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中国国内におけるグループ企業間の転勤について(労働契約編)

1. 概要

中国国内のグループ企業間や分公司等の拠点間で従業員を配置転換(転勤)させることがあります。また、組織変更などにより一部又は全ての従業員をグループ企業に異動させるケースがあります。今回はこうした転勤時における労働契約上の注意点と関連規定について以下にまとめました。尚以下は正社員のケースとなり、労務派遣契約により使用する派遣社員は含まれません。

2. 注意点

(1) 転勤時に必要な前提

  1. 転勤について当事者間の合意があること。
  2. 異動先企業と当該従業員の間で締結する労働契約上で約定される条件が、現在在籍する企業(以下在籍企業と呼称)と当該従業員の間で締結している労働契約上で約定されている条件と同等か、又は優っていること。*1

(2) 勤務年数の扱い

在籍企業での労働契約を解除する際に、企業側が以下のいずれかを選択可能。*2

  1. 在籍企業における勤務年数を、異動先企業において引き継ぐ。
    • 在籍企業との労働契約解除時に経済補償金支払の必要無し。
    • 実務上、異動先企業との労働契約締結時に、労働契約書又は別の協議書等に在籍企業での勤務年数を引き継ぐ旨約定する必要あり。
    • 異動先企業で当該従業員からの提起により労働契約の合意解除/終了となった場合、又は無過失解雇/即時解雇となった場合には経済補償金支払の必要無し。
    • 実務上、特に組織再編などにより一部又は全ての従業員をグループ企業に異動させる場合に、従業員側が(2)-①を知らない、又は知っていても納得しないケースがあるため、注意が必要。
  2. 在籍企業における勤務年数を一度リセットし、異動先企業ではゼロから開始する。
    • 在籍企業との労働契約解除時に経済補償金の支払が必要。
    • 実務上、特に組織再編などにより一部又は全ての従業員をグループ企業に異動させる場合に、従業員側が(2)-①を知らない、又は知っていても納得しない場合に、やむを得ず(2)-②を選択するケースがある。

(3) 総公司との労働契約で分公司に勤務する場合

例: 上海総公司、広州分公司、従業員は広州勤務のケース

  1. 広州市人力資源・社会保障局ホットラインへの確認によると、広州分公司の工商登記地である広州を勤務地として労働契約に記載し、広州分公司と当該従業員の間で労働契約を締結すべきであり、上海総公司と当該従業員の間で労働契約を締結する場合、上海で社会保険・住宅積立金(※転勤時の社会保険・住宅積立金については今後別記事にて詳述予定)に加入すべきとの見解(最終確認日:2018年3月19日)。
  2. 実務上、上海総公司と当該従業員の間で労働契約を締結し、且つFESCO等の仲介機構を通じて広州で社会保険・住宅積立金に加入することが可能(別途企業とFESCO等仲介機構の間で契約を締結し、月額手数料を支払う必要あり)。

(4) 出向時

例: 広州が在籍企業、香港が出向先企業のケース

  1. 広州市人力資源・社会保障局ホットラインへの確認によると、広州の在籍企業と当該従業員の間で労働契約を締結し、勤務地も広州とし、広州で社会保険に加入する必要ありとの見解(最終確認日:2018年3月19日)。
  2. 中国本土人材が香港のグループ企業へ出向する際には、香港での就労ビザの取得が必要となり、該当するビザの種類は、優秀人材入境計画(QMAS) [9]もしくは輸入内地人材計画(ASMTP) [10]。取得条件を満たしているか、又必要書類を準備可能かについて別途確認が必要となる(詳細は関連会社NAC HR (Asia) Ltd. [11]にお問い合わせください)。

(5) 企業から一方的に労働契約を解除できない状況*1

  1. 職業病のリスクがある作業に従事している従業員が、離職前に健康診断をしていない、又は職業病の疑いのある患者で診断又は医学的観察期間にある場合。
  2. 在籍企業において職業病に羅患又は業務上負傷に遭い、労働能力の喪失又は一部の喪失が確認された場合。
  3. 疾病又は業務外負傷により規定の医療期間 [12]にある場合。
  4. 女子従業員が三期(妊娠期間、出産期間、授乳期間) [13]にある場合。
  5. 在籍企業において満15年連続勤務し、法定定年年齢まで5年未満の場合。
  6. 法律、行政法規が定めるその他の状況。

3. 現行規定のまとめ(国家)

現行の関連規定は以下の通り。

番号 時期 規定情報 URL
*1 2008/1 『中華人民共和国労働契約法』【主席令第65号】第46条5項、第39-42条 原文 [14]
*2 2008/9 『中華人民共和国労働契約法実施条例』【国務院令第535号】第10条、第18条 原文 [15]