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[華南ビジネス] 広東省の会社登記制度、登録資本制度

10月25日の中国の国務院常務会議で、登録資本制度の改革を推進することが発表されました。会社設立時の資本金に関する要を緩和すると同時に、会社登記時の非効率な政府認可手続を簡素化、情報を透明化して政府の管理から市場の信用に委ね、民間投資を活発化させるという目的があります。登録資本制度改革では、最低資本金要求や払込期限の撤廃、払込資本を登記不要とするといった内容が盛り込まれており、一方会社登記では年度検査手続を年度報告手続へ変更、また登記住所の要件緩和等を目指しています。

従来の有限公司や株式会社の登記手続においては会社法、会社登記条例、外資関連法等の規定に基づき、名称、住所、経営範囲、登録資本金及び払込資本金、投資者名称等が所管の工商部門で証明資料を審査の上、登記され、営業許可証にこれらの情報が掲載されます。資本金はその最低額が有限公司3万元、1人有限公司10万元、株式会社500万元とされ、会社設立(営業許可証発行)日から90日以内に20%、2年以内(株式会社の内、投資会社は5年以内)に全額を払い込むことが規定されています。

これらの手続簡素化・要件緩和は「商事登記」制度改革として各市の工商部門で規定実行されていきますが、現時点での深圳、広州、東莞各市の状況を以下に紹介します。

[深圳市]
《深圳経済特区商事登記若干規定》は既に2013年3月1日より実施開始された。
外国企業常駐代表処を除き、外商投資企業を含む法人及び非法人と分枝機構、個人事業登記が対象。

  1. 資本金
  2. 払込登記制度から登録資本履行登記制度(原文「注册资本认缴登记」)へ変更した。即ち、払込資本金は電子情報をアップロードする報告手続のみとなる。但し現時点では資本金払込期限や、資本験証報告(験資報告)提出の実務に変更はない。

  3. 経営範囲
  4. 工商部門による経営範囲の審査は不要となり、営業許可証にも記載されない。業種ライセンスは、銀行、証券、保険、会計師事務所等及び外商投資企業の設立が事前許可を必要とするのを除き、営業許可証取得後に申請取得することが可能。

  5. 登記住所
  6. 規定上、一つの住所に複数登記を認め、登録住所は単に行政連絡住所とされるとしたが、現時点では実務上税務・税関等制度の観点からは実現可能性が低い。同一区内の分公司は、分公司として登記するのではなく本社の営業許可証に住所を加えて登記する。

  7. 年度検査
  8. 2013年度から年度報告手続となり、必要資料や手続が簡素化される見込となっている。

[広州市]
《広州市商事登記制度改革実施弁法(試行)》と《広州市商事主体情報運行管理規則(試行)》
が2013年9月30日公布され、広州市経済技術開発区、南沙新区、増城経済技術開発区、中新広州知識城、広州国際生物島、そして天河中央商務区(珠江新城区域)を試験区域として実施開始した。企業法人、非法人企業、企業分枝機構と個人事業(個体工商戸)が対象。登記日数は3日と従来日数より短縮された。

  1. 資本金
  2. 登録資本履行登記制度(同上)を実行する。払込資本金は登録不要だが、験資報告の提出は必要。出資額、出資方式、出資期限は会社定款に記載する。

  3. 経営範囲
  4. 金融、通信等は事前認可を必要とする他は、会社登記後に必要認可を取得する。外商投資企業は従来通り設立認可取得後、会社登記する。

  5. 登記住所
  6. 資本関係のある関連企業か、区レベル以上の人民政府が認可して設立した工業園、科技園等専門園区内の企業は、同一住所に複数登記が可能。所在地区外の経営場所は分枝機構登記が必要。

  7. 年度検査
  8. 年度報告制度を実施。

[東莞]
《東莞市商事登記制度改革実施方案》が2012年10月23日に公布、施行。三来一補企業、外国企業常駐代表処を含まない。

  1. 資本金
  2. 登録資本金50万元以下の会社の初回資本金払込を0としても好い。但し、外商投資企業の投資総額下限規定の運用と営業許可証への払込資本金記載に変更は無い。

  3. 経営範囲
  4. 経営資格認可を登記の要件としない。外商投資企業等28項目に対し登記前認可が必要

  5. 登記住所
  6. 不動産登記未了の経営場所に対する不動産証明書提出要求を緩和し、鎮や村による使用許可等により登記可能とする。

  7. 年度検査
  8. 年度報告制度を実施。

広東省では仏山市順徳区の実施が最も早く2012年10月、珠海では《珠海経済特区商事登記条例実施弁法》が2013年3月1日より施行されています。また中山では《中山市商事登記改革業務方案》制定中で2013年11月試験的に実施開始予定としています。