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[まとめ] 非居住者課税を基本から10分で理解するためのまとめ

2009年3月に非居住者課税に関する3つの管理弁法が公布され、8月には租税条約を適用する場合の管理弁法が出されました。

一連の動きは、2009年1月の移転価格税制強化にも見られる、中国の国際的地位の上昇に伴う国際課税の強化と考えられます。課税が両国間にまたがる日本の投資者にとっては非常に重要な動向です。

今回はこの4つの規定の内容を税制の基本と合わせてまとめておきたいと思います。

1. 居住者と非居住者

はじめに企業所得税法上の居住者と非居住者に関する規定を確認しておきます。

企業所得税法第3条には居住者及び2種類の非居住者と、それに対応する納税義務が規定されています。

また非居住者Bに対しては10%の税率が適用され、所得の支払者が源泉徴収を行います。これを表にまとめると以下のようになります。

納税者の区分と課税所得
国内源泉所得 国外源泉所得(1) 国外源泉所得(2) 税率
居住者 申告 申告 申告 25%
非居住者A 申告 申告 25%
非居住者B 源泉徴収 10%

以上から分かるように、非居住者は機構・場所を有するかどうかで2種類に分けられ、税率及び申告の方法が異なります。
従って確定申告と源泉徴収に関する各弁法は、それぞれ以下のように対応づけられることになります。

2. 非居住者Bによる源泉徴収登記

非居住者Bは上記のように源泉徴収の対象となる納税者ですが、今回の規定により各種の届出が義務付けられることになりました。

国税発[2009]3号は、配当、利子、賃貸料、特許権使用料、財産譲渡所得等のいわゆる不労所得について、非居住者による源泉徴収登記を義務付けています。

尚、源泉徴収者による納税期限は、源泉徴収より7日以内です。

3. 日中租税条約の恒久的施設と事業所得

次に国家税務総局令第19号と国税発[2009]124号を理解するために、日中租税条約の内容を確認しておきます。

日中租税条約では、中国国内の恒久的施設を通じて事業を行わない限り、事業所得に対して中国で課税されないと規定されています。

非居住者が中国国内で取得する事業所得としては、主に据付工事、技術支援、コンサルティング等の役務の提供が挙げられます。この場合、中国での役務の提供機関が6ヶ月(コンサルティングの場合は複数回合計で6ヶ月)を超える場合に、「中国に恒久的施設を有する」と認定されます(以下の表を参照)。

恒久的施設 税率
6ヶ月以上 あり 25%
6ヶ月未満 なし

4. 工事請負と役務提供の登記と日中租税条約の適用

国家税務総局令第19号は、非居住者が中国国内で工事請負及び役務提供を行うときに租税条約の適用がある場合、「非居住者企業による請負工事作業と役務の提供に関する租税協定優遇報告表」の提出を義務付けています。すなわち6ヶ月を超えない工事・役務であれば中国で免税となりますが、当該資料の提出が条件となります。

また、非居住者と発注者に工事請負・役務提供の登記が必要です。

5. 租税条約の適用における審査と備案

国税発[2009]124号は、租税条約の適用について審査または備案を要求しています。

備案に関しては、「非居住者企業による請負工事作業と役務の提供に関する租税協定優遇報告表」を提出した場合は、そのときに出した資料を重複して提出する必要はありません。