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香港・国別報告書制度 – 2018年1月更新版

目次

  1. 国別報告書制度とは
  2. 香港における導入
  3. 通知及び申告
  4. 任意提出手続
  5. 国別報告書の自動交換
  6. 国別報告書における情報の適切な利用
  7. 国別報告書制度ポータルの試用版
  8. 国別報告書制度に関する資料
  9. 問い合わせ等

1. 国別報告書制度とは

国別報告書制度(Country-by-Country、略して「CbC」以下「国別」、Reporting)とは、企業の税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、以下「BEPS」)への行動計画13に基づき、経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development、以下「OECD」)によって策定された最低限導入すべき基準の1つである。

当該基準の下、特定多国籍企業グループ(multinational enterprise group、以下「MNEグループ」)は、下記の条件に当てはまる場合に、該当する会計年度に関連する報告書を提出することが要求される。

国別報告書は、MNEグループを構成する各国の事業体が、経済活動に従事する税務上の居住地国毎における所得、納税額及び特定の指標の全世界配分に関して、詳細かつ共通の情報を収集することを要求し、また、財務情報が報告された全ての構成事業体のリストの作成と、その中では、当該構成事業体の設立された場所(もし税務上の居住地国とは異なる場合)及び主要な事業活動の内容を明記することが求められる。

国別報告書は、各国税務当局間での関連する情報交換協定に基づき、自動的に情報交換が実施される。

2. 香港における導入

香港における国別報告書の実施体制は、2017年税務(改正)(第6号)条例草案の下、提供される。当該草案は2017年12月29日に官報へ掲載されており、立法会にて精査を経ることとなっている。

国別報告書を含むCbC Return(国別申告書)の申告は、グループ連結での年間の売上高が特定の金額(68億香港ドル)に達しているMNEグループにのみ要求される(報告対象グループ)。

報告対象グループに関して、国別申告書提出の主要な義務は、最終親事業体(Ultimate Parent Entities、以下「UPE」)でかつ香港居住者(HK UPE)に対して課され、その他の如何なる国に所在する構成事業体でかつ香港居住者(Hong Kong Entities)は、対象とはならない。HK UPEは、2018年1月1日以降に開始する会計期間に関し、国別申告書を提出する必要がある。HK UPEは、任意に2016年1月1日から2017年12月31日の間に開始される会計期間に関し、国別申告書を提出することも可能である。

UPEが香港に居住していない報告対象グループの香港事業体は、次の何れかの条件に該当する場合は、国別申告書を提出する二次的義務が発生する:

上記の条件の1つに該当する場合であっても、以下の場合には、対象となる香港事業体は国別申告書を提出する必要はない:

各香港事業体は、関連する会計期間の終了後の3カ月以内に、国別申告書を提出する義務の有無決定に関連する情報を含む通知を実施する必要がある。2つ以上の香港企業体を持つ報告対象グループの場合、一方の香港事業体は、国別申告書を提出すべきである事業体ではなく、かつ別の香港事業体が既に当該通知を実施している場合、当該通知を実施する必要はない。実務上は、当該通知を実施した企業もしくは国別申告書を提出する義務があるとみなされる如何なる企業に対し、税務査定主任が要申告通知を送付する。

国別申告書の提出期限は、対象となる会計年度の終了時から12カ月以内、または税務査定主任が指定した期日のうち、早い方が適用される。

業務代行者(Service Provider、以下「SP」)は、国別申告書もしくは関連する通知を提出する業務に従事することができる。国別申告書を期限内に提出できない、または誤解を招く情報、虚偽の情報や不正確な情報を国別申告書上で提供するなどに関し、罰金が科される。いくつかの罰金規定は、SPにも適用される。

3. 通知及び申告

国別報告書制度を促進するため、香港税務局は香港事業体が以下の項目を実施するよう国別報告書制度ポータルを開発している:

香港事業体は、国別報告書制度ポータルの下で提供されているサービスにアクセスするために、国別報告書制度アカウントを登録しなければならない。該当する事業体の国別報告書制度アカウントを登録する権限を付与された者(法人)は、認証目的である自動情報交換制度(Automatic Exchange of Information、以下「AEOI」)機能を備えた電子証書(機構)(e-Cert(Organizational))を所有していなければならない。AEOI機能を使用した電子証書(機構)の申請に係る詳細については、香港郵政核證(証明)機関のウェブサイト参照。

SPもしくは個人事業の経営責任者(Person Responsible for Managing a non-corporate entity、以下「PRM」)が、国別報告書制度アカウントの登録及び/または運営を行う権限を付与されている場合、国別報告書制度アカウントの登録/運営を許可された担当者の詳細通知書(フォームIR1465 [11])に記載の上、香港税務局に通知しなければばらない。SPの権限を付与された者もしくはPRMは、認証目的であるAEOI機能を備えた電子証書(機構)を所有していなければならないことに留意して頂きたい。

SPもしくはPRMは、複数の香港事業体の国別報告書制度アカウントを登録/運営し、各事業体を代表して、それらの国別申告書を提出することが可能である。導入運営事業者参照番号(Lead Operator Reference Number、「以下LORN」)を取得するための申請(フォームIR1466 [12])は、導入運営事業者として、1回のログインで関連する香港事業体の国別報告書制度アカウントにアクセスするために、SPもしくはPRMによって実施することが可能である。

国別報告書(国別申告書の一部を構成する)は、XML文書の形式で作成されなければならない。この理由は、国別報告書制度の要件を導入した税務管轄区域(国地域)間での情報交換のため、共通の媒体であるXML文書を認証し、情報提供できるからである。これに関し、香港税務局は、OECDによって発行されている国別報告書のXMLスキーマv1.0.1に基づき、XML文書でデータスキーマを開発した。当該データスキーマは、国別報告書を香港税務局に提出するためのデータ構造とフォーマットを明確に規定している。下記のリンクをクリックして、最新版データスキーマ及び関連ユーザーガイドをダウンロードして頂きたい:

4. 任意提出手続

いくつかの税務管轄区域では、2016年1月1日以降に開始する会計期間の国別報告書制度の遵守要件が導入されている。そのような税務管轄区域では、ある構成事業体が、同じ会計期間の国別報告書の報告要件を有さない別の税務管轄区域に居住するUPEを抱える報告対象グループの構成事業体の1つである場合、そこで国別報告書を提出することが要求される(ローカルファイリング)。香港は、2018年1月1日以降の会計期間のみ国別報告書制度を実施するため、HK UPE(香港報告対象グループ)を伴う報告対象グループの構成事業体は、2016年1月1日から2017年12月31日に開始する会計期間 において、ローカルファイリングの対象となる可能がある(早期報告期間)。香港報告対象グループのローカルファイリングリスクを緩和するため、香港税務局は、早期報告期間の国別報告書の任意提出を受け入れる体制を整えている。

任意提出手続の下、香港報告対象グループのHK UPEは、そこに含まれる国別報告書の関連する税務管轄区域との交換のために、早期報告期間中に国別申告書を香港税務局に提出することが可能である。前述の国別報告書制度の要件はすべて、以下の項目を除き、任意提出手続に適用される:

香港報告対象グループは、この任意提出手続きが、税務管轄区域におけるローカルファイリング義務を軽減することができるかどうかは、当該管轄区域の国別報告書制度の要件に起因することに留意すべきである。

5. 国別報告書の自動交換

香港が国別報告書を他の税務管轄区域と交換するための主要なプラットフォームは、多国間税務行政執行共助協定(多国間協定)である。

この目的達成ために、香港政府は、多国間協定を発効させる命令を下すことができる権限を、行政長官会並びに行政会議に付与するため、2017年10月18日に立法会へ2017年税務(改正)(第5号)条例草案を提議している。当該多国間協定は、法律の制定、命令の履行、多国間協定の受託者との関連手続完了後に、香港に適用される。

現在、当該多国間協定は香港には適用されないため、国別報告書の交換に関する二国間協定は、香港との包括的二重課税防止協定(Comprehensive Avoidance of Double Taxation Agreements、以下「CDTAs」)を有する税務管轄区域との間で施行される必要がある。これまで香港は、以下の税務管轄区域と二国間協定を締結している:

税務管轄区域 国別報告書初回交換年度
フランス 2016
アイルランド 2016
南アフリカ共和国 2016
イギリス 2016

一方、香港政府は、早期報告期間に実行可能なより多くの二国間協定の締結を目論んでいる他のCDTAパートナーとの議論を継続していく。

6. 国別報告書における情報の適切な利用

BEPSの行動計画13の最終報告書には、国別報告書の情報(CbCR情報)の3つの認可された使用目的が設定されている、すなわち:

香港税務局は、BEPSの行動計画13の最終報告書上で認可されている使用目的に従い、CbCR情報を使用することに全力で取り組んでいる。当局は、税務条例上の目的で、納税者の収入を評価もしくは再評価するために、CbCR情報を単独で使用することはない。

香港税務局は、完全な機能分析と完全な比較分析に基づいて、個々の取引及び価格の詳細な移転価格分析の代替手法として、CbCR情報を使用することはない。CbCR情報は、それ自体移転価格が不適切であるかどうかを決定的に示す証拠となるものではなく、また、世界基準の利益の定式配賦法に基づいて、移転価格調整を提案するために使用されることはない。CbCR情報の適切な使用に対する如何なる違反行為は、関連する交換協定の下で必要に応じて開示され、CbCR情報に基づく不適切な税額調整は、全ての関連する所轄当局での審議において容認される。

しかしながら、税務調査または税務監査を計画するに当たり、CbCR情報を使用することができる。また、税務監査の過程で、MNEグループの移転価格設定やその他の税務問題に対するさらなる調査の根拠として使用することができる。これらの調査を実施するに当たり、CbCR情報の使用を通じて特定される潜在的なリスクに、特に関連していないといけないという要件はない。例えば、CbCR情報(構成事業体の詳細など)は、他のデータソースを使用して特定される、または税務監査もしくは税務調査の過程で発生する税務問題を調査するために、利用される可能性がある。

なお、「その他のBEPS関連リスクの評価」という用語は、税務管轄区域の課税基盤の侵食をもたらす可能性のある高レベルな税リスクの評価を示している。実際のところ、CbCR情報は、潜在的な税務上のリスクがあるサインを特定するために、使用されることがある一方で、通常、さらなる税務調査が行われた後に、そのリスクを引き起こす協定と理解することができる。この点において、香港税務局は、税務監査もしくは税務調査の過程でのリスク評価及び調査に、CbCR情報の使用を限定する。この情報は、あるMNEグループが他の形態のBEPS行動に従事しているという決定的な証拠とはみなされない。

7. 国別報告書制度ポータルの試用版

香港事業体が国別報告書制度ポータルの運用について、より深く理解できるよう、香港税務局は、国別報告書制度ポータルで提供されている機能の試用版を展開している。香港事業体は、当該試用版に是非参加して頂きたい。当該試用版は、下記の通り2つの段階で構成されている:

当該試用版に参加する前に、香港事業体は下記を対応すべきである:

当該試用版措置に関する質問があれば、cbc_reporting@ird.gov.hkまでEメールでの問い合わせが可能である。

8. 国別報告書制度に関する資料

(1) 改正法案

(2) OECDの資料

9. 問い合わせ等

国別報告書制度についての質問があれば、下記のEメールへの問い合わせが可能である:

原文 [21]、2018年1月15日更新)