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[実務入門] (18) 税効果会計(基礎編) (1)

今回から税効果会計を説明したいと思います。税効果会計はよくわからないといった話をよく耳にします。ですので、今回は、税効果会計とはどういったものなのかを中心に簡単に解説致します。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1) 税効果会計とは

税効果会計とは、税務と会計のズレを調整するための会計上の修正のことを言います。企業会計上の利益計算と税務上の課税所得計算とはその目的が異なるため、損益の範囲や認識のタイミングに違いがあります。このため、税効果会計を適用しない場合には、課税所得に税率を掛けた額が企業所得税として計上され、所得税費用が税引前利益と期間ごとに対応せず、また、将来の所得税に対する影響(税効果)が表示されないことになってしまいます。このため、このミスマッチを解消するために、日本・中国の会計基準・国際会計基準において、税効果会計が導入されています。

(2) 企業会計上の利益計算と税務上の課税所得計算の違いと税効果会計の適用

税金の計算は、会計上の利益に税率を掛けるのではなく、課税所得に税率を掛けて計算されます。簡単な例を設けて以下で説明します。

利潤表(損益計算書)
売上高 10,000
売上原価 4,000
粗利益 6,000
貸倒引当金繰入額 1,000
税引前利益 5,000

ここで単純に考えれば、税引前利益に企業所得税率25%を掛けた額、すなわち、5,000×25%が1,250が企業所得税額となりそうです。しかし、税金計算においては、貸倒引当金繰入額は費用・損金として認められません。よって、税務上の課税所得は、税引前利益5,000+貸倒引当金繰入額1,000と計算され、6,000ということになります。企業所得税は6,000×25%で1,500です。したがって、税金計算後の利潤表は以下のようになります。

利潤表(損益計算書)
売上高 10,000
売上原価 4,000
粗利益 6,000
貸倒引当金繰入額 1,000
税引前利益 5,000
企業所得税 1,500
税引後利益 3,500

結果的に、貸倒引当金繰入額が費用・損金として認められなかったことにより、企業所得税が1,250から250増加し1,500になってしまいます。この250のズレを調整するために、税効果会計を適用します。(250の増加分は貸倒引当金繰入額1,000×25%として計算されます)
以上のように企業所得税が増加してしまう場合は、増加分を繰延所得税資産という科目で資産負債表(貸借対照表)の資産に計上し、同時に繰延所得税調整額として利潤表(損益計算書)の企業所得税から控除します。

利潤表(損益計算書)
売上高 10,000
売上原価 4,000
粗利益 6,000
貸倒引当金繰入額 1,000
税引前利益 5,000
企業所得税 1,500
繰延所得税調整額 △250
税引後利益 3,750

このように、税務と会計のズレを調整するものが税効果会計になります。以下は税効果適用前と適用後を比較した表になります。

税効果適用前 税効果適用後
税引前利益 5,000 5,000
企業所得税 (1) 1,500 1,500
繰延所得税調整額 (2) △250
税引後利益 3,500 3,750
 
所得税費用 (1)+(2) 1,500 1,250
所得税費用/税引前利益 30% 25%

上表からわかるように、税効果適用後は所得税費用は1,250となり、結果として、税引前利益に企業所得税率25%を掛けた額に一致することになります。

次回も引き続き税効果会計について解説を予定しています。