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[中国会計] 中国の国家統一会計制度(6)

今回は、中国の国家統一会計制度における「支払決済」のうち、現金管理規定について紹介します。

<現金管理規定>
現金は流動性が最も高い資産であることから、『現金管理暫行条例』及びその実施細則が定められ、銀行等の金融機関に口座開設をした企業等は、原則としてこれらの規定に従って現金管理を行い、かつ、口座を開設した銀行等から監督を受けるものとなります。

中国では、基本的に企業が多額の現金を保有することは認められず、銀行等は口座開設をした企業の現金使用について監督管理の責を担わされています。預金口座については、次回に説明をいたしますが、企業が現金(人民元)を引き出すことができる預金口座は、原則として一企業に1口座しかないため、口座開設をしている銀行が管理することができる仕組みとなっています。
 
<現金の支払い用途の制限>
中国国家は、企業や個人の経済活動において、金融機関を通じた振替方式(手形、小切手等による決済)を採用し、現金の使用を減らすことを奨励し、現金の使用範囲について規定を設けています。

<企業の現金支払の範囲>
1. 職員の給与、手当
2. 個人への労務報酬
3. 国家の規定に基づく個人の科学技術、文化芸術、体育等各種賞金の授与
4. 各種労働者保護、福利費用および国家規定の個人に対するその他支出
5. 個人に対する農業副産物とその他物資の買付代金
6. 出張人員が携行を要する出張旅費
7. 決算起点(1000元)以下の小口支払
8. 中国人民銀行が現金支払いを要すると確定したその他支出

なお、5.6.の支払いについては1000元の制限は受けないものとされ、これ以外を個人に支払う場合には、各人1回1000元を超えてはならず、超える部分は小切手等によるか、銀行の審査を経た後でなければ現金で支払うことができません。

<企業における現金管理>
企業は内部統制を強化し、貨幣資金を取り扱う職務の責任権限を明確にして貨幣資金を厳格に管理することが求められています。例えば、出納人員が帳簿の検査や会計書類の保管及び収入・支出・費用・債権債務などの帳簿記入業務を兼任することや、一人が貨幣資金業務の全工程を行うことは禁じられています。個人口座や他の企業の名義での入出金や、「小金庫」と呼ばれる帳簿外の現金(裏帳簿、裏金)は当然に許されません。

<主たる要求事項>
1. 現金決済を優遇したり、手形等の受け取りを拒絶したりしてはならない。
2. 企業の手許現金の限度額は、口座開設銀行が3日~5日の日常の小口支払いに必要とする金額に基づいて審査し、企業は裁定された限度額を厳守すること。
3. 現金収入は直ちに銀行に預け入れること。
4. 現金勘定は現金支払いごとに記載、毎日清算して月締めする。正式な領収書なしの支払いや偽りの用途による流用等は禁じる。
5. 現金支払いは、手許現金から支払うかまたは銀行預金から引き出して支払うことができる。口座を開設した銀行の批准を得ている場合を除き、現金収入した中から直接支払ってはならない。

これらの規定は、現金の流通量をコントロールし、健全な経済発展に資することを目的としているものですが、「上有政策、下有対策」といわれる中国です。巷では証拠の残らない現金取引も好んで行われ、「小金庫」は当たり前とも言われているようです。