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[中国労務]広東省女性従業員労働保護規定について

1.新規定の公布、実施

《広東省〈女性従業員労働保護特別規定〉実施弁法》が2016年12月20日に公布され、2017年2月1日より施行となった。これにより従前に施行されていた《広東省女性従業員労働保護実施弁法》(粤府[1989]16号)は同時に廃止される。
女子従業員労働保護に関しては、国の《女性従業員労働保護特別規定》(国務院令第619号、2002年4月28日公布・施行)がある。
 また広東省の産休日数や生育保険の規定に関しては次の規定も参照する必要がある。

・《広東省人口と計画生育条例》
広東省第12届人民代表大会常務委員会 第28次会議《〈広東省人口と計画生育条例〉修正の決定》2016年9月29日公布・施行
・《広東省従業員生育保険規定》
広東省人民政府 粤府令第203号 2015年1月1日施行

2.変更点について

(1)保護条項

➀権益保護
・企業には女性従業員労働保護制度の制定義務、安全衛生条件改善、安全衛生知識教育強化の義務がある。(第5条)
・女性従業員の妊娠・出産・授乳期間中、労働契約を解除或は終了してはならないという元の規定は、労働契約に結婚・生育に関わる制限内容を約定してはならず、賃金・昇給において女性従業員を差別或は制限してはならないという規定に変更されている。(第7条)

②従事してはならない労働範囲
・従事してはならない労働範囲は国の《女性従業員労働保護特別規定》の付属文書に規定する通りと定めている。(第6条)
・また従来規定及び草案にあった“月経期間の休暇”については、最終的には「4時間以上の立ち仕事を行う場合に本人の申請を経て休憩を与える」とされた。 (第8条第1項)

③妊娠期間中の保護規定
・妊娠期間に業務に適しない場合、医療機構の証明に基づき業務の軽減或は職場調整を行う。(第10条(1))
・妊娠期間に医療機構の診断を経て休む(“「保胎」”)場合、病気休暇として取り扱う。(第10条(2))
・妊娠7か月以上において毎日1時間の休憩を与え、その休憩時間は正常勤務時間給与を支払、夜勤・残業に従事してはならない。立ち仕事の場合は仕事場に座席を設置しなければならない。(第10条(3))
・労働時間内の産前検査に必要な時間は正常労働勤務給与となる(第10条(4))

④その他の保護規定
・結婚前の婦人科検診については「正常勤務給与を支払う」から「会社は便宜を与える」という表現に変更された。(第9条)
・企業は毎月女性に生理用品或は労働保護衛生費を支給することができる。(第8条第2項)
・更年期総合症の女性に対し仕事量の軽減や職場調整を図る。(従前より継続、第19条)
・企業は1年か2年毎に1回、婦人科検診を手配することができるとし、更に、可能な企業に対し乳癌・子宮癌検診を奨励する。(新規追加、第20条)
・企業はセクハラ行為を防止する責任がある。(新規追加、第21条)

(2)産休、流産、その他の休暇日数、休憩時間等
 
➀産休・流産休暇日数
・国の規定通り、基本の産休は98日、難産は国が15日に対し広東省は30日、多胎生育は同じ15日/人とされる。
・合法出産の場合、広東省の奨励休暇を享受(《広東省人口と計画生育条例》に基づき80日)
・流産休暇日数規定に関し、国の規定が4か月未満/以上で15/42日であるのに加え、広東省は4か月未満:15~30日、4-7か月:42日、7か月以上:75日と規定。広東省生育保険規定には7か月以上の定めはなく、今般の本規定に基づくとされた。
(以上第11条)

②授乳期間
・授乳期間中毎日1時間、多胎の場合1人当たり1時間増加の授乳時間を付与、正常勤務時間給与とする。(第15条)
・産休終了後の勤務が確かに困難である場合、本人の申請を経て満1歳になるまで授乳休暇の取得が可能とされる。この休暇中の給与は、企業と本人双方の協議により決定。(従前の授乳期間休暇給与規定は本人標準給与の75%以上。)(第16条)
・授乳期間で1歳未満において夜勤・残業は不可。また、産休から復帰した後1-2週間の適応期間を与える。(第17条)

(3)生育費用、その他の費用

➀生育保険
・規定に基づく産休及び計画生育手術休暇に対し、国と省が定める生育保険を享受。企業が生育保険に加入していない場合、企業は本省及び所在地の生育待遇基準に基づき当該期間の給与を支払う。
・生育手当が女性従業員の従来の賃金基準を下回る場合、差額は企業より補填。
・従来の賃金基準とは、産休・生育休暇前の12か月の平均月給で、賞与、手当等の全ての貨幣性収入を含む。
・前12か月の平均月給がその正常勤務時間給与を下回る場合、正常勤務時間給与基準に基づき計算。当企業での勤務が12か月未満の場合、実際勤務時間の平均月給で計算。(以上、第13条)
・分娩誘発により流産する場合、企業は実情に応じて1回性の栄養補助を支給することができる。(第14条)

(4)罰則規定

➀関連法律・法規、仲裁
・県レベル以上の人民政府の人力資源社会保障行政部門、或は安全清算監督部門より、《労働法》、《女性従業員労働保護特別規定》などの法律法規に従い行政処罰を行う。(第22条)
・女性従業員は労働人事争議仲裁機構に申請、仲裁結果に不服の場合訴訟提起。(第23条)
・企業が本規定に違反し女性従業員の合法権益を侵害した場合、法に基づき賠償責任がある。(第24条)
・県レベル以上の人民政府人力資源社会保障行政部門、安全生産監督管理部門には監督責任があり(第3条)、労働組合、婦人組織は法に照らして企業の遵守状況に対し監督を行う。(第4条)