融派生商品 30,000

次回も引き続き外貨建取引の会計についてみていきます。人民元以外の通貨で会計帳簿に記帳する場合についてふれます。