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[タックスヘイブン] (2) 最近の改正-統括会社への適用除外要件の緩和

前回は駆け足でタックスヘイブン対策税制のアウトラインを説明しました。簡単にまとめると、日本の居住者が実質的に50%超支配している外国法人は、原則として日本でも合算課税されてしまうのですが、事業基準、実体基準、管理支配基準、関連者基準又は所在地国基準の4要件を全て満たす場合には適用除外となる、ということでしたね。

このことをグループ全体の税金の話として考えますと、適用除外になるかならないかは大きな違いですから、タックスヘイブン法人に持たせる機能について検討する際には、事業上の目的だけでなくこれら税務上の要件も十分に検討を行っておくことは、グループ全体の最終利益を考える上で、とても重要なことです。タックスヘイブン対策税制は租税回避の防止を第一義としていますので、ちゃんと合理的な事業の実体さえあれば、通常は適用除外要件を満たすことができます。

しかし、形式的にはねられてしまう要件もあるのです。それが事業基準です。タックスヘイブン法人が以下の事業を主たる目的とした場合には、会社がどんな主張をしようとも絶対に適用除外にはしてもらえません。

  1. 株式等、債権の保有
  2. 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式、著作権、出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものの提供
  3. 船舶、航空機の貸付

これらの事業は、一般的にどの国の法人でも事業として行うことは可能ですので、税率の低い国で事業をするほど会社の手取りは増えます。従って、国が何も対策しないと、このような事業の所得はみんなタックスヘイブン国に逃げてしまうので、形式的に一律で塞いでおく必要があるのです。

今回行われる平成22年度の税制改正では、この事業基準のうち①株式等、債権の保有について、要件が緩和されることになりました。新しく「統括会社」という概念が創設され、①株式等、債権の保有に該当する場合でも、非統括会社の株式等の保有を行う一定の統括会社は事業基準から除外されることになったのです。

それではこの「統括会社」とは、どのような会社が該当するのでしょうか?残念ながら執筆時点では未だ法律案(平成22年2月5日提出)しか出ていないため、現時点ではその詳細は分かりませんが、現状入手できる情報から以下のようにまとめてみました。

まず、その法律案及び法律案要綱では、以下のように定義されています。

統括会社 = 他の外国法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じて、その収益性の向上に資する業務を行う場合における、当該他の外国法人として政令で定めるものの株式等の保有を行うものとして政令で定めるもの

誤解を恐れず言い換えれば、統括会社とは、子会社の事業内容や利益について適時に経営管理を行う体制があり、必要に応じて子会社に口を出し、子会社の最終利益について全面的に責任を負う存在、を想定していると言えます。従って、統括会社の役員及び主要な従業員は、当然に高度な経営スキルを要求されていると解釈できます。

また、具体的な要件は政令に委任されていますのでこれもあくまで推測の域を出ませんが、平成22年度税制大綱(平成21年12月22日公表)によれば、以下のような内容になることが予想されます。

というのが統括会社への適用除外要件の緩和の概要ですが、既にお気づきの通り、この改正の趣旨としては香港法人もしくはシンガポール法人の活用を前提としていると思われます。せっかくこのような制度改正がなされたのですから、うまく活用できる方法はないか、是非検討してみてください。我々もそのお手伝いをさせていただきます。