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中国・広東省で試行が進められる全面的デジタル化電子発票の普及について

中国の増値税はこれまで一貫して紙媒体の発票現物を厳格に管理する方法が採られていましたが、ここ数年「電子発票」という言葉がよく聞かれます。タクシー料金や飲食の支払いで、携帯でQRコードを読み込んで普通発票を取得する等は、一般消費者が身近に触れている電子発票の一種です。

目下、会社間で発行、受領される増値税専用発票について、「全面的なデジタル化電子発票」(「全電発票」と略称されている)の使用普及が進められており、発行試行地域には広東省(深圳市を除く)、内モンゴル自治区、上海市、四川省が含まれ、今年後半ではこれらの試行地域内の企業より発行される全電発票の受領可能地域を全国に拡大しています。

広東省税務局による関連の通知文書内容等から、全電発票の概要を簡単にご紹介します。

背景と経緯

2021年3月に国務院弁公室より発布された《税収徴収管理改革を更に深化させることについての意見》では発票の電子化改革を税収徴収管理の更なる“放管服”(手続きを簡素化、管理を刷新し、サービスを最適化する行政の政策方針)改革の突破口にするとされており、国家税務総局は2021年12月1日より広東省(深圳市を除く)の一部地区にて試行を開始し、2022年4月にはシステムをアップグレード、6月より順次全電発票の受領可能地域を全国へ拡大すると公布し、10月28日の通告発布により、広東省(深圳市を含まない)の新規設立登記された納税人は全電発票発行試行範囲に組み入れるとしています。

概要

  1. 電子発票サービスプラットフォームのログイン [1]はこちら。発行試行地域には2022年12月時点で広東省(深圳市を除く)、内モンゴル自治区、上海市、四川省が含まれる。
  2. 従来の紙媒体の発票との違い
    • 発票発行のための「税控専用設備」(プリンターとUSBキー等)が不要となり、この購入費用を削減できる。
    • 企業が税務局にて発票の税目の査定や空白発票の受領が不要となる。桁数や枚数の制限もなくなり、発行総額に対する管理となる。
    • 電子発票サービスプラットフォームにおいて、発行、交付(引き渡し)、検索等がワンストップで管理でき、発行後の電子発票が自動的に販売側、購入側の電子発票サービスプラットフォームのアカウントに記録され、人の手によるやり取りを省略することができる。
  3. 電子税務手続きのネットワーク環境が備わっていない地域を除き、基本的に試行地域の企業の全電発票を受領することができる。
  4. 発票の様式は簡略化され、購入者、販売者の情報について、納税者識別番号と納税者の名前のみを記入する。紙様式の場合のカーボンコピーは、全電発票には存在しない。
  5. 広東省の納税者は電子発票サービスプラットフォームを通じ、全電発票、紙媒体の専用発票、紙媒体の普通発票を発行することができる。
  6. これまで紙媒体の発票は、企業の取引規模に応じて桁数や枚数に制限があったが、全電発票の発行は発行総額により管理され、発票の発行限度額は動態的に調整することが可能である。
  7. 電子発票サービスプラットフォーム税務デジタルアカウントを通じて自動的に全電発票を受領者に対し交付することができ、電子メール、QRコードなどを通じて交付することもできる。
  8. 広東省(深セン市を除く)では2022年10月27日から新たに設立登記された納税者が全電発票の発行試行範囲に含まれ、他の納税者は手配に応じ業種別、地域別、段階別に試験を実施する。
  9. 広東省の試験納税者は全電発票の発行試行の対象とされた日から、増値税電子専用発票及び増値税電子普通発票を受領・使用せず、受領済みの増値税電子専用発票及び増値税電子普通発票は引き続き2022年12月31日まで使用することができる。

深圳市の通知

深圳市は経済特区として独自の立法・行政システムを持つと言われていることからか、今回の全電発票の試行地域の広東省の中には組み入れられておらず、2022年12月時点で、全電発票を発行する試行地域には指定されていません。但し、2022年6月21日以降、広東省、内モンゴル、上海の3試行地域の発行する全電発票を受け取ることができるとし、全電発票はこれまでの増値税専用発票と法的有効性は何ら変わらないとしています。今後、国の全電発票発行試行地域全国拡大政策と、省級税務局による試行地域の具体政策の実施に応じて、深圳市の試行を開始するとしています。