中国 中国会計税務

[中国会計] 中国の国家統一会計制度(49)

 主要な経済取引にかかる会計科目に関する記帳処理などを紹介していきます。今回も増値税に関する科目について取り上げ、紹介する内容は、基本的には企業会計準則(新準則)に基づきます。

1.輸入取引の増値税

 中国国内での物品販売や課税サービスの提供の他、物品の輸入も増値税の課税の対象であり、すなわち、中国国外から物品を購入した場合にも増値税が課税されます。
 しかし、輸入の場合には、その物品の販売元は中国国外の事業者であるため、販売元が販売先から増値税を預かって中国の税務機関に納税するという徴収方法をとることができません。このため、輸入物品については、輸入通関を行う者が、輸入物品に対する関税とともに税関で増値税を納付することになります。この場合、前回紹介した国家税務総局の増値税の「金税システム」による増値税専用発票ではなく、税関の「口岸システム」による「税関輸入増値税専用納付書」が発行されます。この「税関輸入増値税専用納付書」に記載された増値税額も、仕入増値税額として売上増値税額から控除できるものとなります。なお、輸入増値税の課税価格は実際の取引額ではなく、関税価格+関税+消費税(課税される場合)の合計額です。

<例43> A社は増値税の一般納税人である。
① 商品95万元(関税価格92万元)を輸入した。関税8万元、輸入増値税17万元であった。輸入に係るその他の費用は考慮しない。
借: 庫存商品(商品)                      1,030,000
   応交税費―応交増値税・進項税額
  (未払税金―未払増値税・仕入税額)          170,000
  貸: 応付チョウ款(買掛金)                   1,200,000

(注)「応付チョウ款」のチョウは貝ヘンに長

2.輸出取引の増値税.

 一方、物品の輸出に対しては、消費者が最終負担者となるという付加価値税の性格上、中国国外の消費者に課税することができないため、増値税は原則としてゼロ税率を適用するものとされており、実質的に輸出販売には増値税は課税されません。
 ゼロ税率の意味するところは、免税売上に対する仕入増値税額は控除できないが、ゼロ税率の売上に対してはこれに関連する仕入増値税額の還付が受けられるということです。この輸出売上に関連する仕入増値税を控除する制度は「輸出貨物の税還付(免除)制度」と呼ばれる中国独特の制度です。その還付方法は生産企業(製造業)と非生産企業では異なり、かつ、実際に還付を受けることができる仕入増値税額の計算は非常に複雑です。詳細は割愛しますが、輸出する物品のHSコード(輸出入上の商品コード)の別により、増値税の「還付率」が決まっており、逆にいうと、輸出売上に関連する仕入増値税額の一部は還付されず、原価や費用として処理されるため、企業の利益を圧迫することになります。
 今回は、ごく簡単な例を用いて輸出取引に関する増値税の会計処理を確認します。

<例44>増値税の一般納税人であるB社は商品を中国国内で仕入れ、日本に販売(輸出)する業務のみを行っており、中国国内での販売は行っていない。
① 商品を1000万元(増値税率17%)で仕入れ代金を支払った。
借: 庫存商品(商品)                       10,000,000
    応交税費―応交増値税・進項税額
    (未払税金―未払増値税・仕入税額)         1,700,000
 貸: 銀行存款(銀行預金)                     11,700,000   
② ①の商品全部を2000万元で輸出した。
借: 応収チョウ款(売掛金)                   20,000,000
 貸: 主営業務収入                         20,000,000
③ 当月の取引は上記のみであり、還付税額は130万元と計算された。
借:其他応収款―応収出口退税
(その他未収金―未収輸出還付税金)             1,300,000
 貸: 応交税費―未交増値税・出口退税
    (未払税金―未払増値税・輸出税金還付)          1,300,000
借:主営業原価                            400,000
貸: 応交税費―応交増値税・進項税額転出
(未払税金―未払増値税・仕入税額振替)              400,000