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ベトナムビジネス・会計税務入門 ~ 労務関連その2

国によって労働者と会社の権利・義務は様々に異なっています。その違いを知らなかったためにトラブルが起きたということが無いよう、事前に労働に関する法律をある程度把握することが必要です。ベトナムに法人や駐在員事務所を設立し、人材を採用するにあたって注意しなければならない点等、労務管理についてみていきましょう。

1 スタッフの雇用

従来は、外国人への雇用規制があり、外国人の雇用は総従業員数の3%までしか認められていませんでした。しかし、2008年3月にこの規制は撤廃され、現在は雇用人数に規制はありません。
また、法人及び駐在員事務所ともにベトナム人雇用義務はありませんので、外国人のみで運営することも可能です。
スタッフの雇用に関し、試用期間を設けることができます。労働法第27条によると、高度な技術を持つ者(短期大学卒業以上の学歴レベル)に対しては最長60日間、技能を持つ者(専門学校卒業レベル)に対しては最長30日間、その他の者については6日間となっています。
試用期間の給与は、少なくとも正規雇用時の給与の85%でなければなりません。また試用期間中は、会社側、労働者側の双方とも、事前通告無しにいつでも契約解除をすることができます。

2 労働契約書

 スタッフの雇用に伴い、雇用条件、給与、権利及び義務についての合意書である労働契約書を締結します。労働契約書には以下の3種類があります。
① 無期限労働契約書
② 12ヶ月から36ヶ月までの有期限労働契約書
③ 季節労働または特定業務従事のため12ヶ月未満の有期限労働契約書
ベトナムでの定年は、男性60歳、女性55歳となっています。従って①の労働契約書を締結した場合は定年となる歳までの契約となります。
労働契約書には、契約期間、勤務時間、給与、勤務地等の労働条件を記載します。以前は、労働契約書のフォームを労働局で購入しなければなりませんでしたが、現在は、フォームに沿ってワード等で作成するケースが殆どです。労働者側による署名、会社側による署名及び社判押印後、それぞれ一部ずつ保有します。
また、労働契約書はベトナム語で締結しなければなりませんが、参考として日本語あるいは英語などベトナム語以外の外国語で作成することも可能です。
 

3 労働契約の終了

労働法では、労働契約の終了は以下のケースで認められるとされています。

(1)通常の契約終了

① 契約期間の終了
② 契約に基づく業務の終了
③ 当事者間の合意による終了
④ 定年の年齢に達した。
⑤ 被雇用者に裁判所より懲役処分が下された、あるいは裁判所から業務の禁止宣告を受けた。
⑥ 被雇用者の死亡あるいは裁判所から失踪宣告を受けた。
⑦ 個人である雇用者が死亡した、裁判所より民事行為能力を失った、失跡した、又は死亡したという認定決定書を出された、個人ではない雇用者が活動を終了した。
⑧ 被雇用者労働法に基づく解雇処分となった。
⑨ 被雇用者が労働法に基づき一方的に労働契約を解除した。
⑩ 雇用者が本法第 38 条の規定に基づき、一方的に労働契約を解除した。雇用者が組織・技術の変更、経済上の問題、企業の吸収・合併・分割・分離の理由で労働者を解雇した。

(2)雇用者からの契約の終了

① 被雇用者が、契約した業務を遂行しない。
② 病気等により長期で休職した。
③ 天災等の不可抗力により事業を行うことができない。
④ 労働契約の一時履行停止後に欠勤をする。
会社側は、事前に契約終了の旨を労働者に通知しなければなりません。無期限労働契約の場合は45日前に、12ヶ月から36ヶ月の有期限労働契約の場合は30日前、季節労働又は12ヶ月未満の有期限労働契約の場合は3日前までに通知が必要です。

(3)被雇用者側からの契約の終了

① 労働契約書で合意された労働条件が満たされていない。
② 労働契約書で明記された給与が充分に支給されない、または支給が遅延する。
③ 虐待、セクシャルハラスメント、強制労働をさせられた。
④ 被雇用者本人あるいは家族に何らかの困難が生じ業務の継続ができない。
⑤ 被雇用者が選挙あるいは任命により国家の要職に就いた。
⑥ 被雇用者が妊娠しており、医師の診断により業務の継続ができない。
⑦ 病気等により長期で休職しなければならない。
 期限の定めの無い労働契約の場合、労働者側から契約を終了させる場合は、基本的には45日以内に会社側に通知しなければなりません。
12ヶ月から36ヶ月までの労働契約で、①、②、③、⑦の理由のために労働契約を終了させる場合は、会社側に少なくとも3日前までに、④と⑤の理由は30日前までに会社側に契約終了の旨を通知する必要があります。季節労働又は12ヶ月未満の労働契約の場合は、⑥を除き3日前までに通知が必要です。

(4)懲戒解雇

 労働者が以下の行為を行った場合、会社側は懲戒解雇をすることができます。 
① 企業内部情報を外部に漏洩させた、資産を窃盗した等会社に損害を与えた。
② 懲罰期間中に、再度同じ行為を行った。
③ 1ヶ月に5回以上、又は年間で20日以上無断欠勤をした。
 懲戒解雇を受けた場合、その労働者は退職金を受けることができません。