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[実務入門] (35) 費用と中国会計実務上の問題 (1)

前回までで最初に原価と費用の違いについて説明し、次に原価計算の概念を説明してきました。今回は損益計算書の費用項目について簡単に内容を説明し、あわせて中国会計の実務上の問題について少し考えたいと思います。

「旧」企業会計準則・企業会計制度上、営業費用は次の費用と定義されています。
「本科目は企業の商品の売上過程で発生した費用を対象とし、運輸費、荷卸費、包装費、保険費、展覧費、広告費、及び製品の販売のためにもっぱら設置した人員の給料、福利費、その他人件費、業務費などの経営費用を含む。」

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

また、管理費用は次の費用と定義されています。
「本科目は企業の組織管理のために生産経営で発生した管理費用を対象とし、会社が一括して負担すべき経費(管理部門人員給料、修理費、消耗品費、定額消耗品、オフィス品費用、出張費等)、労働組合経費、保険費、労働保険費、董事会費用、仲介機構費、コンサルティング費(顧問費)、訴訟費、業務招待費、不動産税、車船使用税、印紙税、技術譲渡費、鉱山資源補償費、無形資産償却費、従業員教育費、技術開発費、排汚損費、棚卸差損、貸倒引当金繰入額、棚卸資産評価引当金繰入額を含む。」

また、財務費用は次の費用と定義されています。
「資金調達のために必要な費用を対象とし、利息支出、為替損失、関連手続き費用を含む。」

以上が規定上の説明になりますが、ここからいくつか中国会計上で特徴となる点が出てまいりますので、ご説明します。
まず、営業費用や管理費用や財務費用に計上すべき項目が示されているため、特殊業種を除き経営実態にかかわらず、支出内容によって計上される費用項目が規定(固定)されてきます。特に本来実態からは売上原価勘定で計算したほうが良いと思われるものが、営業費として規定されているため原価計算項目から漏れているといった事態が出てきます。これに類するケースとして、貿易型企業は製造活動をしないことが前提となっているため、外部加工費用や運輸費用など実質的には原価計算すべき項目のマッピングがいくつか乖離してしまっていることがあげられます。

【例】貿易企業であるS社では、製品を1月に100で輸入し、代理通関手続費用を5支払った(発票も1月付けで入手した)。S社はこの製品を2月に120で売り上げた。S社の1月、2月の取引は上記のみである。税金等は無視する。

この例では中国会計においても代理費用は棚卸資産の取得費用に含まれると考えられなくもないですが、多くの会社で営業費用に計上しているのが一般的です。

これらが重要な問題である場合、中国財務制度会計から本来のあるべき会計の姿(たとえば親会社の会計基準ですが、それに限らない)に転換する必要があります。しかし、実務上会社の中国人経理担当者にこれを要請しても、そのような思考回路でものを考える訓練を受けていない方が多く、「そのような会計は中国では認められない」の一点張りとなって話しが進まないことになります(これについてはまた後述します)。
この手の話しに日本の本社管理部が絡むと余計に厄介になり、弊社でも本社管理部、現地法人経営陣、現地法人財務経理部のコミュニケーションの橋渡しを行う業務を行っております。

次回も費用と中国会計の実務上の問題を確認したいと思います。