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[実務入門] (9) 固定資産 その2

前回は、固定資産に関する会計処理マニュアルのポイントについてお話しましたが、今回も引き続き固定資産のポイントについて説明したいと思います。今回は固定資産の減価償却を取り上げます。減価償却とは、固定資産の支出に要した費用をその資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きをいいます。機械を例にとって説明しましょう。機械は製品を製造するために使用されます。毎年、その機械を使用して製品を製造し、それを販売して売上(中国では収入と表示されます)を獲得していくうちに、機械はだんだんと古くなり、その価値が下がっていきます。この価値の下落部分を、製品を販売して得られる売上に対応する費用として計算しようとするのが減価償却という考え方になります。減価償却については、日本においても中国においても法令上のルールがあります。よって、ルールに基づいた会計処理マニュアルの作成が必要となってきます。以下においてポイントを説明します。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1) 減価償却方法

会計上は、定額法、生産高比例法、200%定率法、級数法から実態に合わせて合理的な方法を採用することができます。しかし、税務上は、基本的に定額法しか認められていません。よって、会計上、定率法を採用した場合は、税務申告時に調整が必要となってきますので注意が必要です。定率法が認められていないことが、日本との大きな違いです。会計処理マニュアルにおいて、アイテムごとに採用した減価償却方法を記載し、税務調整が必要なアイテムはその旨を明記し、税務調整漏れを防止することがポイントとなってきます。

(2) 耐用年数

耐用年数とは、減価償却資産が使用に耐える年数をいいます。各年度に費用配分していく場合の計算の基礎となります。会計上では、以下の要素を考慮して耐用年数を決定します。
・当該資産の予測される生産能力または生産物の生産高
・当該資産の予測される有形損耗および無形損耗
・当該資産の使用に対する法律または類似の規定による制限
会計上は上記のように経済的実態を重視しますが、税務上は最低耐用年数が法定されているため注意が必要です。企業所得税法実施条例によると、最低耐用年数は以下のように規定されています。

よって、最低耐用年数、経済的実態を考慮して、耐用年数を決定することがポイントとなってきます。

(3) 残存価額

残存価額とは、減価償却資産の耐用年数が到来した時の処分可能見込額をいいます。会計上、税務上(新企業所得税法)ともに、固定資産の性質および使用状況に基づき、合理的に残存価額を決定する必要があります。旧企業所得税法では残存価額は10%以上という規定が設けられておりましたが、新企業所得税法において改正されているため、注意が必要です。ちなみに、日本においては2007年の税制改正により、備忘価額である1円になるまで減価償却をすることができるようになっています。

次回も引き続き、固定資産に関する会計処理マニュアルのポイントについての説明を予定しています。