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[実務入門] (41) キャッシュフロー計算書 (2)

前回はキャッシュフロー計算書(現金流量表)の構成について簡単に説明し、直接法で作られているため比較的経営者にとっては有用な表であることを説明しました。今回は、キャッシュフロー計算書がどのような意義を持つかを説明した後、実際の活用の考え方について簡単にふれたいと思います。

旧企業会計準則(財会字[2001]7号)によれば、キャッシュフロー計算書は計算書使用者に対し、一定期間内の現金及び現金等価物の流入及び流出の情報を示し、これら現金及び現金等価物の獲得能力を理解することで、将来のキャッシュフロー状況についての予測に資するものとされています。また、あわせて企業の将来のキャッシュフロー獲得能力や、債務の償還や投資利潤の支払い能力、利益とキャッシュの動きに差がある場合に、その差の発生原因を明らかにすることが可能となるとしています。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

利益とキャッシュの動きに差があるとは、たとえば次のような状況を想定しています。
【例1】
貿易業のA社では12月末に1,000のキャッシュ、1,500の売掛金、1,000の買掛金がある。これら売掛金・買掛金の回収・支払期日は1月中に到来する。1月の売上が2,000、仕入が1,000であった。1月に売り上げた売掛金の回収は春節(1月末)の後であるが、1月に仕入れた買掛金の支払いは春節前である。このほか、給与の支払いが500ある。


この例ですと、1月は利益は出ているが、1月末の手許現金は12月比で1,000減少し、ちょうど0になるという状況になっています。一方、貸借対照表上は売掛金が2,000あり、買掛金は0になっています。
「運転資本」は通常、売上債権+棚卸資産―仕入債務として定義されることが多いです(実務上は販売費・管理費にかかる未払費用等も含めてよいと思います)。企業が運転資本が必要ということは、売上債権や仕入債務などは近い将来現金の流入や流出が生じる資産や負債などですが、現金そのものではないので、これら資産・負債の差額の分は流入してくるまで企業が“資本”として持っている必要があると考えられます。これを、「運転資本」と定義することが多いです。
上記の例ですと、月末ベースで考えると12月末では1,500-1,000=500の運転資本が必要ですが、1月末では2,000-0=2,000の運転資本が必要です。したがって、通常の状態で運転資本は2,000は用意しておいたほうがよいことがわかります。

次回もキャッシュフロー計算書(現金流量表)について説明をいたします。この表に載っている「現金」の内容についての補足説明をし、そもそもキャッシュフロー計算書がどのような意義を持つかを説明した後、実際の活用の考え方について簡単にふれたいと思います。