中国

[実務入門] (37) 費用と中国会計実務上の問題 (3)

前回2回にわたって損益計算書の費用項目とそれに関連する中国会計実務上の問題についてふれてきました。今回はそのもっとも特徴的な論点といえる、発票主義について考えたいと思います。

発票主義は収益及び費用の計上を発票の入手に基づいて行う処理ですが、これは筆者の知る限り正式な会計用語ではないと思います。中国会計上も日本の会計と同じく、発生主義・実現主義が規定されているのですが、現実的には発票が入手されていない収益・費用については計上が認められていないと経理担当者が考え、税務の現場上もこのような考えが横行しているため、発票主義が事実上のスタンダードになっている会社が相当多いと思います。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

当然問題となるのが、経営実績と発票の入手・未入手が乖離することがあることです。
【例1】 貿易企業であるS社では、製品を1月に100で輸入し、1月に発票を入手した。S社はこの製品を1月に120で売り上げ、1月に発票を発行した。S社の1月、2月の取引は上記のみである。税金等は無視する。

【例2】 貿易企業であるS社では、製品を1月に100で輸入し、2月に発票を入手した。S社はこの製品を1月に120で売り上げ、2月に発票を発行した。S社の1月、2月の取引は上記のみである。税金等は無視する。

上記の例の場合、仕入及び売上が1月中に行われているため、経営管理上は以下の修正を行って経営成績を把握することが望ましく、また日本の親会社の連結財務諸表上は以下の修正を行うことが必要になります。

実際の売上・仕入の実現・発生タイミング、発票の発行・受取のタイミング、決済のタイミングによっては増値税の計上も含め煩雑な修正が必要になることもあります。

上記のような修正についてすべていえることですが、中国の会計上も実現主義・発生主義で処理することは可能です。

しかし、会社の財務経理担当に聞いてみると「これはできない」「認められていない」という答えが返ってくると思います。基本的に、これらはすべて「これは税務上できない」「税務上認められていない」という答えであり、財務経理担当が会計=税務であるべきと絶対視しているからそう言うに過ぎません。したがって、先の【例2】でいえば以下のようになります。

このような形であれば、発生主義と発票主義の調整が図れるものと考えられます。

次回は営業外収入、営業外費用について簡単にふれます。