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[華南ビジネス] 国道107号線(宝安沿線)の改造プロジェクトについて

珠江デルタの主要通路の一つであり、シンセンの広深高速等と並ぶ幹線道路に、107号と呼ばれる北京から文錦渡税関まで通っている国道があります。この宝安(シンセン特区外の西側エリア)沿線には、前海港、深セン空港といった貨物運輸のハブがあり、日系製造業も昔から多く進出しています。昨今、この沿線を第二の深南大道にするという、総工費150億元の「107国道改造プロジェクト」が発足していて、市の地下鉄建設やパイプラインの建設と合わせて近隣土地の商業化が行われることが予想され、沿線の製造業が移転を迫られる不安にさらされています。

「107国道改造プロジェクト」は2016年1月に深セン市発展改革委員会が交通運輸委員会に対し、南頭で北環路・深南大道に繋がる地点から、新安・西郷・福永・沙井・松崗の5か所の街道(行政区画)を北上する31.4kmに対し道路拡張・立体交差・トンネル・地下パイプライン建設を含む大工程を認可したものです。
更に、2016年3月には、この沿線での貨物車両の通行を制限し、沿江高速~松福大道~南光高速へ誘導するという工程に対する認可を出しており、これが地元で「107国道大改造、まもなくトラック通行禁止」といった新聞記事になったようです(実際には2017年11月に至るまで通行制限は実施されていません)。

政府関連部門HPに記載される土地や産業の発展計画によると、沿線の地域別の発展産業は次のように記載されています。
 松崗沿線: 航空宇宙装備、航空電子、軌道交通装備、海洋装備、海洋電子装備、クルーズ船、ハイエンド装備製造業、地区本部、研究開発、試験
 沙井先進製造業沿線:新世代情報技術、新材料、省エネ・エコ、ハイテク産業研究開発、試験、コア製造業、科学技術イノベーション能力向上
 福永航空城沿線:ソフトウェア、インターネット、電子商務、現代物流、戦略性新興産業、本部基地、研究開発とインキュベーション、商業オフィス、会議、ホテル、臨空経済産業を奨励
 西郷総部経済沿線:新世代電子情報産業、超材料産業、設計、研究開発、製造業に対するサービス産業、地区本部経済圏
 宝安中心沿線: 商業、金融、現代サービス
      
現在、国道107号線宝安区沿線に投資している日系企業がすぐにも移転や退去させられる可能性があるかどうか、また貨物トラック規制があるかどうかについて、11月22日に開かれた、シンセン市政府各部門と、シンセン商工会との政策交流会で質問が上がりました。これに対し、市の交通運輸委員会が回答した内容によると、このプロジェクトは巨額の工事費を伴い、道路・地下鉄・地下パイプラインと密接に関わることから各政府部門間の調整・準備にもかなり時間がかかっていて「ここ数年では工事開始はできない」情況であるということでした。また建設中の海浜大道等の周辺ルート網が整備されるまでは、107号宝安沿線の貨物車両制限は実行できないということでした。
とは言え、国道107号宝安沿線改造計画は確かに進められており、関連部門による土地計画や地域発展計画等の進捗を注視していき、今後の沿線企業の立地を慎重に検討していく必要があると思います。

※各地の運用状況が異なる場合があります。各所在地にて再度ご確認ください。