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中国・海南自由貿易港の更なる貿易自由化と利便化

海南自由貿易港は、2025 年12月18日より正式に全島を「域内の税関外」である税関特殊管理区域として、ゼロ関税等の自由化・利便化政策を実行し運営される(=「封関運営」)ことが党中央より認可された旨が、7月23日国務院新聞弁公室より発表されました。この政策は「一線開放、二線管理、島内自由」を基本特性とした制度で「封関運営」開始日より実施されます。税制と通関制度に関する新たな通知が発布され、島内で条件を備え認定された企業等が享受でき(=「享受主体」)、これまでの“ゼロ関税”政策に関する一連の通知は廃止とされるなど現行政策に比べ自由化と利便化の効果を高めるとされています。

企業所得税、個人所得税、輸出入関税・増値税に関する優遇については、『海南自由貿易港の税制優遇について [1]』もご参考ください。

財関税[2025]12号:一線、二線の定義と優遇税制

1. 『一線』とは

海南自由貿易港と中華人民共和国の境外その他の国家と地区の間に設置される。

“一線”経由で海南自由貿易港に搬入される貨物で、国家が輸入を禁止するか法律、行政法規により免税或いは保税を与えないと明記されるものを除き、以下の規定に基づき手続きする。

1-1. “一線”輸入時課税する貨物のリスト管理を行い、リスト内の輸入貨物に対し規定通り関税、増値税、消費税を徴収する。(輸入課税商品リスト [36]

1-2. 海南自由貿易港に登記登録する次の「享受主体 [37]

「享受主体」が自ら輸入関税・輸入段階の増値税と消費税(もしくは輸入段階の増値税と消費税)を納付したい場合は、税関に申請することができ、“ゼロ関税”を放棄し輸入後、12か月以内は同類貨物の“ゼロ関税”輸入を行うことはできない。

1-3. 上記及び現行の保税・減免税輸入貨物を除き、その他の輸入貨物には規定通り輸入関税・輸入段階の増値税と消費税が課税される。

1-4. “ゼロ関税”貨物に対し税関電子帳簿を設立し、情報化・スマート化された運用を行い管理し、特定減免税貨物に則った税関手続きは行わない。必要に応じて検査、照合を行う。

1-5. 享受主体名簿は海南省人民政府より確定し逐次調整され、且つ財政部、税関総署、税務総局等関連部門にて備案される。

現行政策との比較

※「享受主体」は現行の企業のみから、事業単位や非民営企業単位等に拡大した。

※ゼロ関税商品範囲は現行の1900品目から6600品目に増加し、全品目の74%に達するとされている。

2. 『二線』とは

海南自由貿易港と中華人民共和国境内のその他の地区(以下内地と略称)との間に設置される。

“二線”経由で内地に搬入される“ゼロ関税”貨物及びその加工生成品に対し、次の規定に基づき管理する。

2-1. 享受主体は税関にて、(“一線”)輸入材料に基づき輸入関税・輸入段階の増値税と消費税を追加納付する。

2-2. “一線”輸入時或いは島内流通段階ですでに輸入税収を納付或いは追納済みの場合、“二線”段階での再度納付は不要である。

2-3. 島内流通段階で国内段階の増値税を納付済みの場合、“二線”段階での再度納付は不要である。

2-4. すべての税収を納付或いは追納済みの貨物は国内流通規定に基づき管理し、規定通りに国内段階の増値税と消費税を納付する。

3. 加工付加価値品への関税免除

海南自由貿易港内の奨励類産業企業 [38]が生産する、輸入材料を海南自由貿易港で加工し30%(含む)以上付加価値を増加した貨物を、“二線”経由で内地に輸入する場合、輸入関税を免除し、輸入段階の増値税と消費税を規定通り徴収する。

徴収管理と付加価値増加公式は税関総署より別途制定 [39]する。

現行政策との比較

※現行の「奨励類産業主要業務が収入の60%を占める」という制限を撤廃した。

※加工増値免税対象貨物について、現行の保税貨物に“ゼロ関税”貨物を組み入れた。

※加工増値計算は、保税貨物が上流・下流の異なる企業の加工製造を経る場合の累計で計算することが認められる。

4. 島内流通

“ゼロ関税”貨物とその加工生成品が海南自由貿易港内で流通する際、以下の規定に基づいて行う。

4-1. “ゼロ関税”貨物とその加工生成品が条件を満たす享受主体間で流通する際、輸入関税・輸入段階増値税と消費税の追納は不要である。享受主体は必要に応じ自ら輸入関税・輸入段階増値税と消費税(若しくは輸入段階増値税と消費税)の追納を選択できる。

4-2. 享受主体が“ゼロ関税”貨物とその加工生成品を、非享受主体及び個人との間で流通させる場合、第2.条の規定に基づき、輸入材料に基づき輸入関税・輸入段階の増値税と消費税を納付し、国内段階増値税と消費税を規定通りに徴収する。

4-3. 輸入税納付済み或いは追納済みの貨物は、国内流通規定に基づき管理し、国内段階の増値税と消費税を規定通り徴収する。

現行政策との比較

※ゼロ関税商品及び加工製品が現行の自社使用のみから、島内享受主体間の自由な流通時にも輸入時の税を免除としたまま、可能となった。

5. 特別課税措置(四類措置)

“一線”経由で輸入時に関税クオータ管理・貿易救済措置を実施、減免税を中止し関税増加措置を実施、報復関税による課税措置(関税増加排除獲得貨物を除く)(以下四類措置と総称)を採る“ゼロ関税”貨物に対し、以下の規定の通りに手続きを行う。

5-1. “ゼロ関税”貨物が四類措置貨物に該当する場合、“一線”輸入時、第1.条規定に基づき実行し、且つ国の統一規定に基づき四類措置を実行する。

“ゼロ関税”貨物とその加工生成品を“二線”を経由し内地に輸入する時、第2.条規定に基づき実行し且つ四類措置を実行する。島内流通時、第2.条に基づき輸入関税・輸入段階増値税と消費税を追納し且つ四類措置を実施する。四類措置を実行後、重複して実行しない。

5-2. “ゼロ関税”貨物は四類措置に該当しないながら、その加工生成品が四類措置貨物に該当する場合、その加工生成品が“二線”経由で内地に輸入される、または島内流通段階では、申告検査の実態状況に基づき本通知の第2.条4.条の規定に基づき実行し、且つ四類措置を実行する。“ゼロ関税”貨物がすべての輸入税を納付済み或いは追納後、その加工生成品は国内流通規定に基づき管理し、あらためて四類措置を実行することはない。

6. 内地からの搬入、海南島からの離境

内地から“二線”経由で海南自由貿易港に入る貨物は、国内流通貨物として管理する。海南自由貿易港から“一線”経由で離境する貨物は、輸出に基づき管理する。

7. 『ゼロ関税』貨物は以下の管理を行う。

7-1. 海南自由貿易港に登記し且つ独立法人資格を有し、交通運輸、旅行業に従事する企業は、交通運輸、旅行業に用いる車両、船舶、航空機等の営業用交通手段及びヨットを“ゼロ関税”輸入することができる。航空機国籍登記、権利登記等の国家法律法規と部門規則に規定するものを除き、“ゼロ関税”交通手段とヨットは海南自由貿易港にて登記或いは国籍登記しなければならず、交通運輸、民航、海事等の主幹部門関連の規定に基づき運航し監督管理を受ける。航空企業は海南自由貿易港を主要運営基地とする。航空機・船舶は海南自由貿易港を始発とするか或いは海南自由貿易港を経由した国内外航路を経営する。ヨットの航行範囲は海南省とする。車両は内地との往来の旅客・貨物運輸に従事でき、始発地及び目的地のいずれかは海南自由貿易港内とし、内地停留時間は年間累計120日を超えないものとする。その内、海南自由貿易港から内地への片道直通車、往復の旅客・貨物は日数制限を受けない。上述規定に違反する場合、関連の輸入税を追納するものとする。

7-2. 航空機、船舶、ヨット、生産設備の修理(関連部品を含む修理)の“ゼロ関税”貨物が、以下の条件の一つに該当する場合、海南省内での修理には輸入関税、輸入段階の増値税と消費税を免除するが、その後別の用途に用いてはならない。

8. 享受主体の認定手続き

享受主体の認定手続きについては、認定基準、認定部門及び管理要求等具体的な管理措置、“ゼロ関税”貨物の具体管理措置、及び規定違反時の処理基準、処理方法、部門共同懲罰措置等を含み、海南省人民政府の関連部門より確定する。

9. 規定違反

本通知の規定に違反し脱税し、密輸行為或いは税関監督管理規定違反がある場合、税関等の監督管理機構より規定に基づき処理し、犯罪を構成する場合、刑事責任を追及する。

10. 監督及び報告

財政部海南監管局、海口税関、国家税務総局海南省税務局は海南省内の関連部門と共同で海南自由貿易港内の本政策実行時の監督検査を強化し、違反行為を防止するものとし、重大状況については速やかに財政部、税関総署、税務総局に報告する。

11. 政策実績の報告

政策実施の日から、海南省は適時に政策の実施効果を評価し、定期的に財政部、税関総署、税務総局に享受主体状況、“ゼロ関税”貨物輸出入データ等を含む実施状況を報告するものとする。税関、税務等の部門は本通知に関わる納付済み或いは追納済みの輸入税金、納付済みの国内段階の税金等のデータにつき適時に共有するものとする。

12. 政策最適化

全面的な評価と、条件を満たした上で、財政部、税関総署、税務総局は関連部門と共同で、海南省の実際のニーズと監督管理条件を考慮し、政策内容をさらに最適化する。

13. 現行規定の継続

本通知に記載の無い事項については、保税政策、減免税政策、越境Eコマース、税関特殊監督管理区域等を含み、現行規定がある場合その規定に基づいて実行するものとする。

※企業所得税及び個人所得税の現行優遇政策を継続実行する。

※“ゼロ関税”商品範囲は継続して拡大していく。

※個人の“離島免税”ショッピング政策を継続する。

※島内住民の国外からの輸入商品関連税収政策を積極的に研究し、島内住民がある程度輸入商品を購入することを認める。

※販売税収改革推進について研究を推進する。

14. 施行日及び廃止規定

本通知は海南自由貿易港の「封関運営」開始日に施行され、同時に以下通知は廃止される。

海南自由貿易港『ゼロ関税』享受主体認定管理弁法

1. 認定条件

2. 認定手順

(1) 毎月15日までに

〈海南自由貿易港“ゼロ関税”輸入貨物享受主体資格申請表〉

〈申告承諾書〉

及び以下のいずれかの資料を、“ワンストップ窓口”画面の関連頁にアップロードして申請提出

(2)”ワンストップ窓口”にて提出された主体に対し、省市場監督局、省委編弁、省科技庁、省教育庁、省民政庁、海口税関、省税務局より審査される。提出資料が揃う場合、原則5営業日以内に審査を終了し、必要がある場合現場検査を行う。審査後不合格の場合、”ワンストップ窓口”経由で申請主体にフィードバックされ審査手続きはクローズされる。資料の追加、修正がある場合、申請主体は3営業日以内に再提出させ、再度5営業日以内に審査後合否を通知する。審査通過合格後、名簿確定段階に入る。

関連部門が審査通過合格した申請主体名簿は海南省人民政府に報告され確定し、“ワンストップ窓口”より海南自由貿易港税関のスマート監督管理プラットフォームに転送される。また“ワンストップ窓口”にて審査結果を検索できる。

享受主体名簿は海南省人民政府から財政部、税関総署、税務総局等の関連各部門へ備案される。備案は原則的に半年に1度行われる。 

税関による加工付加価値貨物関税免除政策

税関総署公告 2025年第158号

1. 定義

海南自由貿易港内の奨励類産業企業が生産する、輸入材料を含み海南自由貿易港で加工し30%(含む)以上付加価値を増加した貨物を、“二線”経由で内地に輸入する場合、輸入関税を免除し、輸入段階の増値税と消費税を規定通り徴収する。

※奨励類産業企業:海南自由貿易港で登記され、独立法人資格を有し、海南省の公共情報サービスプラットフォームで備案手続きを完成した企業(以下備案企業と呼ぶ)

※輸入材料とは:国外から海南自由貿易港に搬入され輸入税納付手続きを行っていない貨物を指し、保税貨物及び“ゼロ関税”貨物を含む。輸出通関を行って海南自由貿易港税関特殊監督管理区域に搬入される貨物には保税監督管理措置を実施する。

※30%(含む)以上付加価値を増加した貨物とは:備案企業が海南自由貿易港内で輸入材料の貨物を含み製造・加工した付加価値部分が、輸入材料及び境内仕入材料価格合計の30%に達するか超えることを指す。

2. 加工付加価値の計算公式

〈30%以上付加価値増加の計算公式〉

計算式

[(貨物国内販売価格 - Σ輸入材料価格 - Σ国内仕入材料価格)/(Σ輸入材料価格 + Σ国内仕入材料価格)]× 100% ≧ 30%

国内販売価格: 備案企業が内地で販売する、輸入材料を含む製造・加工により取得した貨物の取引価格で確定する。

輸入材料価格: 備案企業の輸入材料の取引価格により確定し、中華人民共和国境内への運輸及び関連費用、保険費を含む。(《輸出入貨物課税価格弁法》《国内販売保税貨物課税価格弁法》を参照)

国内仕入材料価格: 公認の会計準則により認可される価格とし、備案企業が境内で仕入れた材料の工場着荷価格により確定し、国内の増値税を含まない。認定を経た海南自由貿易港の原産貨物価値は境内仕入材料価格から控除する。

 

※海南自由貿易港原産貨物の認定は、海南省商務長により研究制定され国務院の関連部門にて備案する。

〈累計計算公式〉

海南自由貿易港税関特殊監督管理区域、保税監督管理場所内の企業及び、加工貿易に従事する企業の保税輸入貨物が、海南自由貿易港内の生産工程を経て、サプライチェーンの 上流・下流で異なる備案企業の加工製造により発生する付加価値について、累計して計算することができる。

計算式

[(貨物国内販売価格-Σ関与企業の累計輸入材料価格-Σ関与企業の累計境内仕入材料価格)/(Σ関与企業の累計輸入材料価格+Σ関与企業の累計境内仕入材料価格)]×100%≧30%

関与企業の累計輸入材料価格とは、各備案企業の生産投入した輸入材料価格の合計。

関与企業の累計境内仕入材料価格とは、備案企業の生産投入した境内仕入材料価格の合計。

3. 手続き

4. 関税免除を与えない情況

輸入関税を免除しない加工付加価値30%以上の貨物:

(1) 輸入材料或いは加工後の製品が関税クオータ管理・貿易救済措置を実施、減免税を中止し関税増加措置を実施、報復関税による課税措置(関税増加排除獲得貨物を除く)に属する場合。

(2) 単に混ぜ物(水に混ぜる、希釈等を含む)、ラベル貼付、パッケージ交換、小分け、抱き合わせ包装、削り、殻剥き、簡単研磨或いは切断等一種或いは複数種の微細加工或いは処理を行う場合。微細加工の定義は海南省商務庁と関連機関が認定する。

(3) その他の関連規定に基づき輸入関税を課税すべきである場合。

5. 施行日

海南自由貿易港の封関運営開始日(12月18日)より施行する。施行前においては《税関の洋浦保税港区加工付加価値貨物の国内販売税収徴収管理暫定弁法》が継続して有効である。施行後、同弁法の執行を停止する。

奨励類産業企業

1. 海南自由貿易港奨励類産業目録(2024年版)

中華人民共和国税関 海南自由貿易港監督管理弁法

1. 管理対象

 (1) 海南自由貿易港(海南自貿港)と中華人民共和国境外その他の国家と地域との間に出入りする交通運輸手段、貨物コンテナ等の運輸設備、人員、貨物、物品

(2) 海南自貿港から中華人民共和国境内その他地区(内地と呼ぶ)に入る“ゼロ関税”貨物及びその加工生成品、加工付加価値関税免除政策を享受する保税貨物、境外より海南自貿港に入る際貿易管理措置を緩和される貨物及びその加工生成品。

(3) 海南自貿港で税関手続き未了の貨物。

2. 海南自貿港と境外との間の監督管理

3. 海南自貿港の貨物の内地搬入時の監督管理

4. 海南自貿港内の監督管理

5. 施行日

海南自貿港の封関運営開始日(12月18日)より施行する。

海南自由貿易港輸入貨物通過許可管理規定

1. 税関申告不要の通過許可適用貨物