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[中国会計税務レポ] 税収徴収管理法の概要 – 税金の徴収(1)

中国においても、企業活動に関係する税金の徴収は、納税者自身が申告して納税することや源泉徴収といった手法が採用されています。今回は税金の徴収に関する規範法規である税収徴収管理法の概要を紹介します。

1. 税収徴収管理法

 税収徴収管理弁法(注1)は、租税徴収および納付行為の規範化、税収徴収管理の強化、国家の租税収入の確保、納税者の合法的権益の保護、税収管理の現代化の促進を図り、経済及び社会発展の促進を目的として制定すると規定されており、日本の国税徴収法に相当すると言えます。現行の税収徴収管理法は、総則、税務管理、税金徴収、税務調査、法律責任の五章(注2)で構成されており、当該管理法の実施における手続きや判断に関する規則を定めた実施細則も制定されています。 税収徴収管理法及びその実施細則は、税務機関の徴収管理に適用され、租税の徴収開始・停止、減税、免税、税金還付、税金追徴に関することは、原則として全てこの法規に基づいて実施され、これに抵触する行為は認められず、無効となります。

(注1) 中国語の表記は「税収征収管理法」。現行法は2001年5月1日に施行されていますが、2015年1月に改正草案を公布しており、近日中の改正が予定されています。
(注2) 改正法の公開草案では、総則、税務登記、証憑管理、情報公表、申告納税、税額確認、税金追徴、税務調査、法律責任の八章からなり、税務に関する情報の公表、税額やその徴収方法に関する規定が詳細になることが予定されています。

2. 納税人および税務機関の権利・義務

税収徴収管理法において、納税義務のある組織や個人を「納税人」と定め、納税人と源泉徴収義務者(注3)は、この法規に基づいて税金の納付や情報の提供を行うことを求めています。なお、納税人は税務機関に対し、◇租税法規や納税手続きについて照会する権利◇自己の情報に関する守秘を要求する権利◇減税、免税、還付を請求する権利◇税務機関の決定に対する陳述権や抗弁権、不服申し立てや賠償請求する権利◇税務機関や税務職員の違法行為を告発する権利―を有するとされています。
一方、税務機関(注4)および税務職員は、この法規に基づき忠実に職務を執行するとともに、納税者および源泉徴収義務者の権利を尊重、保護し、租税法規を遵守しなければならないと定められています。また、徴税職員と審査を担当する職員の職責、税務局と検査局の職責は明確に分けて、独立性を確保することや、税務調査などの実施においては親族などの利害関係者を排除することなども求められています。

(注3) 中国語の表記は「コウキョウ義務人」(コウは手へんに口、キョウは激のさんずいを糸へんに)。納税人に対価等を支払う者が、その支払い額から税額を控除して預かり、納税人に代わって納税を行う義務を有します。
(注4) 国家税務総局、省、市、県など各級税務局のほか、脱税、追徴の回避、税額詐取などの調査処理を専門に行う検査局が含まれます。

3. 税務登記と納税申告

納税人には、税務登記を行う事が求められます。三証合一(注5)制度により、税務機関で新たに納税番号を取得する必要はなくなりましたが、会社は営業許可証の取得後に税務機関で登記手続きを行い、税務登記証の交付を受ける必要があります。税務登記の具体的な手続きに関しては、税務登記管理弁法が定められています。税務登記以降の納税に関する事象は、全て納税人識別番号で管理されることになります。
申告方法は、◇納税人または源泉徴収義務者が直接税務機関に申告◇郵送◇電子申告―する方法が認められており、郵送による場合には、郵送消印日をもって申告日とされます。現在、企業所得税、増値税、個人所得税などの主要な税目では、通常、電子申告が行われています。なお、納税人や源泉徴収義務者が納税申告書の期限内提出ができない場合には、税務機関の認可を受けて、提出期限を延長することができます。

(注5) 2015年10月1日より、従来別々であった営業許可証番号、組織機構番号、税務登記証番号が統一され、統一社会信用コード番号が付与されています。納税人識別番号にはこのコード番号が使用されます。