中国

[実務入門] (2) 会計処理マニュアル

前回解説した財務管理制度は、会計に関する会社の方針、手続き、基本事項などをまとめ成文化したもので、総則的な内容が多くを占めます。ただ中国現地法人の会計に関する理解を日中間で同レベルとするため、または複数ある中国現地法人の会計処理方法を統一するため、あるいは会計担当者の引継ぎをスムースに行えるようにするために、財務管理制度とは別に会計処理マニュアルを作成することは有用です。この会計処理マニュアルは中国語では一般に、「会計核算手冊」といいます。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

「会計核算手冊」では、資産、負債、資本、売上、原価、費用、その他損益につき、各会計科目の定義、帳簿や明細科目の設置、管理方法、会計仕訳方法などを記載します。まずは資産を例に記載内容を例示します。中国の企業会計制度では、資産は大きく、流動資産、長期投資、固定資産、無形資産およびその他資産、繰延税金に区分されます。このうち固定資産は、日本の有形固定資産に相当します。

流動資産の定義は、企業会計制度において、「1年または1年を超える一営業循環期間内に現金化または費消される資産であり、主として、現金、銀行預金、短期投資、未収及び前払金類、前払費用、棚卸資産などを含む」と規定されているので、会計処理マニュアルにおいても同様に定義することになります。

流動資産に属する主要な会計科目について記載する内容を例示します。まずは現金ですが、会社が保有する現金の範囲を示します。人民元以外にも日本円やほかの通貨もある場合にはその通貨を示します。

次に現金の明細科目(現金-人民元、現金-日本円など)の記載と設置する帳簿(日記帳、明細帳など)を記します。

現金管理の項目では、まず会社が直接現金を取扱う取引内容を列挙します。一般の現地法人では現金を直接取扱う取引はある程度限定されており、現金取引の内容を列挙することで、通常の取引とイレギュラーな取引を区分することができます。

例えば収入の場合、銀行預金からの小口現金の引出し、従業員からの仮払金の戻り、少額の売上代金、使用済みプリンタートナーの売却、廃棄材料の売却などが考えられます。また支出では、従業員に対する出張仮払金、業者に対する少額の支払い、その他会社規定により現金での支払いが認められるものの支出などの具体例を示します。

次に日常の現金管理方法の記載では、現金を収入した際には、記帳した後、収入した当日に銀行に預け入れることを原則とします。

支払いについては認められた使用範囲内での支払いを行い、ただし収入した現金を直接支払いに当ててはいけない(中国語で「座支」といいます)ことを示し、1日の現金保管限度額はいくらまでなどと規定します。1日の終わりには現金の棚卸を下記の表などを用いて行い、棚卸による有高と現金日記帳の残高に差異がある場合には原因を記載し、原因が不明な場合は上位職の責任者に報告することなども示します。

また、考えられる日常の現金取引について会計仕訳を次のように例示し、関連担当者間の会計処理方法に対する認識を統一します。

出張仮払いの場合

借) 其他應収款(「その他未収入金」)  貸) 現金

出張仮払金を精算する場合

借) 費用科目(交通費など)
借) 現金
貸) 其他應収款

スクラップ売却収入

借) 現金   貸) 其他業務収入(「その他業務収入」)

現金棚卸により差額が出た場合

棚卸差益の場合

(発生認識時)    借) 現金   貸) 待処理財産損溢(「未処理財産損益」)
(処理確定時)    借) 待処理財産損溢   貸) 営業外収入

棚卸差損の場合

(発生認識時)    借) 待処理財産損溢  貸) 現金
(処理確定時) 回収予定のある場合:     借) 其他應収款   貸) 待処理財産損溢
原因不明で処理する場合: 借) 管理費用     貸) 待処理財産損溢

库 存 现 金 盘 点 表 (現金棚卸表)

币种(通貨):                                                                  盘点日期:   年  月   日

现金清点情况 帐目核对
面额 张数 金额 项目 金额
100元 盘点日现金日记账余额
50元 加:收入未入帐
20元
10元
5元 减:付出未入帐
2元
1元
5角 调整后现金余额
2角 实点现金
1角 差额
5分
2分
1分
合计
处理意见:

部长:                 监盘人员:               出纳员: