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[中国税務] 税金以外に徴収される諸費用(2)

前回は労働組合経費についてご紹介しましたが、今回は江蘇省の企業が負担する種々の社会保障費用を説明致します。

(二)障害者保障

日本の障害者雇用制度と同様の施策が中国にも存在しており、現地法人は、全従業員比で1.5%以上に相当する障害者を雇用することが義務付けられています。なお、定められた比率の障害者を採用しない企業は、障害者就業保障金として以下の公式に従った金額を支払いますが、当該徴収活動は管轄の地方税務局が代行しています。

保障金納付額=(従業員総数×1.5%-雇用障害者数)×企業所在地域平均給与

従業員が千人の会社であれば15人の障害者を雇用する義務があります。障害者が15人以上雇用されていれば保証金を負担する必要はありませんが、例えば、10人しか障害者の雇用がない場合には、不足する5人に企業所在地平均給与を乗じた金額を負担する必要があります。従業員や障害者の雇用者数算出は年末の状況を以って計算され、申告や納付の時期は、地域により異なりますが翌年の5月~7月に地方税務局を通じて行われることが一般的です。
なお、日本の障害者雇用制度では、一定の障害者を雇用する企業に対して報奨金が支給される制度がありますが、中国には同様の措置は存在しません。

(三)教育費附加費用

本費用は義務教育機能の維持や改善に利用される目的税費用となります。外資企業にとっては2010年12月より徴収が開始(再開)されたため、新たに増加した費用と考えられていますが、実際には1986年より存在する費用項目となります。1994年から2010年の間は、外資企業に対して徴収免除の措置が採られていたため、知られる存在ではありませんでしたが、当時も一般の中国企業には教育費附加費用が課されていました。教育費附加費用の徴収が再開された頃は、2008年の企業所得税「二免三減制度廃止」、2009年の増値税法改定に伴う「輸入設備増値税の免税制度撤廃」等の外資企業優遇政策が続けて終了していた時期でもありました。
納付基数は、企業の増値税と営業税、及び消費税負担額であり、当該税金負担の合計額に費用率(国家と地方納付分を合わせて)5%を乗じた金額を教育費として地方税務局へ支払います。

(四)その他費用

会社の登記地や業種により、清掃処理費や文化事業建設費、水害保安基金といった用途を限定された費用が課される状況がありますが、当該諸費用も管轄の行政機関ではなく、地方税務機関が代行して企業からの費用徴収を行っています。

■ 中小企業に対する優遇措置
中小企業の運営を支援する施策の一環として、上記「障害者就業保証金」と「教育費附加費用」の負担を軽減する政策が、本年度より時限的に施行されています。教育費附加費用は、条件として設定される条件が比較的厳しいため優遇を享受する状況は限られますが、障害者就業保障金においては、少なくない現地法人が条件に該当すると思います。優遇措置の条件と内容は以下のようです。

① 障害者就業保障金
従業員数が20人以下の企業に対しては、2017年度まで負担が免除されます。当該従業員数に関して、どの段階を基準にするかは明確にされていませんが、恐らく、負担額を計算する年末の従業員数が基準になるかと思われます。また、2015年以降に設立される企業に対しては、従業員が20人以上の状況が継続する場合、設立から3年間は本保障金を納付する義務が免除されます。

② 教育費附加費用
毎月の課税売上高が3万元以下(或いは、四半期課税売上高が9万元以下)である場合、2015年から2017年の3年間、教育費附加費用の支払が免除されます。なお、条件の設定時期に関して、蘇州市地方税務局からは、毎月の売上高変動状況に応じて各企業で免税か否かを判断して申告する旨を口頭で聞いておりますが、各地域で条件の設定(前年度平均額等)が異なる状況も見受けられますので、現地法人での確認が必要になります。