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[Q&A] 香港での「貸倒損失」を認識する際の基準について

Q. 香港における取引先が夜逃げしたため、当該取引先に対する売掛債権が回収できない場合の会計上並びに税務上の処理について教えてください。倒産や破産の場合には、それを証明する書類が出てくるので、そのような書類で対応すると思われますが、突然連絡が取れなくなり回収できない場合の処理方法を確認できればと存じます。

A. まず、会計上は契約上の支払いサイトを勘案し貸倒を引当てる手法があり、 一般的に商取引の支払サイトは30~90日の範疇であるため、目安としては当該支払サイト+90~120日程度で50%、対象売掛債権発生時から未収期間が1年超で全額引当てる手法(社内での明文規定化を推奨)が一般的と考えられるかと存じます。

 次に、毎年の御社の貸倒率を考慮し、売掛債権総額の1~2%引当てる方法も考えられますが、税務上はあくまで個別法で考える必要があります。ここで、個別に売掛債権を精査し、回収努力を多分に行ったが回収できず、かつ貸借対照表日時点でまず入金はないと考えられる場合、税務上も認められ得ることとなりますが、納税者としては、①対象債権の債務者のフルネーム、②現住所、③当該債権の詳細内容、④貸倒と判断する理由並びに⑤督促活動を証明できる詳細などを、 書面や記録として準備する必要があります。

 例えば該当する書面や記録としては、債務者のAnnual Return(周年報告書)とBusiness Registration(商業登記証)、督促メールと電話履歴及び督促通知書面とその発送記録などが挙げられます。香港で有効な方法としては、上述の書面や記録を揃えて裁判所を通じたSmall Claim(少額訴訟債権執行)を実施して頂き、それでも一定期間回収ができなければ、完全に回収不能と判断しやすく、会計上並びに税務上どちらの側面からも、まず問題なく貸倒損失として認識することが可能と考えられます。

 蛇足ですが、倒産や破産の場合には、有料ですが政府機関窓口もしくはウェブサイトにて検索サービスを提供していますので、必要に応じご活用頂ければと存じます。