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香港・2019-20年度香港予算案

2019/20年度予算案で財政司長は、下記の税制措置を提案した。当該措置の全ては施行前に、関連法規の修正を必要としている。

当該法案及び実施内容のハイライトは下段に示されている通りである。よくある質問に対する回答(FAQ [1])及び当該措置が実施された場合に、上記の各項目が如何に納税義務者の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減するかを示す例示 [2]も併せて提供されている(※ここでは各FAQ及び各例示の日本語版は割愛)。

当該措置が実施された場合の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を計算したい方は、香港政府によって提供されている納税額自動計算プログラム [3]を使用することが可能。

2018/19年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減

財政司長は、2018/19年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメント [10]の税額に対し、当該税年度に限定して、20,000ドルを上限とする75%の減税措置を提案した。当該減税措置の実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。

利得税(法人・個人事業)に係る税額控除上限額は、事業単位毎に適用可能である。給与所得税に対する控除上限額は、納税義務者毎に適用可能であるが、夫婦で共同申告(ジョイント・アセスメント)を行う場合は、夫婦単位毎に適用される。パーソナル・アセスメントにおいて、納税義務者個人もしくは既婚者で配偶者と別々の申告を選択している場合、個々人に対して当該控除上限額が適用される。夫婦単位でパーソナル・アセスメントを選択する場合は、20,000ドルの控除上限額が夫婦単位毎に適用されることとなる。

当該減税措置は、資産所得税には適用されない。賃貸収入がある個人は、パーソナル・アセスメントを適用できる場合 [11]、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。

給与所得税及び利得税(法人・個人事業)それぞれに課税される納税義務者(パーソナル・アセスメントを適用できない場合)は、それぞれの税金に対して当該減税措置を享受することができる。事業収入や賃料収入のある個人でパーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。当該ケースの場合、パーソナル・アセスメントを選択しなかった場合に享受しうる減税額とは異なる可能性がある。正確な減税額は、ケースごとに判断される。税務当局は、パーソナル・アセスメントの選択が納税額を減額できるかどうかをケース毎に確認し、最も有利な方法で納税義務者を査定する。

パーソナル・アセスメントの適用を希望する場合、納税義務者は、2018/19年度給与所得税申告書(BIR60)の項目6に記入しなければならない。事業収入もしくは賃料収入がなく、給与所得のみの個人は、パーソナル・アセスメントを選択する必要がない。

当該減税措置は、2018/19年度の税額査定における納税義務者の納税債務を軽減する予定。納税義務者は例年同様、翌4月に発行される2018/19年度利得税(法人・個人事業)申告書並びに給与所得税申告書を提出しなければならない。関連法案の成立後、香港税務当局は最終査定において当該減税措置を有効とする。当該法案の成立前に発行された2018/19年度の最終税額査定書に関して、香港税務局は当該法案の成立後に再度査定を実施する予定で、税額の過払分については2019年7月後半から還付される見込みである。これに対し、納税義務者は特段申告や照会を税務当局にする必要はない。

当該減税措置は2018/19年度最終税額に対してのみ適用され、同年の予定納税額に対しては適用されない。従って、当該減税措置を差し置いて、納税義務者は依然として予定納税額を期限通りに支払う必要がある。既に支払済みの予定納税額は、2018/19年度最終査定額及び2019/20年度予定納税査定額に対する支払いに対して充当される。万が一、超過残額がある場合は還付されることとなる。

課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)

評価年度 従来(2017-18年度まで) 現行(2018-19年度以降)
課税所得純額 (累進幅)香港ドル 税率 課税所得純額 (累進幅)香港ドル 税率
第1段階 45,000 2% 50,000 2%
第2段階 45,000 7% 50,000 6%
第3段階 45,000 12% 50,000 10%
第4段階 50,000 14%
135,000 200,000
残額 17% 17%

各所得控除項目の増額(※前年度予算案より変更無)

評価年度 従来(2017-18年度)
香港ドル
現行(2018-19年度)
香港ドル
基礎控除(独身) 132,000 132,000
基礎控除(既婚者) 264,000 264,000
寡婦(夫)控除 132,000 132,000
子供扶養控除
 第1子から第9子まで各一人当たり 100,000 120,000
 誕生の年の増額 100,000 120,000
兄弟(姉妹)扶養控除 37,500 37,500
父母祖父母扶養控除
 父母祖父母扶養控除 (60歳以上及び60歳未満かつ障害者) 46,000 50,000
 父母祖父母扶養控除 (55歳~59歳まで) 23,000 25,000
付加父母控除祖父母控除 (年間を通じて納税者と同居している)
父母祖父母扶養控除 (60歳以上及び60歳未満かつ障害者) 46,000 50,000
父母祖父母扶養控除 (55歳~59歳まで) 23,000 25,000
老人介護施設費用控除 92,000 100,000
障害者扶養控除 75,000 75,000
自己障害者控除 75,000
自己学習費用税額控除年間上限額 100,000 100,000
MPF積立額税額控除年間上限額 18,000 18,000

その他の一時免除措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

2019/2020年度については、①課税対象となる個々の不動産に課される不動産税額に対し、四半期毎に最大1,500香港ドルを免除、②総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)や高齢者生活手当などの各種社会保障給付額を1カ月分追加給付、③高齢者医療券1,000香港ドル相当を提供し、当該医療券の累積限度額を8,000香港ドルまで増額、④財政的支援が必要な条件を満たす学生に対し、1人当たり2,500香港ドルの助成金を提供、⑤2020年度香港中等教育修了試験(Hong Kong Diploma of Secondary Education Examination: HKDSE)を受験する学生の受験料を政府予算から支払う、などの措置が取られる予定である。

適格保険事業に対する優遇措置(※予算案で触れるも改正条例草案等未発行)

過年度の予算案や前年度の2018年度施政報告において、行政長官が演説した内容に沿い、二層制の利得税(法人・個人事業)制、適格PEファンドへの優遇措置など、既に改正条例もしくは草案が発行されている中、財政司長は今回の予算案で、香港が一帯一路並びに粤港澳大湾区構想の一助となるべく、国際的な航空機・船舶リースセンターとしての地位を確立するため、税制等優遇措置の検討委員会を設置したと公表した上で、税制上、海上保険や特定のリスク引受けを伴う適格保険事業に対し、利得税(法人・個人事業)を50%に軽減することを提案している。

2019-20年度の商業登記費の免除

財政司長は、2019-20年度の商業登記費を免除することを提案した。

2019年2月27日付 英語原文 [12]