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[監査入門] こんな監査報告書をもらったら大変!

長かった監査期間も終わり、ようやく監査人から監査報告書のドラフトが完成したとの報告を受けました。内容を確認して欲しいとのことですが、少なくとも20ページはありそうです。しかも数字はともかく、文章についてはなにがなんだかサッパリ・・・。監査報告書の確認をする上で、ポイントは一体どこにあるのでしょう?

以前解説したとおり、そもそも監査は、監査人に財務諸表を保証してもらうために行っているわけです。そうであれば、監査報告書は、(1)監査人の保証対象(=財務諸表)と、(2)監査人の保証内容(=監査意見)、で構成されるのが自然な形となります。そして、監査人に保証を頼んだ側からすれば、肝心の監査人の保証内容(=監査意見)にどんなことが書いてあるのか?といったことが一番重要なことじゃないでしょうか?つまり、監査報告書の確認をする上で外しちゃいけないポイントは、監査意見の種類なのです。

それでは、監査意見の種類について説明しましょう。全部で4種類あります。

(1) 適正意見(Un-qualified opinion)
一言で言えば、「信用してOKです!」
場合によっては小さなミス等はあるかもしれませんが、全体として財務諸表利用者の判断を妨げるようなものはない、という意見です。この意見になっていれば、頼んだ方としても安心です。

(2) 限定付適正意見(Qualified opinion)
一言で言えば、「信用してOKですが、一部に重要な注意事項があるので、利用する上でそこだけは注意してください!」
これは、財務諸表の利用者に影響を与えるような間違いや会計ルール違反があるので、その点について監査意見の中で注意を促しています。ただし、その点以外は信用してOK、という意見です。頼んだ方としては、この限定の内容がやむを得ない事情によるものである以外は、通常の適正意見が得られるように財務諸表を修正する等の対応が必要となります。

(3) 不適正意見(Adverse opinion)
一言で言えば、「信用したらダメです!大きく間違ってます。」
この意見は、財務諸表に致命的な欠陥があるときに出されます。この意見がついていたら、誰もこの監査報告書を信用してくれません。税務署も調査に来るかもしれませんし、銀行は融資しないでしょうし、親会社からの総経理に対する信用もなくなるでしょう。監査人がこの意見を記載した理由を真摯に受け止め、直ちに改善することが必要となります。

(4) 意見差し控え(Disclaimer opinion)
一言で言えば、「よく分かりません!」
そんなのアリか?という意見ですが、監査意見を表明する上で実施しなければならない監査手続がなんらかの事情で実施できなかった場合等、監査人側で期限までに結論を出せなかった場合に記載されます。結果的に監査を受けていないようなものですので、不適正意見と同様に、誰もこの監査報告書を信用してくれないでしょう。差し控えに至る原因を解消すべく努力しなければならないでしょう。

それでは、香港の監査報告書を例に見てみましょう。「INDEPENDENT AUDITOR’S REPORT」の「Opinion」の部分が監査意見となります。(2)~(4)の意見は目立つように記載されていますが、(1)適正意見の場合には、さらっと数行で「特に問題なかったよ」ということが書かれています。変なことが書かれていなかったら適正意見なんだ、くらいの感覚で問題ないと思います。

監査意見のパターンなどは意外に知る機会もないと思いますので、今回の内容がチェックの際に参考になれば幸いです。