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[全訳] 『国家税務総局の増値税一般納税人登記管理弁法』の解説

『国家税務総局の増値税一般納税人登記管理弁法』の解説
原文

発布日:2018年1月4日

国務院が推進する「放管服」改革に対し、納税サービスを更に向上させ、増値税一般納税人の管理を規範化するため、税務総局は『増値税一般納税人登記管理弁法』(以下、『弁法』と略す)を制定、公布した。ここに『弁法』の内容を解説する。

1. 背景

積極的に「放管服」改革を進めるため、2015年2月、国務院は『行政認可項目等事項の取消と変更に関する決定』(国発[2015]11号)を発布し、「増値税一般納税人資格認定」を行政認可事項から外した。国務院の決定事項を貫徹するため、税務総局は『国家税務総局の増値税一般納税人管理調整に関する事項の公告』(国家税務総局公告2015年第18号)を公布、2015年4月1日より一般納税人の管理を認可から登記制へと変更した。また、同時に『増値税一般納税人認定管理弁法』(国家税務総局令第22号、以下『22号令』と略す)の条文を一部修正した。2016年2月、2017年11月、国務院は2度に渉る『中華人民共和国増値税暫行条例』の修正を行い、修正前の第十三条にある「認定」を「登記」に変更した。国務院の「放管服」改革を貫徹するため、税務総局は22号令について修正を行い、本『弁法』を制定した。

2. 主な変更点

22号令と比較し、『弁法』の内容は以下のように修正された。
(1) 行政認可は不要となった。『弁法』は税務機関の認可手続きがなくなり、登記制度となった。管轄税務機関は納税人が提出した資料を確認した後、納税人は一般納税人となる。

(2) 手続きの簡略化。ひとつは登記に必要となる書類が簡略化され、もともと6種類必要だった書類が2種類となった。納税人は税務登記証を持参し、登記表に記入するだけで、一般納税人の登記ができる。ふたつめは、税務機関内のフローが簡略化されたこと。登記住所における実地調査がなくなり、条件に適合している納税人は、税務局にて手続きが完了する。

(3) 税制改革への対応。増値税改革を全面的に推進するため、サービス、無形資産、不動産の販売は全て増値税課税対象となり、改革実施地の納税人は元の増値税納税人に対する販売額や登記不要となる範囲などにおいて差異が生じた。このため、『弁法』では、内容に新旧差異があり、明確に規定されていない内容について、「財政部、国家税務総局の規定」もしくは、「政策規定」に基づく、としている。

3. 主な内容

(1) 年間課税売上高の定義。ひとつは、年間課税売上高の所属期が明確になったこと。利便性向上のため、納税人の税務手続き回数を減らす。税務総局は2016年4月1日より増値税小規模納税人の増値税納税を原則的に四半期ごととし、年間課税売上高の計算期間と申告対象期間の整合性をとるため、『弁法』には四半期ごとに計算する年間課税売上高の内容が追加された。ふたつめに、増値税改革を全面的に推進するため、年間課税売上高の計算について、特殊規定を明確にした。『弁法』では、サービス、無形資産、不動産の販売(以下、『課税行為』と略する)を行い、控除項目がある納税人は、その課税行為があった年度の売上は控除前の売上から年間課税売上高を計算する。一時的に生じた無形資産の販売、不動産の転売に係る売上は、課税行為があった年度の課税売上高に含まない。

(2) 一般納税人登記が不要な納税人の範囲を明確化。『弁法』において、一般納税人登記が不要な納税人の範囲を次の通りとした。「政策規定に基づき、小規模納税人の適用を選択した納税人。年間課税売上高の基準を超えたその他個人」。そのうち、小規模納税人の適用を選択することについて、根拠法は次のふたつ。『中華人民共和国増値税暫行条例実施細則』第29条、非企業性機関、課税行為が日常的に発生しない企業は小規模納税人の適用を選択してもよい。『営業税から増値税への移行改革実施弁法』(財税[2016]36号)第3条、年間課税売上高が規定された基準を超えても経常的に課税行為が生じない機関や個人事業主は小規模納税人の適用を選択することが可能である。

(3) 一般納税人の登記手順の明確化。管轄税務機関が納税人の提出書類を受理した後、受理した担当者は税務登記情報と照合し、一致が認められればその場で登記を行う。仮に一致が認められないか、記載した内容が不完全な場合は、実際の状況に応じて税務登記を変更するか、『増値税一般納税人登記表』を再度記載しなおすよう要求する。告知方式は書面か口頭のいずれかとする。

(4) 年間課税売上高が基準を超えた納税人の手続き期間と管理要求を明確化した。『弁法』では、納税人は年間課税売上高が基準を超えた月(もしくは四半期)の申告期限が終了して15日以内に規定に基づき手続きを行わなければならない。手続きを行わない場合、管轄税務機関は5日以内に『税務事項通知書』を発行し、納税人に5日以内に管轄税務機関に赴き手続きを行うよう告知しなければならない。期限を過ぎても手続きを行わない場合、翌月から販売額と規定の増値税率に基づき納税額を計算する。なお、仕入れ増値税は控除してはならない。納税人が関連の手続きを行うまで適用される。

(5) 一般納税人となる日を納税人自らが選択することができることの明確化。22号令と比較し、『弁法』では、一般納税人となる日を登記が完了した当月1日とするか、翌月1日とするか、登記を行う時点で、納税人が選択できるように規定された。