香港 香港会計税務

[香港会計税務] 2013/2014年度香港予算案税金措置

香港財政司司長の曾俊華(John Tsang Chun-wah)は、2013年2月27日(水)に発表した2013/2014年度予算案の中で、税金措置を提案しています。当該税金措置の個々の項目について下記の通り解説します。

1. 2012/2013年度の利得税(法人及び個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントでの所得税額の軽減措置

2012年4月から2013年3月の税年度期間に課される利得税(法人及び個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントでの所得税額の確定額に対し、10,000香港ドルを上限とする75%の減税措置を提案しています。当該減税措置は資産所得税そのものには適用されず、別に賃貸所得がある個人は、パーソナル・アセスメント適用資格を満たしていれば、当該減税を享受できます。事業所得がある納税者は、パーソナル・アセスメントを選択するか否かにかかわらず、当該減税を享受できますが、通常の利得税申告とパーソナル・アセスメント申告との間で、減税額が異なる可能性があるため、案件毎に査定される必要があります。事業所得や賃貸所得がある個人は、各々の個人所得税申告書でパーソナル・アセスメントを適用するか否かを選択でき、税務局は、当該選択が納税額の負担を減らすことができるかどうか案件毎に個別に確認し、最も有利な方法で査定します。

ここで、パーソナル・アセスメントとは、個人で給与所得以外に事業所得や賃貸所得がある場合に、それらの所得、関連する経費及び控除額を合算で勘案し、個々に税額を計算した場合と比較することで、最終税額に差が発生する場合は、どちらか有利な税額が適用されるという総合課税制度です。例えば、ある個人のケースで給与所得があるものの、税務上の事業所得はマイナスである場合、当該給与所得から当該事象所得のマイナス分を差引くことができ、さらに給与所得税計算に適用される各種控除項目も差引くことができるため、当該給与所得満額に対し給与所得税を課され、単に事業上の利得税が発生しないケースよりも最終納税額が減少することになります。また、その適用資格は、18歳以上(例外として、両親が既に亡くなっている場合は18歳未満でも可)で、かつ香港居住者(1税年度期間中に180日を超えて香港に居住、もしくは2税年度期間中に300日を超えて居住、ただし、後者の場合は当該2税年度期間中の1税年度期間だけ適用可)であることとされていますので、日本やその他の外国居住者とみなされる個人は、香港源泉の給与所得と事業所得や賃貸所得があるとしても適用できません。

なお、当該措置は香港税務条例の改正により有効となり、立法会による承認をもって、税務局は税額査定時に税額控除を適用します。利得税については、当該上限額は事業毎に適用され、給与所得税については、当該上限額は個々の納税者に適用されますが、夫婦共同で税額査定の場合、当該上限額は夫婦毎に適用されます。パーソナル・アセスメントの場合、独身の納税者は個々に当該上限額を享受できますが、夫婦の場合は、パーソナル・アセスメントを一緒に選択する必要があり、当該上限額は夫婦毎に適用されます。

給与所得税と利得税が別々に課税される納税者は、各税金に対し税額控除を享受することができます。パーソナル・アセスメントを選択する場合、給与所得税、利得税および資産所得税の課税対象額は集計され、納税額が計算されますので、この納税額に基づき、税額控除が適用されます。パーソナル・アセスメントの適用が可能である場合、納税者は個人所得税申告書(Form BIR60: Individual Tax Return)の項目6に記入する必要があります。

給与所得のみで、事業収益や賃貸収入のない個人が、パーソナル・アセスメントを選択することは不要です。

当該減税措置は、2012/2013年度の納税額を減額することになります。納税者は、来る4月と5月にそれぞれ発行される利得税申告書と個人所得税申告書を、通常通り申告する必要があります。税務局は、関連法規の改正時に最終査定税額に対し、税額控除の適用査定を実施します。既に納付されている過払税金は、2013年7月下旬以降から払戻しが開始される見込みです。これに対し、納税者は税務局に別の申請や照会をする必要はありません。

当該減税措置は、2012/2013年度の最終査定税額にのみ適用され、同年度の予定税額には適用されませんので、納税者は、提案された控除の有無にかかわらず、2012/2013年度の予定税額を期限通りに納付する必要があります。納付済みの予定税額は、2012/2013年度の確定税額と2013/2014年度の予定税額納付時に適用され、万が一過払税金がある場合は、返金されます。

2. 子供扶養控除額及び自己学習費用控除額の上限増額措置

香港市民の子供養育費の負担軽減と生涯教育の奨励のため、2013年4月から2014年3月の税年度期間に課される給与所得税計算時に、①子供一人当たりの子供扶養控除額及び子供誕生控除額を、現行の63,000香港ドルから70,000香港ドルに増額する減税措置を提案しています。この結果、当該税年度期間に子供を儲けた場合、課税所得から140,000香港ドルを控除することが可能となります。また、②自己学習費用控除額を現行の60,000香港ドルから80,000香港ドルへの増額も提案しています。

関連法規の改正後、税務局は自動的に、新しい子供扶養控除額を2013/2014年度の給与所得税予定税額の計算時に適用するとしています。子供扶養控除の適用資格を持つ納税者は、2012/2013年度の個人所得税申告書を申告することのみが必要となり、増額後の子供扶養控除に対して別途申請する必要はありません。申告後に誕生した子供については、納税者は税額査定通知書の受領後に、予定税額納付の延期を申請することが可能です。

3. キャプティブ保険会社への優遇税制措置の提供

現在再保険会社に適用されている優遇税制措置(オフショア保険業から発生する課税所得の50%のみを課税対象)と同様、キャプティブ保険会社のオフショア保険業に対する利得税額の減額を提案しています。当該措置は、香港税務条例の改正をもって有効となります。

香港ではキャプティブ保険会社の設立が可能ですが、キャプティブ保険会社とは、自社グループのリスクを専門的に引受ける再保険子会社で、日本国の場合、外国に所在する保険会社が、日本国内のリスクを直接引受けることは認められていませんので、キャプティブ保険会社の関連法規が整備された国・地域に設立されます。

4. プライベート・エクイティ・ファンドに対する利得税額免除

従来のオフショア・ファンドに対する利得税免除範囲を拡大し、香港外で設立もしくは登記され、香港内の資産を所有しておらず、かつ、香港内で事業を行っていない私的会社の取引も含めることを提案しています。これにより、プライベート・エクイティ・ファンドがオフショア・ファンドと同様の課税免除を享受することが許容されます。当該措置については、行政機関が関連法規の改正や提案詳細に係る諮問を実施するとしています。

オフショア・ファンドに対する税務は非常に複雑で、未だ判例を基に徐々に発展している状況です。2010年4月にオフショア・ファンドに対する税務条例実務指針(DIPN: Departmental Interpretation and Practice Notes)が発行されていますが、それでも未だ課税免税の解釈が不明瞭な点があるため、税務局としては、多岐にわたるオフショア・ファンドのスキームを精査し、現行の関連法規ではカバーできていない不明瞭な事象をカバーすべく、法改正や実務指針の作成発行を急いでいます。

5. 2013/2014年度の商業登記料の免除措置

2012/2013年度の免除措置同様、2013/2014年度の商業登記料(事業登記料)の免除を提案しています。

6. その他の免除措置

①不動産税の課税対象となる不動産毎に、2013/2014年度の不動産税額を四半期毎に最大1,500香港ドル(年間合計6,000香港ドル)を免除、②現在も継続されている各家庭の電力使用料への毎月の政府補助150香港ドル(年間合計1,800香港ドル)を2013年7月以降も継続、③公共団地の家賃2カ月分の免除、並びに、④総合社会保障援助手当、高齢者手当、高齢者生活手当及び障害者手当の1カ月分を追加支給、などを提案しています。

以上が提案された2013/2014年度香港予算案税金措置ですが、2012/2013年度のそれと比較して大きな変更点がなく、職能団体他からの圧力が大きい一方、財政司司長は、先進各国が福利主義を重視した結果、多大な負債を抱える結果となっている事実と、香港での貧富の差が拡大している中で、昨年度までの一過性の現金補助なども実施したものの、低所得者層の継続的な救済とはなっていない事実などを踏まえ、上記のような提案としています。しかしながら、香港予算案が立法会で最終可決される時期は3月~5月の間で毎年異なり、別の更なる追加項目が提案される可能性もあるため、今後の政府動向にも留意が必要です。