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中国では労働契約の解除時、会社側からの提起や会社都合による解除等一定の情況において、経済補償金の支払い義務が発生します。経済補償金とは、会社より従業員に提起する労働契約の解除時に一括で支払う経済上の補助と言われ、従業員の失職後の生活補償の意味合いの濃いものです。昨今特に事業再編のため拠点の縮小、移転・合併等も活発に行われる中、労働契約解除と経済補償金について留意点をまとめておきたいと思います。

従業員が会社を退職する場合、労働契約法では労働契約の「終了」「解除」という言葉が区別されています。「終了」には、労働契約に決める契約期間が満了した、従業員が定年で社会保険享受可能な年齢に達した、会社の破産、営業許可証取消、解散 等の情況が含まれています。
一方、「解除」では会社と、従業員のいずれかによっても提起する場合があります。
企業より提起して従業員を解雇する時、従業員と協議して同意に達するならば、労働契約を解除することができ、この場合は経済補償金を支払わなければなりません。
また契約期間満了で更新しない契約終了の場合でも経済補償金の支払い義務があります。

試用期間において会社は、採用条件に合わないことが証明された場合に労働契約を解除でき、経済補償金の支払いは不要です。
教育や職場調整を通じても従業員が職務遂行できない場合、契約を解除できることになっていますが、経済補償金の支払い義務が発生します。

組織再編時の解雇

現在、組織再編により拠点を縮小、移転、合併、分割等する場合で、解雇せざるを得ない場合、または事業悪化により解雇を行う場合、労働契約法第四十条(三)を適用し、労働契約の締結時に依拠した客観的な情況に重大な変化が生じたことにより労働契約を履行できなくなり、会社と従業員の協議を経ても労働契約内容の変更が同意に達しなかった場合の労働契約解除を行いますが、この手順をきちんと踏まなければ不当解雇とされるリスクがあることに注意が必要です。

なお、労働契約法第三十三条に、社名の変更、法定代表者、責任者或は投資者の変更は、労働契約の履行に影響しないという規定と、第三十四条には合併或は分割がある場合、元の労働契約は継続して有効であり、労働契約はその権利と義務の継承者である雇用者により継続して履行されるとあり、労働契約を継続するならば、雇用者名称が変わること等により直接経済補償金の支払い義務が発生する訳ではありません。

一定規模以上のリストラの場合

会社が事業の深刻な悪化や組織再編により20人以上の従業員或は従業員総数の10%以上を解雇する場合、以下のような手続を経て実行することができます。
(1)30日前までに工会或は全従業員に対し情況を説明する。
(2)リストラ名簿、解雇時期と実施手順、法律規定と集団契約に定める経済補償の内容を含む《人員削減案》を提出する。
(3)《人員削減案》に対する工会或は全従業員の意見を聴取し、内容の修正・改善を行う。
(4)所在地の労働行政部門へ報告する。
(5)《人員削減案》を正式に発行し、労働契約解除手続を行い、経済補償金を支払う。
※会社所在地の関連規定に沿って行います。

但し組織再編、リストラの際にも下記の場合には労働契約を解除してはならないとされています。
(1)職業病の危険に接する業務に従事する労働者が離職前に職業健康診断を受けていない
とき、または、職業病の疑いがあり診断中もしくは医学観察期間にある場合。
(2)当該会社で職業病に罹患しまたは業務上の負傷により、労働能力の喪失または一部喪失が確認された場合。
(3)疾病または業務外の負傷により所定の医療期間内にある場合。
(4)女性従業員が妊娠期間、出産期間または授乳期間にある場合。
(5)当該会社で満15年連続勤務し、かつ、法定の定年退職年齢まで5年に満たない場合。

また、(1)比較的長期で固定期限労働契約がある(2)無固定期限労働契約がある(3)家庭内で就業者が他に無く、高齢者や未成年を扶養する必要がある といった従業員に対しては優先的に留保すること、人員削減後6ヶ月以内に再雇用する場合には削減された従業員から優先的に採用することが規定されています。

派遣契約の解除、無固定契約の解除

労務派遣会社から派遣された従業員の労働契約は、従業員と労務派遣会社との間に存在するため、派遣先の会社は労務派遣会社へ不採用等の通告をしなければなりません。
また、無固定期限契約の社員の労働契約の解除の条件は、固定期限契約の社員と同様となります。

従業員側の原因による契約解除

従業員の過失による場合、或は従業員より提起して協議同意に至った場合は経済補償金の支払い義務はありません。

経済補償金の計算と支払い

労働契約終了、解除に当たっては、従業員に対する業務引継ぎの義務があり、業務引継ぎの上、経済補償金が一括で支払われ会社を離れることになります。
経済補償金の計算は下記の通りです。


※月額賃金とは、労働契約解除前12月の平均賃金で、基本給・諸手当を含み、個人所得税
込の金額です。
※施行前は月額賃金に関わらず支給の上限が12ヶ月であったため、施行前と施行後の期間
の計算方法を区分して計算します。

経済補償金の個人所得税

現行の個人所得税政策において、労働契約解除における経済補償金は、企業所在地の前年度従業員平均賃金の3倍までの部分は個人所得税が免除されます。

不当解雇

会社による解雇の理由が、労働契約法等に定める解除理由に該当しない場合や、規定される解除の手続をきちんと踏んでいない場合、不当解雇と認められ、経済補償金の支払いではなく、「賠償金」の支払い義務が発生し、この賠償金の金額は経済補償金の2倍の額とされています。例えば、就業規則違反を理由に解雇する場合は、就業規則の社員への周知が社員による署名等により確認されていなければ、不当解雇と見なされるケースがあります。

各種ケースに応じた経済補償金、賠償金の支払い要否の規定は下記の通りです。

*1:会社が提起した場合には経済補償金支払いが必要で、社員が提起した場合は自己都
合退職となる。
*2:既存契約条件を維持或は向上を会社が提示したにも関わらず、社員が同意しない場
合を除く。

*本文は2012年12月に作成されたものです。規定の変更、各地の運用については現地にて再度ご確認いただく必要がある点をご了承ください。

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