香港 フィンテック

香港フィンテックウィーク2020

以下は香港金融管理局を代表し公表されている。

本日(11月2日)香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority、以下「HKMA」)が香港投資推進署(InvestHK/香港投資推廣署)と、香港におけるフラッグシップフィンテックイベントである香港フィンテックウィーク2020を共同開催し、フィンテックエコシステムをさらに促進し、企業、特に中小企業(Small and Medium-sized enterprises、以下「SMEs」)をサポートするための様々なイニシアティブを発表した。

1. データを運用してSMEへの融資を促進

HKMA総裁のエディー・ユー(Eddie Yue/余偉文)氏は、開会の基調講演で、HKMAが新しいデータ戦略を模索し、銀行システムにおけるより効率的な金融仲介を可能とし、香港での金融包摂を向上させるために、商業データ交換(Commercial Data Interchange、以下「CDI」)と呼ばれる新しい金融インフラの構築を検討していることを発表した。

CDIは、銀行と商業データソース間でのより安全でかつ効率的なデータフローを可能にする、同意に基づく金融インフラである。SMEが独自のデータを使用して金融サービスへのアクセスを増進できるようにすることで、SMEの資金調達における長年の問題点を解決できる可能性を秘めている。

CDIの技術的フィージビリティを研究するために、HKMAは銀行群による協力の下、概念実証(Proof-of-Concept、以下「PoC」)研究を実施している。PoCは、貿易関連データを使用して、貿易融資申請プロセスの促進に重点を置いており、2020年末までに完遂する予定である。当該研究の次のフェーズは2021年に開始され、銀行によって実施されるオルタナティブ・クレジット・スコアリングを容易にする可能性が見込まれる、その他の商業データソースをカバーすることとなっている。

HKMAは、オルタナティブ・クレジット・スコアリングに関連する技術を開発するために、香港応用科技研究院(Hong Kong Applied Science and Technology Research Institute、以下「ASTRI」)に対し、SMEローン申請における人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」)の使用を研究するよう別途委託した。そして本日、「零細及び中小企業のオルタナティブ・クレジット・スコアリング」という表題の白書を発行して、研究結果を報告した。

2. 貿易金融のデジタル化を促進

輸入業者及び輸出業者に対し、より便利な貿易金融サービスを提供するために、貿易連動(eTradeConnect/貿易聯動)と中国人民銀行貿易金融プラットフォームの運営者は、これら2つのプラットフォームの接続を調査するためにPoCを実施すると、2019年11月に発表した。HKMAは本日、PoCのフェーズ1が正常に完了したことを発表し、2020年10月に、両国における銀行が、クロスボーダー貿易金融取引を実行するため、パイロットランを開始した。既に銀行7行が、当該接続を使用して貿易金融取引を成功させており、その貿易総額は2,600万香港ドルを超えている。2021年初頭に暫定的に実施を予定されているPoCのフェーズ2は、さらに多くの種類の貿易活動及び金融商品をカバーすることが期待されている。

これとは別に、貿易金融の課題に対処するための革新的なソリューションを探索することを目的として、HKMA並びに国際決済銀行イノベーションハブは、2020年8月にテックチャレンジ(TechChallenge/創科挑戰賽)を共同開催した。当該コンテストにおいて、合計103件のソリューションが寄せられ、結果は本日発表された。受賞者には、2021年内にプロトタイプ開発を通じて、提案されたソリューションを具体化し実装する機会が与えられる。

3. 中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency、以下「CBDC」)に係る研究

HKMAとタイ銀行が実施するクロスボーダー決済へのCBDCの適用に係る共同研究プロジェクトであるインタノン・ライオンロック(Inthanon-LionRock)は、フェーズ2に入っている。両当局は、クロスボーダー貿易決済と資本市場取引における商業的使用事例を調査することを目指している。現在、香港証券取引所、19行の銀行並びにその他5社の企業がプロジェクトに参加する予定である。

両当局はまた、この地域における他の中央銀行によって発行されたCBDCをサポートするために、クロスボーダー・コリドー・ネットワークのプロトタイプ(注)を向上させる計画である。間もなく両当局は、銀行や大企業が実際の貿易取引を実験するよう進めていく。プロジェクトの調査結果は、2021年第1四半期に発表される予定である。

4. レグテック(Regtech/合規科技)の採用を推進

レグテックの重要性の高まりと金融機関へのメリットを考慮し、HKMAは、香港の銀行セクターにおけるレグテックの採用をさらに推進すべく、2年間のロードマップを策定した。本日発表された「リスクマネジメントとコンプライアンスの変革: レグテックのパワー活用」という表題の白書に記載されているロードマップには、香港において、より多様でインタラクティブなレグテック・エコシステムの育成を目的とした、今後2年間にわたり展開される一連のプロモーション活動が含まれている。当該ロードマップの詳細は、別のプレスリリースで発表される。

ユー氏は、「香港はスマートバンキングの新時代に突入したが、次世代に備えるためには、このエコシステムを継続的に高度化し、人材強化に努める必要がある。本日発表されたフィンテックイニシアティブは、より良い銀行業務を実現し、金融包摂を推し進めるために技術を適用させるHKMAの取組みの証である」と述べている。

香港フィンテックウィーク2020の関連ビデオについては、ユー氏による開会基調講演及びユー氏が司会を務め主催するバーチャルパネルディスカッションをご覧頂きたい。

注: クロスボーダー・コリドー・ネットワークのプロトタイプは、当該研究のフェーズ1で開発された。これにより、香港とタイにおける参加銀行は、ピアツーピアベースで2ヶ所の管轄区域間で資金移動及び外国為替(FX)取引を行うことができる。

原文、2020年11月2日更新)