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[実務入門] (19) 税効果会計(基礎編) (2)

前回は、税効果会計とはどういったものなのかを中心に説明しました。税効果会計とは、簡単に言うと、税務と会計のズレを調整するための会計上の修正のことです。今回はもう少し踏み込んだ解説をします。
中国において、税効果会計は旧会計基準(注)では任意適用になりますが、新会計基準(注)では強制適用となります。なお、税効果会計を適用しない場合は、当期に納付した企業所得税を当期の所得税費用としてそのまま計上することとなります。
まずは、税効果の認識方法からみていきましょう。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1) 繰延法と資産負債法

税効果を認識する方法には、繰延法と資産負債法の2種類があります。これらの考え方は日本も同様です。
繰延法とは、会計と税務の間での損益の期間帰属の差異について、当該差異に対する税額を当該差異が解消されるまで繰延所得税資産または繰延所得税負債として繰り延べる方法です。適用税率には期間差異が発生した年度の税率が用いられます。

また、資産負債法とは、会計上の資産・負債と税務上の資産・負債の金額に差異があり、当該差異の解消時に税金が軽減もしくは増額される場合に当該差異について繰延所得税資産もしくは繰延所得税負債を認識する方法です。適用税率には一時差異が解消される年度の税率が用いられます。よって、税制改正等を織り込む必要があります。

旧会計基準で税効果会計を任意適用する場合は、繰延法と資産負債法のいずれかを選択することができますが、新会計基準では資産負債法のみが認められています。

(2) 永久差異と一時差異

会計と税務の間の差異は永久差異と一時差異に分類されます。永久差異とは、会計上、費用・収益と計上されても、税務上、永久に損金・益金とならない項目であり、税効果の対象にはなりません。例えば、交際費や福利費の損金算入限度超過額等は、会計上は費用ですが、税務上は永久に損金になりませんので、永久差異となります。

また、一時差異とは、将来的に解消される差異であり、税効果の対象となります。一時差異には、将来減算一時差異(一時差異が解消するときにその期の課税所得を減少する効果を持つもの)と将来加算一時差異(一時差異が解消するときにその期の課税所得を増加する効果を持つもの)とがあります。基本的に、将来減算一時差異が発生した場合は、繰延所得税資産、将来加算一時差異が発生した場合は、繰延所得税負債を計上することとなります。

(注)現在、中国では2種類の会計制度が併存しています。2000年に制定された「企業会計制度」(旧会計基準)と2006年に制定された「企業会計準則」(新会計基準)です。新会計基準については、中国において上場している会社にとっては強制適用となっていますが、その他の会社は適用が推奨されるにとどまっています。よって、日本企業の現地法人は、旧会計基準・新会計基準のうち、どちらか一方を適用することになります。

次回は一時差異の具体的な内容を中心に解説していきます。