M&A

[M&A] IPO調達額1千億ドルに、アリババ消滅も2位か

有力国際会計事務所の英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は今年の香港の新規株式公開(IPO)による調達額が1,000億HKドル(約1兆2,700億円)を超えるとの見通しを明らかにした。目玉とされた中国本土の電子商取引(EC)大手、アリババ・グループの年内上場の可能性は消失したが、今年の香港のIPO市場規模は世界2位または3位をにらむ位置にあるという。

香港取引所(HKEX)によると、2012年のIPO調達額は前年比65%減の898億1,800万HKドルで、09年から3年間維持してきた世界首位の座から転落した。今年上半期(1~6月)では前年同期比28%増の395億HKドルで、世界4位になっている。

PwCは今年7月、香港の通年のIPO調達額が1,200億~1,500億HKドルとなり、さらに本土のEC企業、アリババのIPOが実現すれば、再び世界首位に返り咲く可能性もあるとの予測を明らかにしていた。しかしアリババは株主構成の問題で香港の証券当局と折り合いがつかなかった。このため香港がIPO市場で世界首位を奪い返すのは難しい情勢だ。アリババの上場規模は700億米ドル(約6兆9,000億円)以上ともされていたが、同社は香港上場を断念して米ニューヨーク上場に向けて動いているという。

一方で、上場申請の2カ月前までに上場スポンサー(幹事証券)と契約するよう求める新規制が10月1日に導入されたため、年内の香港上場の道は断たれたが、アリババが香港上場を完全に断念したわけではないとの報道もある。

3日付信報は、アリババの創設者でもある馬雲(ジャック・マー)会長が同日香港入りし、来年以降の香港上場の可能性を探っていると伝えた。中国EC大手のアリババは本土のネットワーク関連の重要な情報を掌握している。このため本土当局やアリババは、ニューヨーク上場のためにこれらの情報を米国の証券管理当局に提出するのは本意でないともされる。

■Q4にIPO加速

2日付香港経済日報によると、今年1~9月の香港のIPO調達額は約570億HKドルだった。

第4四半期(10~12月)は安徽省の都市商業銀行、徽商銀行が117億HKドルを、不動産開発大手の新世界発展(ニューワールド・デベロップメント)系でホテル運営事業を手掛ける新世界酒店が62億4,000万~78億HKドルをそれぞれ調達するためにIPOを実施する予定。そのほかにも◆ケリー・プロパティーズ(嘉里建設)の物流部門、ケリー・ロジスティクス・ネットワーク(39億HKドル)◆ホープウェル・ホールディングス(合和実業)の不動産子会社のホープウェル・ホンコン・プロパティーズ(60億5,000万HKドル)◆電能実業(パワーアセッツ・ホールディングス)傘下の香港電灯(ホンコン・エレクトリック、312億~390億HKドル)◆本土の金融資産管理会社、中国信達資産管理(156億HKドル)――などもIPOを計画しており、PwCは通年での調達額が1,000億HKドルを超えると予測している。

PwCの陳朝光(エドモンド・チャン)資本市場サービスポートフォリオパートナーは、米国の量的緩和縮小の先送りが市場の安心材料となっているほか、減速の懸念があった本土の経済指標が市場の予測を上回る好調ぶりであることから、多くの資金が香港に流れ込む可能性があると分析。投資家は上半期には慎重な姿勢を保っていたが、新株市場は9月に回復傾向がみられ、価格が合理的な新株に対しては第4四半期も継続して「買い」とみているとした。

今年の香港のIPO調達額については、米大手会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツも第4四半期のIPO調達額が400億HKドルを超え、通年で1,000億~1,300億HKドルに到達すると予測した。

■規則改定の影響は来年から

陳パートナーによると、HKEXが10月1日から上場スポンサーに対する新たな規制を導入したことに関して、現在のところ目立った影響は出ていないという。新規制は来年3月までを移行期間としており、影響が出始めるのは同年4月以降になるだろうと予測した。(NNA.ASIA