中国 中国会計税務

[中国会計税務] 実務基礎知識1(発票の基礎知識3)

■ 発票の保管

費用精算に利用された発票、及び自社が発行した発票の控えは、会社の会計部門により出金伝票や振替伝票に添付され、会計帳簿等の会計資料と共に保管されます。現地法人の開業当初は、会計部門の本棚等に保管した発票等の伝票も、現地法人設立から数年を経た頃には数十や数百の冊数に及び保管場所に頭を悩ませることもあるかと思われます。発票の保管期間に関しては、自社が発行した発票であるか否かを問わず、15年と法律規定で定められています。また、発票以外の会計資料最低保管期間は以下のようになります。

  • 総勘定元帳等の会計帳簿 15年
  • 現金や銀行出納帳 25年
  • 年度決算報告書 永久保管

日本の会社法や法人税法では、会計帳簿の保管期間について7年や10年と定めていますので、日本と比べても長期間の保管義務が存在します。なお、機械設備や建築物は発票保管期間の15年と比べて長期間利用されることがあるかと思いますが、資産売却や廃棄の際には、資産購入や取得の取引証明として発票が必要になる場合もあるため、将来に発票を処分される場合には、当該時点での利用資産や負債に関連する発票は捨てず個別に保管されますよう注意して下さい。

■ 発票の購入

 日本では、領収書を文房具屋で購入して利用することが出来ますが、中国の発票は税務局で受領します。税務局での発票受領時には会社の証明書が必要になり、取得する発票には全てに固有の番号が振られているため、税務局は流通している発票を誰が発行したか認識することが可能です。また、発行先や金額が印字される発票の場合、税務局のシステムを通じて発行を行うため、税務局は発行金額等の内容を全て把握することが可能であり、発票は発行したけれど、当該売上の税金申告を繰り延べるといった行為は技術的にも難しい状態になっています。
 このように、発行情報が厳格に管理されている発票ですが、毎月の購入枚数や発票一枚の発行限度額も各企業に制限が加えられています。単一の商品購入等で発票が数枚に分かれて発行される場合が稀にありますが、これは恐らく、当該企業の発票に対する発票限度額を超えた取引であったことが想定されます。
 現地法人においては、発票の不足による会計期間内の売上発票発行が滞る等の発生を防ぐためにも、購入枚数や限度額を確認頂くことをお勧め致します。なお、発票自体の保管は15年ですが、税務局での発票取得時に利用する発票登録台帳も5年の保管義務があります。

■ 発票の紛失

 上述のように、購入から発行まで厳格に管理されている発票ですが、発票を紛失した場合はどのような対応を採る必要があるでしょうか。
(1)自社で発行する発票
 税務局より取得した未発行の発票を紛失した場合、発票紛失の事実と該当発票の取消について新聞公告を以って通知した上で、税務局への報告を行います。
(2)物品購入等で受領した発票
 相手方に再発行を依頼しても、税務局により管理されているシステムで発行するため、二重に課税されることになり、同意頂くことは難しいです。増値税の仕入控除を行う増値税専用発票を紛失した場合の対応は以下のように行います。
① 複数発票の相互利用
 物品購入やサービスを受けた際に取得する増値税専用発票は、同一取引に対して「発票用」と「控除用」の二枚が発行されます。各発票は、会計記帳と増値税仕入控除申告に各々利用しますが、どちらか一方を紛失した場合には、残っている発票の写し資料を以って書く用途に利用することが認められています。
② 二種類の発票紛失
 取得した二枚の発票を共に紛失した場合、発票発行者側に保管されている「記帳用」発票と合わせて、発票発行者の主管税務局が発行する、紛失発票に関する売上申告が実施されていることを証明する書類を取得する必要があります。

発票の紛失に際しては、上述のような新聞を通じた公告や発行者への依頼だけでなく、不適当な発票保管として1万元以下の罰金といった行政処分が課されることがありますので、現地法人管理の一環として発票管理体制を確認されても宜しいかと考えます。