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中国深セン・コロナ予防抑制政策実施期間における労務問題に関するQ&A

最近、新型コロナの感染が急速に拡大し、3月13日時点深セン市では中リスク地域が10箇所、高リスクが1箇所に増加しました。コロナ感染者の増加傾向が続いていることなどの理由で、2022年3月13日、深セン市政府は通告を発出しました。当該通告によりますと、3月14日から20日まで、ライフラインに関係する会社以外の企業は休業或いはテレワークを実施、住宅地が封鎖管理、不要不急な人員移動・活動をすべて停止、バス、地下鉄などの交通機関も運休……等と命じています。また、20日以降、普通に戻れるかどうかはまだ見極めず、その時のコロナ状況に応じ常に調整するということです。

通告に定めた処置には以下を含みます。

  1. 深セン市全員がPCR検査を受ける。
  2. 機関、事業単位はリモートワークをすること。
  3. 非ライフライン関係の企業は休業又は在宅勤務を実施する。
  4. 不要不急な人員移動/活動を停止しバス・地下鉄は運休する。
  5. 市民の在宅生活への補給を保障する。

これらの措置からみると、深センは実質的なロックダウン状態となり、企業も殆ど操業停止となりました。この中で、コロナ予防抑制政策実施期間の従業員給与をどう取り扱うか、一方的に休暇を手配しても良いかなど疑問を抱えている企業は少なくないようです。よって、我々は企業への参考資料として、広東省及び深セン市の関連規定に基づき、企業が関心を持っている問題について、本Q&Aを取り纏めました。

目次

新型コロナ流行症の影響で出勤できない従業員に対して、会社は労働契約を解除することができるか?

回答:不可。隔離治療又は医学観察における感染者、病原携帯者、感染を疑う患者、濃厚接触者、及び政府による隔離処置又はその他緊急処置により、通常通りの勤務の提供ができない労働者に対しては、会社はその期間において労働契約を解除してはならない。

従業員が新型コロナ予防抑制政策により隔離又は政府部門により緊急処置を取られた期間において、労働契約が満了となった場合は、会社はこの労働契約を終了しても良いか?

回答:不可。労働者の労働契約が隔離治療期間又は医学観察期間、若しくは政府に隔離処置又はその他緊急処置を実施された期間に期限満了となる場合、そのまま終了にならず、法律通りに延長される。延長期限は、離医療期間・医学観察期間・隔離期期間の満了日若しくは政府の緊急処置の解除日までとする。

企業は上記の期間において期限満了の労働契約を終了すると、違法解雇と見なされ、賠償金又は労働契約の継続履行を求められるリスクがある。

従業員が政府部門の新型コロナ予防抑制政策に違反し、治療・医学観察・医学検査・隔離を拒否する場合、会社は労働契約を解除することができるか?

回答:可能。労働者は政府部門の新型コロナ予防抑制政策を違反し、治療・医学観察・医学検査・隔離を拒否し、会社の生産経営に影響を与える又は社内規則、労働紀律に厳重に違反する場合、会社は「労働法」第25条又は「労働契約法」第39条に基づき労働契約を解除することができる。

従業員が感染者・無症状感染者・感染を疑う患者・濃厚接触者として認定された場合、会社は当該従業員の隔離期間・医学観察期間・政府隔離期間の給与をどのように支給するか?

回答:正常勤務時間給で支払う。

関連規定によれば、新型コロナ感染者・感染を疑う患者・濃厚接触者が隔離治療期間又は医学観察期間、及び政府に隔離処置やその他緊急処置を取られたことにより、通常通りの勤務の提供ができない労働者に対しては、会社は正常勤務として労働報酬を支払わなければならない。但し、労働者が政府のコロナ予防抑制政策に違反することにより隔離治療又は医学観察をされた場合は除く。

また、隔離解除後に治療を引き続き受けなければならない場合は、医療期間の関連規定に基づき給与を支払うことになる。

政府部門に休業若しくは住宅地封鎖などの緊急処置を取られたため、企業が操業停止又は従業員が出勤できない場合、その期間の給与をどのように支払うか?

回答:以下の状況に応じ取り扱うべきである。

  1. 従業員が電話、ネットなど遠隔方式で通常通りに労働を提供できる場合、正常勤務として給与を支払う。
  2. 従業員に年次有給休暇、振替休暇又はその他会社福利休暇などを手配する場合、当該休暇に相応する給与制度に基づき支給する。
  3. 柔軟雇用形態を実施し、当年度内の休日を総合的に調整する場合、通常通りに給与を支給するか、若しくは振替休日に相当する給与の支払を控え、後日振替出勤の当月に支給する。
  4. 会社休業、若しくは会社が生産経営しているが従業員が出勤できず且つテレワークなどの形で正常勤務の提供が困難、また休暇の手配もできない場合、関連規定に基づき操業停止期間として、以下のように給与を支払う。
    1. 一つの給与支給周期(30日)を超えない場合、労働契約に定めた基準に基づき給与を支払う。
    2. 一つの給与支給周期を超えた場合、最低賃金の80%で生活補助金を支給する。

注記

① 現時点では、深セン市最低賃金(月給)は2360元である。
② 一つの給与支給周期は最長30日を超えない(休日や祝日なども含める)。
③ 給与支給日がこの期間にある場合、日数按分で給与を計算し支給する。
④ 操業停止後操業再開、その後再び操業停止となった場合、操業停止日数の計算は累計計算ではなく、直近の停止日から改めてカウントする。

新型コロナウィルスの影響による操業停止期間において、会社は一方的に年次有給休暇、振替休暇或いはその他福利休暇を従業員に使用させることができるか?

回答:可能。「社員年次有給休暇条例」第5条第1項及び「企業社員年次有給休暇実施弁法」第9条、「雇用者は生産、業務の実際状況に基づき、且つ社員本人の要望を考慮したうえ、年次有給休暇を統一手配することができる。」という規定がある。人力資源社会保障部等四部門より「新型コロナウィルス流行症予防抑制政策実施期間における安定な労働関係及び企業操業再開に関する意見」(人社部発〔2020〕8号)に、「リモートワークができない企業は、従業員と協議し年次有給休暇、会社福利休暇などを優先的に使用させることができる」と定めている。

上記の規定によれば、会社は労働者の年次有給休暇を統一手配することができる。この際に労働者との協議をプロセスとして履行すべきであるが、「協議により合意を達成する」ことが要求されていないため、労働者の同意がなくても、会社は協議のプロセスを経て一方的に年次有給休暇を手配することができる。その他の福利休暇も同様。

新型コロナ流行症予防抑制政策実施期間において、企業は年度内の休日を総合的に調整することができるか?

回答:法的には問題ないが、実施細則がないため、慎重に取り扱う必要がある。

実務上、リモートワークができず、福利休暇も消化済み、且つ資金繰りが厳しく操業停止期間として給与を払えないため、当年度内の休日を総合的に調整し、当面の難関を乗り越えようとする企業も散見される。

休日総合調整とは、企業は後日の休日を振り替えて先に利用し、休んだ日を操業再開後の休日に出勤させるという処置を指す。

「国務院 社員勤務時間に関する規定」第7条、「国家機関、事業単位は統一な勤務時間を適用し、土日は周の休日とする。企業及び前述の統一な勤務時間を適用できない事業単位は、実際の状況に応じ周の休日を柔軟的に決定することができる。」という規定によれば、会社は、自身の実際状況に合わせて従業員の周休日を柔軟に決められる。また、「深セン市 新型コロナウィルス流行症の中で企業難関乗越えの助力に関する若干処置」(深セン市人民政府、2020年2月7日)第14条に「柔軟雇用政策を実施する。企業が法律通りに年度内の休日を総合的に調整し、出勤可能社員と出勤不可社員との全体的な勤務時間のバランスを取るようにする」と定めている。この規定は期限切れで失効となったが、休日総合調整の法律依拠は「国務院 社員勤務時間に関する規定」であるため、これを参考にして当該処置を実施しても問題ないと思われる。

休日総合調整の実施に当たり、以下の点にご留意ください。

(1) 実施する前に従業員又は労働組合の同意を得る必要があり、そのうえに従業員と書面な協議書を取り替わすべきである。協議内容には適用対象、適用期間、調整方法、振替出勤流れ、給与、勤怠管理などを含む。

(2) 休日振替出勤の当月は周1日の休暇を確保しなければならない。

会社は新型コロナウィルス流行症の影響で期限通りに給与を支払わなかった又は社会保険を納付しなかった場合、従業員は労働契約を解除し経済補償金を要請することができるか?

回答:できない。会社は、新型コロナウィルス流行症の影響で給与の支払に30日以内の延滞が発生した、若しくは法律通りに社会保険を納付しなかった時、労働者はこれを理由にして労働契約を解除する場合、やむを得ない労働契約の解除としては認められないため、会社はこの労働契約解除による経済補償金の支払いが不要である。

会社が新型コロナ流行症に関する従業員の情報を収集する時の注意点は?

回答:新型コロナ流行症時期において、会社は従業員の関連情報を収集・使用することができるが、法律通りに事前告知・同意・必要最小限及び秘密保持などの基本原則に基づき行う必要がある。

  1. 情報収集の目的と用途を明確に告知する。また、書面の授権書等を用意しサインしてもらうこと。
  2. 新型コロナ流行症予防抑制及び人事管理に必要となる個人情報のみを収集する。
  3. 既に入手済みの個人情報の再度収集を避ける(例えば、身分証番号、住所、連絡先など)。情報収集の頻度が高ければ高いほど漏洩リスクも高くなる。

新型コロナウィルス流行症の影響を受け生産経営が苦境となった時、企業は従業員の給与を一方的に減給することができるか?

回答:できない。新型コロナウィルス流行症の影響で生産経営が困難となった時、会社は一方的に減給することができず、従業員又は従業員代表大会、労働組合、従業員代表等と協議し民主協議プロセスを経て、合意に達した時、初めて減給することができる。

当然、操業停止期間が一つの給与支払周期を超えた場合、会社は関連規定に基づき生活補助金(最低賃金の80%)のみを支給することができる。

新型コロナウィルス流行症の影響で生産経営が困難となった企業は、従業員と労働契約を解除することができるか?

回答:状況によって異なる。企業は新型コロナウィルス流行症の影響で生産経営が困難となった時、従業員と協議を経て、給与調整(減給)、交代出勤、勤務時間短縮、待機などの処置を取り労働契約を変更し、安定的な職場を維持させるべきである。

労働者と協議し合意に達成できなかった場合、企業は「労働契約法」第40条、第41条に基づき労働契約を解除することができるが、同法第46条、47条の規定により労働者に経済補償金を支払わなければならない。

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