中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 営改増全面展開後の増値税 – 手続等の明確化 (5)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施から既に1年半近くが経過しています。今回は昨年11月公布の「国外で提供する建築サービス等に係る問題に関する公告」(国家税務総局2016年69号。以下「69号公告」)、および今年8月公布の「クロスボーダー課税行為免税備案等増値税問題に関する公告」(国家税務総局公告2017年第30号。以下「30号公告」)について紹介します。いずれも営改増全面展開後に表面化した問題への対応を統一し、明確化するためのものです。

1. クロスボーダー課税行為免税備案手続きの明確化

前回紹介した「営業税から増値税徴収に改革するクロスボーダー課税行為免税管理弁法(試行)」(国家税務総局公告2016年第29号。以下「免税管理弁法」)においては、20項目を免税となる課税行為として列挙していますが、免税適用に当たっては、納税人は所定の証明資料を添付して備案(注1)手続きを行うことが求められています。69号公告および30号公告により、免税備案手続きは以下のように規定されました。

  • 中国国内機構の国外における建築サービス提供については、免税備案手続き時において、発注者と締結した契約書に施工場所が国外であることが明記されている場合には、工事プロジェクトが国外であることを証明するその他の資料の提出を要しない。(69号公告一)
  • 中国国内機構の国外における旅行サービス提供については、免税備案手続きにおいて、サービス提供者が派遣する随行員またはサービス受領者の出国記録のコピーをサービス提供が国外で行われることの証明資料とする。(69号公告二)
  • 国際運輸サービスの免税政策を受ける中国国外機構は、免税備案手続き時に資料として、納税人の基本情報および業務状況の説明、根拠となる租税協定または国際運諭協定のコピーを提出する。(69号公告三)
  • 管理弁法に従ってクロスボーダー課税行為の免税備案を行った後は、同一業務について再び届出を行う必要はなく、免税を証明する資料を保管して調査に備えるのみで良い。(30号公告一)

(注1) 備案とは行政の所轄部門の公式記録に残すこと。行政側の同意・承認は要しない。

2. 課税行為および販売額の認定、増値税発票発行の可否など

69号公告、30号公告のその他の主たる規定は以下の通りです。なお、69号公告のうち、小規模納税人による増値税専用発票の発行(69号公告十)については、「営改増全面展開後の増値税(1)」にて紹介済みです。

  • 建築サービスを提供し、工事発注者が支払うべき工事費用から抵当金や保証金が控除される場合、発票が未発行であるならば、納税人が実際に抵当金や保証金を受領した当日を納税義務の発生時点とする。(69号公告四)
  • 長短期のサービスアパートメント(中国語表記は酒店式公寓)形式の賃貸と共に提供するサービスは、「宿泊サービス」として徴税する。(69号公告五)
  • 中国国外機構が教育部試験センター(その直属機構を含む。以下同じ)を通じて国内で試験を実施し、教育部試験センターが試験費の受取りを代行して国外の機関に試験費を支払う場合、支払う試験費を控除した金額を販売額とし、「教育補助サービス」として徴税する。また、増値税の専用発票の発行はできない。(69号公告六)
  • ビザ代行サービス、輸入増値税の免税貨物の輸入代行サービスの提供において、サービスの受領者からそれぞれビザ申請・認証に係る実費、貨物代金を受取って代行する場合、これらの受領額を控除した金額を販売額とする。また、増値税の専用発票の発行はできない。(69号公告七、八)
  • 旅行サービスの提供において、切符や航空券の発票の原本をサービスの受領者に交付し、その回収ができない場合には、これらのコピーを証憑として使用できる。(69号公告九)
  • 貨物輸送の受託者が委託者と運輸サービス契約を締結して、運送費を受領し、かつ、受託者の責任において運輸サービスの実行に必要なガソリン、通行費などの費用を支払った場合には、増値税の合法的な証憑を取得することにより、仕入増値税の控除ができる。
  • 不動産仲介業者などに不動産賃貸を委託している個人が、賃借人に増値税発票の発行が必要な場合には、受託している不動産業者を通じて所轄税務機関に増値税の代理発行申請ができる。(30号公告三)