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中国で整備が進められる「総合保税区」とは?

総合保税区とは、税関の特殊監督管理区域と呼ばれる保税地域の一つです。税関総署の4月時点の発表によると、全国151か所の特殊地域の内、総合保税区は119か所あり(*1)、2019年の全ての特殊地域による輸出入額は5兆5千億元あまりで、全国輸出入総額の17%を占め、成長率7.17%(全国輸出入総額の成長率は3.77%)と一定の規模を担っています。製造業の競争力強化策として国務院は、2019年1月に総合保税区において加工製造、研究設計、物流配送、検測修理、販売サービス機能を強化し、国内外の市場に対応する制度の普及を目指すこと等を発表*2後、一連の政策が発布されており、2020年以降も継続して整備が進められる模様です。

*1 2020年4月末時点で全国の税関特殊監督管理区域は151か所、内、保税港区11か所、総合保税区119か所、特殊総合保税区1か所、保税物流園区4か所、保税区9か所、輸出加工区5か所、珠澳跨境工業区1か所、中哈霍尔果斯国際辺境合作中心(中国・カザフスタン国境の新疆イリ・カザフ自治州コルゴス)1か所。(原文 [1]
*2 《国務院 総合保税区の高水準開放と高品質発展を促進することについての若干意見》 国発[2019]3号 2019年1月12日発布(原文 [2]

広東省の総合保税区は現状、広州白雲機場総合保税区、深セン塩田総合保税区、珠海高欗総合保税区(建設中)、東がん虎門港総合保税区の4か所に加え、4月に汕頭総合保税区の設立認可が発表されました。以下に総合保税区の新たな制度や機能について紹介します。

国内外市場に対応するため、区内企業に増値税一般納税人を試行(*3)

環境条件を満たす総合保税区に対し、区内企業が増値税の一般納税人となり(試行企業)、課税/保税/免税業務や還付等に柔軟に対応するとし、試行企業には以下を適用するとしています。

  1. 自社使用設備の輸入時、暫時免税とし、税関監督管理年限において内外販売比率に応じて年度ごとに輸入関税・増値税を追納する。
  2. 自社用設備以外の以下の貨物に対し保税政策を適用する。
    ①国外から区内に搬入する貨物 
    ②他の特殊監督管理区域から/区域にて、購入/搬入する保税貨物
    ③区域内の非一般納税人から購入する保税貨物
    ④区域内の一般納税人から購入する未加工の保税貨物
  3. 以下の貨物を販売する場合、主管税務機関にて増値税・消費税を申告する。
    ①国内区外企業に販売する貨物(なお輸入材料に基づき課税するか、加工後の製品に課税するかの選択が可能*4)
    ②保税区・還付機能を有しない保税区域に販売する貨物(未加工の保税貨物を除く)
    ③区内のその他の一般納税人に販売する貨物(未加工の保税貨物を除く)上記に保税貨物が含まれる場合、保税貨物が特殊監督管理区域に搬入された時の状態に基づき納税し且つ滞納金を納付。
  4. 税関特殊監督管理区域或いは税関の保税監督管理場所に対し販売された、未加工の保税貨物は保税政策を継続して適用。
  5. 以下の貨物販売時(未加工の保税貨物を除く)、輸出還付(免税)政策を適用。
    ①境外へ輸出される貨物。
    ②税関特殊監管区域或いは税関保税監管場所(還付機能の無い場所を除く)に販売する貨物
    ③区内で非一般納税人に販売する貨物
  6. 未加工の保税貨物の境外への輸出は増値税・消費税の免税政策を適用。
  7. 別途規定がある場合を除き、試行企業は区外の現行の関税、増値税、消費税の法律規定を適用。

また、区外より区内試行企業へ販売される加工貿易貨物は現行税収政策(区外から区内搬入時に還付)を実行、その他の貨物(水道、蒸気、電力、天然ガス)は今後還付政策を適用せず、増値税・消費税を納付。

*3: 国家税務総局 財政部 税関総署公告 2019年第29号 《総合保税区にて一般納税人資格試行を推進するこ
とについての公告》(原文 [3]
*4 《財政部 税関総署 税務総局 国内販売選択性徴収関税政策試行拡大についての公告》財政部公告2020年第20号 (原文 [4]) 2020年4月15日施行

税関総署による、保税研究開発業務(*5)の関連事項についての通知

①有形材料、試薬、消耗材及びサンプル(研究開発材料と総称)などを以て行う研究開発業務について適用。
②国の関連部門もしくは総合保税区の管理機構より認可を得る必要がある。
③保税研究開発を行う場所・設備・研究開発材料と製品は専門の管理を行う。
④加工貿易禁止目録を適用しない。
⑤保税研究開発業務に対し専門の電子帳簿で材料と製品等情報を管理する。電子帳簿は最長1年周期とする。
⑥業務過程で発生する端材、廃棄品等は輸入材料の端材再輸出/国内販売等の通関方式で申告。
⑦国内販売時、国内販売保税貨物の関税価格査定弁法(税関総署例第211号)第9・10条に基づく。固体廃棄物については《固体廃棄物輸入管理弁法》に基づく。
⑧区外検査は60日以内に総合保税区に戻すものとする。

*5:税関総署公告2019年第27号 《総合保税区の保税研究開発業務を支持することについての公告》(原文 [5]

修理商品リスト(55の税目)が発布された、修理業務*6の展開

①区内企業は航空、船舶、軌道交通、工程機械、工作機械、通信設備、精密電子等の製品の修理業務を展開することができる。(原文規定にリスト添付)
②修理後の貨物は国外もしくは区外に戻すことのみが可能で、修理名目で分解、廃棄等の業務をしてはならない。
③修理業務の展開時、総合保税区管理委員会、商務部、税関等より企業名簿を確定し、省級商務・税関部門へ備案する。
④修理業務過程で発生した端材・元の部品等は原則すべて積戻し出国しなければならず、国内販売は不可とする。固体廃棄物は関連規定に基づき処置し、固体廃棄物台帳を設置して各種データを申告する。
⑤本公告発布前にすでに展開している修理業務は元の修理品範囲内で継続して展開できる。

*6 生態環境部 税関総署公告2020年第16号 総合保税区内企業の修理業務展開の支持に関する公告(原文 [6]