カテゴリ

 前回は中国の内部統制制度の概要を紹介しました。今回と次回は、2018年1月1日から施行される「小企業内部統制規範(試行)」(財会[2017]21号。以下本稿では「本規範」という。)の内容を紹介します。

1. 適用対象と規範制定の目的

 本規範の適用対象となるのは、中国国内に設立された「企業内部統制基本規範」とそのガイドライン※1の適用条件を備えていない小企業です。本規範では、小企業の判定は、「中小企業区分基準規定」※2に基づいて判定するとされています。
 内部統制の目的は、企業にコーポレートガバナンスの改善を求め、コンプライアンスにより企業の経営の健全性、社会的信用が確保されることを合理的に保証することです。本規範は、小規模な企業が内部統制を構築して効率的に実施することを指導し、経営管理レベルとリスク防止能力を向上させ、健全で持続的な発展を促進するために制定されたものです。小企業の責任者は企業内部統制の構築と実施責任を負うものとし、小企業が内部統制の構築や実施の調整および推進を具体的に担当する組織として適切な部署(職位)を指定できるものとしています。

※1 「企業内部統制基本規範」(財会[2008]7号)および「企業内部統制に関する指針」(財会[2010]11号)中国国内に設立された大中型企業に適用される。小企業などがこれに基づくこともできる。
※2 「中小企業区分基準規定」(工信部企業[2011]300号、2011年6月公布・施行)。中小企業促進法に基づいて中小企業を業種別に中型、小型、零細(中国語表記は「微型」)の区分の判定基準を規定したもの。なお、零細企業にも本規範の適用が奨励されている。
(続きを読む…)

 小企業の内部統制の構築および効果的な実施を推進し、経営管理レベルとリスク防止能力を向上させ、小企業の健全で持続可能な発展を促進するためとして「小企業内部統制規範(試行)」(財会[2017]21号。)が2017年6月に制定され、2018年1月1日から施行されました。今回は中国における企業の内部統制の概要を紹介します。

1. 中国における企業の内部統制制度

 中国では、企業の内部統制を強化および規範化し、企業の管理経営レベルおよびリスク防止能力を向上させ、企業の持続的発展を促進し、社会主義市場経済秩序および社会公衆の利益を維持・保護するためとして、2008年に「企業内部統制基本規範」(財会[2008]7号。2009年7月1日施行。以下C-SOX法※1という)が公布されました。2011年4月にはC-SOX法運用のガイドラインとして「企業内部統制に関する指針」(財会[2010]11号。以下「ガイドライン」という。※2)も制定されています。なお、現時点では非上場の大中型企業※3にはC-SOX法の適用は義務付けられてはいませんが、早期の実現が推奨されています※4。なお、保険会社や商業銀行には別途規定があります。

※1 China‐SOX法。アメリカで2002年に不正会計問題やコンプライアンスの欠如などに対処するため、企業会計の信頼性を高め、内部統制を強化することを目的に企業経営者の責務と罰則を定めた「SOX法」に倣って整備された企業会計改革法の中国版。米国の法律起案者2名(Sarbanes氏、Oxley氏)ちなんでSOX法と呼ばれている。
※2 企業内部統制応用指針、企業内部統制評価指針、企業内部統制監査指針の3つのガイドラインで構成されている。
※3 「国民経済行業分類(GB/T4754-2011)」の業種ごとに、従業員数、営業収入、資産総額等の指標に基づき、大・中・小・零細(中国語表記は微小)型に区分されます(「統計上大中小零細型企業区分弁法」(国統字[2011]75号附表)。例えば、工業は従業員数300人以上かつ営業収入200万元以上、卸売業は従業員20人以上かつ営業収入5000万元以上、建築業は営業収入6000万元以上かつ資産総額5000万元以上が大中型に該当する。
※4 2011年1月1日より、国内と国外で同時に上場している企業から適用が開始され、2012年からは上海と深センの証券取引所のメインボード上場企業、その後中小ボード、創業ボードに適用を広げるものとされている。なお、小企業及びその他組織も本規範を参照して内部統制を構築・実施することができるとして内部統治制度の確立を推奨している。
(続きを読む…)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施後に交付された増値税の規定について5回にわたり説明をしてきました。今回は営改増により新たに増値税の課税行為となったサービス提供などの納税義務の発生時点を確認していきます。

1. 収益の認識と増値税の納税義務の発生

中国では、商品売買やサービス提供等の取引成立に伴い発行する増値税の「発票(ファーピャオ)」が、取引が行われたことを示す合法かつ税務上有効な証憑であるため、発票を発行した時点で売上計上するという、いわゆる「発票基準」が実務として行われていることが少なくありません。しかし、企業会計準則及び企業所得税法上も収益は発生主義(注1)を原則として認識するものと規定されています。
一方、増値税の発票については「増値税発票発行指南」(税総貨便函[2017]127号付属書類)において、納税義務が発生した時に発行しなければならないとされています。増値税暫行条例(国務院令第538号)によると、増値税の納税義務の発生認識の原則は、販売代金を受領または販売代金請求に関する証憑を取得した日(物品の輸入の場合には通関の当日)とされており、収益の認識とは一致していません。

(注1) 中国語表記は「権責発生制」。

関連規定: 企業会計準則基本準則第9条、企業会計準則第14号、企業所得税法実施条例第9条、国税函[2008]875号、増値税発票発行指南第1章第1節四、増値税暫行条例第38条、増値税実施細則38条、国家税務総局公告2011年第40号、他。
(続きを読む…)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施から既に1年半近くが経過しています。今回は昨年11月公布の「国外で提供する建築サービス等に係る問題に関する公告」(国家税務総局2016年69号。以下「69号公告」)、および今年8月公布の「クロスボーダー課税行為免税備案等増値税問題に関する公告」(国家税務総局公告2017年第30号。以下「30号公告」)について紹介します。いずれも営改増全面展開後に表面化した問題への対応を統一し、明確化するためのものです。

1. クロスボーダー課税行為免税備案手続きの明確化

前回紹介した「営業税から増値税徴収に改革するクロスボーダー課税行為免税管理弁法(試行)」(国家税務総局公告2016年第29号。以下「免税管理弁法」)においては、20項目を免税となる課税行為として列挙していますが、免税適用に当たっては、納税人は所定の証明資料を添付して備案(注1)手続きを行うことが求められています。69号公告および30号公告により、免税備案手続きは以下のように規定されました。
  • 中国国内機構の国外における建築サービス提供については、免税備案手続き時において、発注者と締結した契約書に施工場所が国外であることが明記されている場合には、工事プロジェクトが国外であることを証明するその他の資料の提出を要しない。(69号公告一)
  • 中国国内機構の国外における旅行サービス提供については、免税備案手続きにおいて、サービス提供者が派遣する随行員またはサービス受領者の出国記録のコピーをサービス提供が国外で行われることの証明資料とする。(69号公告二)
  • 国際運輸サービスの免税政策を受ける中国国外機構は、免税備案手続き時に資料として、納税人の基本情報および業務状況の説明、根拠となる租税協定または国際運諭協定のコピーを提出する。(69号公告三)
  • 管理弁法に従ってクロスボーダー課税行為の免税備案を行った後は、同一業務について再び届出を行う必要はなく、免税を証明する資料を保管して調査に備えるのみで良い。(30号公告一)
(注1) 備案とは行政の所轄部門の公式記録に残すこと。行政側の同意・承認は要しない。
(続きを読む…)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施から1年以上が経過したところで、改めてこの間に公布された営改増後の増値税に関する公告や通知を確認しています。今回は、クロスボーダー取引に関係する規定を紹介します。

1. クロスボーダー取引に対する増値税の徴収

中国国内の企業などの納税人が行うクロスボーダー取引に対する増値税については、営改増の全面実施により、「営業税から増値税徴収に改革する試行の全面推進に関する通知」(財税[2016]36号)の付属文書4「クロスボーダー課税行為に適用する増値税ゼロ税率および免税政策の規定」において新たに増値税徴収の対象となった建設、不動産、金融、生活サービスなども含めてクロスボーダー課税行為(中国語表記は「跨境応税行為」)として、その免税政策について定められており、さらに具体的な要件や手続きなどを定めた「営業税から増値税徴収に改革するクロスボーダー課税行為免税管理弁法(試行)」(国家税務総局公告2016年第29号。以下「29号公告」)が公布されています。
クロスボーダー取引に対する増値税の徴収は原則としては以下の通りです。

貨物の輸出 0%課税
サービスの輸出 0%課税または免税
サービスの輸入 課税(サービスの輸入者による源泉徴収納付)
(続きを読む…)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施後1年が経過し、この間に営改増後の増値税に関する公告や通知が数多く公布されています。今回は、増値税課税取引に適用される現行の税率について紹介します。

1. 増値税の現行法規

営改増の全面実施により、増値税の対象となる課税行為が格段に増えましたが、従来の増値税法(正式名称は中華人民共和国増値税暫行条例:国務院令第538号)およびその実施細則(財政部、国家税務総局令第50号、財政部令第65号)の全面改定は行われていません。よって、現行の増値税に関する基本的な規定は、2009年1月1日に改定施行された物品販売または加工・修理・部品交換労働サービスおよび物品の輸入を課税対象とする増値税暫行条例および実施細則と、2016年5月1日に施行したサービス・無形資産・不動産の販売の課税行為を課税対象とする「営業税から増値税に移行する税制改革の試行を全面的に推進する通知」(財税[2016]36号)の2つを以って成り立っています。

2. 増値税率

前回のレポートで紹介した通り、増値税率の簡素化が図られ、経過措置はあるものの、従来農産品や出版物など一部の物品販売に適用されていた13%の税率が廃止され、2017年7月1日以降は、増値税の税率は簡易方式による場合を除き(注1)、17%、11%、6%の3種類および物品の輸出に対する0%の計4種となっています。2017年7月1日現在の課税行為ごとの税率は表の通りです。 (続きを読む…)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革『営改増』の全面実施から1年以上が経過しました。前回に続き、営改増の全面実施後に公布された規定の概要を紹介します。

1. 金融、不動産開発、教育補助サービス等の増値税政策明確化

営改増に関連して、金融、不動産開発、教育補助サービス、生活サービスに対する増値税の課税上の取り扱いを明確化するための補足規定が定められました。うち、課税サービスの区分に関する主な規定は以下の通りです。
  • 飲食サービス業でテイクアウト(中国語表記:外売)食品を販売する場合、飲食サービス(6%)として増値税を納付する。
  • 旅館、ホテル、リゾートホテルなどの宿泊施設が提供する会議場および付帯サービス活動は、「会議展示サービス」(6%)として増値税を納付する。
  • 観光地のロープウェイ、フェリー、電動カート、遊覧船などを運行することによる収入は、「文化体育サービス」(6%)として増値税を納付する。
  • 警護輸送サービスの提供は「安全保護サービス」(6%)として増値税を納付する。
  • 不動産管理サービス企業が提供する内装サービスは「建築サービス」(11%)として増値税を納付する。
  • 建設施工設備をリースして他人の使用に供すると共に操作人員を配備した場合は、「建築サービス」(11%)として増値税を納付する。
関連規定:財税[2016]140号、国家税務総局公告2016年第86号
(続きを読む…)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革『営改増』の全面実施から1年以上が経過しました。この間に、増値税発票の管理に関しては新しい増値税発票管理システムが導入され、手続きの簡素化や違法行為の防止に関する公告などが数多く公布されています。2017年6月末までに発せられたこれらの公告や通知のうち主なものについて紹介します。

1. 発票の真偽確認に関する規定

国家税務総局は増値税発票の管理強化を図るため、増値税発票の検査システムを開発しました。2017年1月1日から納税人は、取得した発票(専用発票・普通発票・自動車販売統一発票・電子普通発票)の情報を調査し、合法的なものであるかどうかを国家税務総局のウェブサイト上にあるシステム(http://inv-veri.chinatax.gov.cn)通して確認できます。

関連規定: 国家税務総局公告2016年第87号

2. 仕入税額控除に関する規定

仕入税額控除の適用を受けるための手続きが簡素化されました。取得した増値税専用発票をスキャンして税務機関に提出する認証手続きは取消され、現在は納税人が自ら専用のシステムに登録することで仕入税額控除が可能となりました。
増値税一般納税人が取得した2017年7月1日以後に発行された増値税専用発票と自動車統一発票、税関輸入増値税専用納税書の認証期限及び照合申請期限が360日以内に改定されました。 (続きを読む…)

中国の租税回避防止管理のガイドラインである『特別納税調整実施弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)の移転価格に関する規定の改定に関して、2017年3月に公布された『特別納税調査調整および相互協議手続管理弁法に関する公告』(国家税務総局公告2017年第6号。以下「6号公告」)のうち、前回紹介した関連者間役務取引の補足説明と相互協議について紹介します。
 

1. 受益性役務と非受益性役務

前回紹介した通り、6号公告では関連者間役務取引を「受益性役務」と「非受益性役務」に区分してその取扱いを定め、受益性役務の取引価格決定において考慮すべき要素と、非受益性役務とみなされる場合について例を挙げて詳細に説明をしています。
受益性役務の取引価格は、役務の具体的な内容および特性、役務提供者の機能・リスク・原価および費用、役務受領者の受益状況・市場環境、取引双方の財務状況、および比較可能な取引の価格設定の状況との要因を考慮して、合理的な移転価格算定方法を選択し、
  • 各役務受領者ごとに区別して役務プロジェクト単位で合理的な原価に基づいて取引価格を確定すること
  • 区別できない場合には、役務の性質に従って合理的な基準及び比率で各役務受領者に配賦し、配賦された原価に基づいて取引価格を確定すること
を求めています。
税前控除が否認される非受益性役務については、以下の6項目とし、具体的な例を挙げて説明しています。 (続きを読む…)

中国の租税回避防止管理のガイドラインである『特別納税調整実施弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)の移転価格に関する規定のうち、2017年3月に公布された『特別納税調査調整および相互協議手続管理弁法に関する公告』(国家税務総局公告2017年第6号。以下「6号公告」)の企業が国外関連者との間で収受する費用に関する規定を紹介します。
 

1. 国外関連者へ支払う費用に関する規定

6号公告の公布以前、企業が国外関連者に支払う費用の移転価格に関する規定として『企業の国外関連者への費用支払いに係る企業所得税の問題に関する公告』(国家税務総局公告2015年第16号。以下16号公告)がありました。16号公告では、企業が国外関連者に支払う費用は独立企業原則に基づかなければならないとし、
  • 機能・リスク・事業活動の実体のない国外関連者への支払い
  • 関連者から提供を受ける、企業に直接または間接的に経済的利益をもたらすことのできない役務費用の支払い
  • 無形資産の法律上の所有権を保有するだけの関連者に対する支払い
  • ファイナンス、上場を目的として設立した国外の持株会社、融資会社にその活動等から生じる付随的な便益に関連して支払われるロイヤリティ―は税前控除(注1)できないとしています。
なお、16号公告は6号公告の公布により廃止されました。

(注1) 企業所得税の課税所得の計算上、原価・費用として収益から控除すること。日本の法人税の損金算入に相当する。
(続きを読む…)