中国 中国事業再構築入門

中国における事業再構築入門第1回(総論編)

中国における事業再構築入門第1回(総論編)

昨今の日中関係の変化により、中国に進出している日系企業は、中国ビジネスに関して新たな岐路に立たされていると言えるでしょう。それに加えて、人件費の高騰や外資優遇税制の撤廃等の環境の変化もあり、撤退を視野に入れたご相談をいただくことや組織再編を検討している日系企業が増加してきています。また、収益性の低下に伴う資金繰りの悪化により、急な資金調達を強いられたケースもございます。

そこで、昨今ニーズが高まっている中国を中心とした事業再構築について解説していきます。事業再構築としては、中国の制度上多様な方法が認められており、目的にあった方法を選択していく必要があります。今回は総論として、撤退および事業の縮小方法、組織再編、資金調達方法に分けて、概要を解説していきます。(次回より、それぞれの項目について詳細に説明していきます)

(1) 撤退および事業の縮小方法

① 撤退
撤退方法として中国における日系企業が取りうる主な手段としては、清算、破産、持分譲渡の3つが挙げられます。上記のいずれの方法も、審査認可期間の許可だけでなく、出資者全員の合意および董事会において董事全員の承認が必要となります。
(ア) 清算
清算は一般的に設立より難しいと言われており、所管機関の検査を受けたうえでの抹消となるため、通常設立よりも一定期間を要し、手続が1年以上となるケースもざらにあります。特に、税務登記抹消に伴い税務監査を受ける必要があり、過去の申告状況に関して問題が発見された場合は、長期化する傾向にあり、かつ、追加納税、滞納金、罰金などが課されます。
(イ) 破産
中国における外資企業にも破産手続に関して制度上は設けられていますが、破産が認められるケースは非常に稀です。
(ウ) 持分譲渡
他の出資者または第三者に出資持分を譲渡する方法で、具体的には、他の日系企業や外資企業もしくは中国系企業に持分を譲渡することになります。当該方法は会社自体は存続するので、清算時のように税務監査は必要なく、手続に要する期間も清算より短縮できるというメリットがあります。

② 事業の縮小
制度上、資産譲渡や減資等の方法が設けられています。減資については、審査認可期間の承認を受ければ可能と規定されていますが、実務上認められるケースは稀です。

(2) 組織再編

① 合併・分割
中国においても日本同様、合併・分割の制度が設けられています。ただし、実務的には浸透していない地域もあり、手続きには一定期間を要します。

② 統括会社を用いた組織再編
シンガポール・香港法人を活用した組織再編は非常に多く行われています。具体的には、日本親会社からシンガポール・香港法人に出資し、当該法人を統括会社として中国子会社に出資すれば、配当金にかかる源泉税軽減等のタックスメリットを享受することができます。
また、上海法人等を中国業務の統括会社として当該統括会社から中国子会社に出資する形態をとり、当局に地域性本部と認められれば、タックスメリットの他、補助金等の優遇を享受することができます。

(3) 資金調達方法

中国における日系企業の主な資金調達方法としては、親子ローン、増資、銀行借入等が挙げられます。いずれの方法も手続きには一定の期間を要するため、資金繰りには十分に留意しておく必要があります。
① 親子ローン
中国における子会社は日本親会社から借入を行うことができます。この場合、対外債務として外貨管理局への外貨登記が必要となり、借入には限度額があるため留意しなければなりません。限度額は「総投資額-登録資本金額」(投注差)であり、借入は当該金額の範囲内で行う必要があります。
② 増資
資金調達の方法として、増資も一つの方法となります。増資金額はあくまで負債ではなく会社の自己資本の一部となりますので、借入と異なり返済義務はありません。また、利息を支払必要も当然なく、長期的な資金調達方法として優れているといえます。ただし、親子ローンと比較すると、手続きが若干煩雑であり、一定の期間を要するため、借入と比較すると機動的に資金調達をできないといったデメリットがあります。