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保税区の関連制度と可能なスキームについて

保税区は1990年に全国15カ所で開始された、「境内関外」と言われた税関の特殊監督管理区域です。元々は製造・貿易・物流各業種の進出と商流を想定していましたが、区外一般地域から区内に搬入された貨物の増値税還付が、実際に国境を離れないと還付手続きできなかったり、区外一般地域との決済が自由にできなかったりと、制度に不具合が生じたため、2000年頃から、製造機能と物流機能に分けて全国各地に認可されていったのが、「輸出加工区」と、「物流園区(前身は物流中心A/B型)」です。
各地で経験を積み、制度を構築した後、機能を集約した「保税港区」「総合保税区」が命名されるようになりました。現在は更に保税地域の所在地を囲んで「自由貿易試験区」が設置され、金融やサービス業種も含めた高度な新政策が試行されています。
これらの保税区域は地域により政策が一部異なる点もありますが、一般地域での外貨政策の変動や、土地の商業化による移転問題も合わせて、実は見直されている点もあると思います。制度上の特徴と可能なスキームについて以下に数点挙げてみます。

税関・検疫

国外から保税区に入出区する貨物に対し、強制認証や検疫措置が免除されています。
従い、一時的に入区して検査したり、修理したりする地域として活用が可能です。日系企業にとっての保税区活用方法としてはこれまであまり見られませんでしたが、中国の技術水準の高まりと共に、
このような活用方法があらためて検討されるのではと期待されます。

税務

保税区域として囲まれた地域内では、免税での取引が可能、輸出加工区では区外から区内への搬入時税還付申請が可能ですので、加工貿易企業が移転先を再検討する際、実は「輸出加工区」への移転を検討できるものと思います。
但し、華南地域の輸出加工区のネックは、製品の国内販売時には製品価格に対し関税増値税がかかるという点にあります。華東地域の保税区、例えば外高橋では、一般地域の加工貿易企業と同様に、材料に関税・増値税をかけることが認められていると聞いているので、この点華南の保税区域より優位性があるものと思います。

外貨

保税区内の貿易企業は、国外との貿易決済に対し、貨物貿易外貨システムに載らずに国際収支手続きを行います。従い、貨物代金の入送金に輸出入通関単等、中国と国外との間で輸出入した証票の提出は不要とされており、これが制度上で「三国間貿易が可能」とされる所以です。
保税区外貨管理規定第9条には、区内企業は国外企業若しくは国内区外企業に対する貨物仕入代金の支払いが可能としており、以下の情況を想定しています。
(1)直接国外より輸入、若しくは区内或は国内区外から購入した、国外企業の貨物代金を外貨口座もしくは外貨を購入して支払う。
(2)国外企業に対し輸出契約を締結し、貨物は国内区外企業より通関輸出(出国)し、国外より支払われる貨物代金を区内企業が受領後、元の通貨で国内区外企業に支払う。
(3)国内区外企業より購入した貨物代金を直接支払、銀行は国内区外企業に対し外貨入金手続きを行う。
(4)その他国外若しくは国内区外への支払。

上述の政策を基に、国内区外一般地域の企業では実施できない三国間貿易を保税区貿易会社は実施することが可能になります。実施に際しては国内区外一般地域の入送金相手企業に、その取扱い銀行宛てに具体的に確認してもらうことが必要です。