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[中国会計] 中国の国家統一会計制度(52)

 主要な経済取引にかかる会計科目に関する記帳処理などを紹介しています。今回は、以前に棚卸資産や原価の項目で既に紹介した「生産成本」(製造原価)について改めて取り上げてみます。紹介する内容は、基本的には企業会計準則(新準則)に基づきます。

1.製造原価の財務諸表上の表示


 中国では毎月決算が行われ、損益計算書及び貸借対照表が作成されます。しかし、損益計算書上では営業成本(営業原価)、すなわち売上原価が表示されるのみですので、その月の製品の製造原価を財務諸表上直接把握することができません。
 2013年に『企業産品(注)原価計算制度(試行)』(財会[2013]17号)が公布され、2014年から金融保険業以外の大中規模の企業においては「月別に産品原価報告書を編成し、企業の製造原価、原価計画執行状況、産品原価及びその変動状況等を全面的に反映しなければならない」とされています。しかし、現時点では既定の報告書のフォームはなく、製造業でもいわゆる「製造原価報告書」は作成されていないのが通常です。

(注)「産品」とは、企業が日常生産経営活動において販売のために準備保有する生産品、商品及び提供した労務又はサービスのことを指すとされており、製造業に限られず、卸売小売業、不動産業、交通運輸業、情報通信業、ソフトウェア及び通信技術サービス業、教育文化業など、金融業を除くモノを製造しない全ての産業も産品原価の算定の対象となっています。

2. 製造原価の会計処理

 製造の過程では、「生産成本(製造原価)」という科目が使用され、期末には、この「生産成本(製造原価)」は完成品と仕掛品に配分され、「庫存商品(在庫商品)」と「在産品(仕掛品)」科目に計上されます。
 なお、月末に「在産品(仕掛品)」勘定への振替を行わず、損益計算科目である「生産成本(製造原価)」の残高として翌月に繰越す処理も実務では行われており、この場合、科目余額表(合計残高試算表)上では「生産成本(製造原価)」の残高が仕掛品の残高を示すことになります。

<例47> 当月の甲製品製造に関する資料は以下の通りである。
材料費:直接材料A100万元、直接人件費:80万元、製造費用:120万元(消耗品費30万元、水道光熱費40万元、減価償却費:50万元)のうち、甲製品への配賦は50%。
①材料使用時
借:生産成本(製造原価)-原材料・甲製品 1,000,000
 貸:原材料―A                   1,000,000
②直接人件費の計上
借:生産成本(製造原価)-人件費・甲製品 800,000
 貸:応付職工薪酬(未払給与)         800,000
③消耗品及び水道光熱費支払い時
借:製造費用-消耗品費             300,000
  製造費用-水道光熱費            400,000
 貸:銀行存款(銀行預金)               700,000
④減価償却費の計上
借:製造費用-折旧費(減価償却費)     500,000
 貸:累計折費(減価償却累計額)         500,000
⑤製造費用を製造原価に振り替える。
借:生産成本(製造原価)-製造費用・甲製品 600,000
 貸:製造費用-消耗品費              150.000
   製造費用-水道光熱費             200,000
   製造費用-折旧費(減価償却費)       250,000
⑥月末の完成品と仕掛品の比率は8:2である。
借:庫存商品(在庫商品)-甲製品          1,920,000
  在産品(仕掛品)-甲製品             480,000
 貸:生産成本(製造原価)-原材料・甲製品      1,000,000
   生産成本(製造原価)-人件費・甲製品      800,000
   生産成本(製造原価)-製造費用・甲製品    600,000

当月甲製品製造原価240万元=直接材料費100万+直接人件費80万元+製造費用60万元