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[全訳] 中国全土での増値税改革の実施についての財政部、国家税務総局担当責任者による記者会見

中国全土での増値税改革の実施についての
財政部、国家税務総局担当責任者による記者会見 [原文] [1]

2008年11月12日 新華社発

先日、国務院常務委員会により財政部、国家税務総局が提出した増値税改革法案が承認され、2009年1月1日より中国全土での増値税改革が実施されることが決定した。11日には財政部と国家税務総局の担当責任者が、増値税改革に関して記者から提出された問題について回答を行った。

質問:現在の経済情勢下で増値税改革を実施することは、中国経済の安定的かつ高度な経済成長の持続にどのように重要な意味を持つのか。
回答:今回の増値税改革は、企業が購入する設備に係る増値税を控除することを認めることによって、現在の生産型増値税制度下で発生している二重課税の要素を取り除き、企業の設備投資に対する租税負担を下げることをいう。税率を変更しないという前提を維持する現状においては、これは大変な減税政策である。企業に対する設備購入時の二重課税回避は、投資促進と内需拡大、企業の技術発展や産業構造の変革、経済成長の方向転換を促進することに寄与する。目下、米国のサブプライムローン問題に端を発する金融危機は、ヨーロッパ、アジア、南米に波及、全世界の経済成長も明らかな減速を示し、一部の国家に至ってはマイナス成長を記録する等、実体経済にも多大な影響を与えている。この情勢下で増値税改革を適時に実施することは、企業発展のための体力増強、我が国の企業競争力や危機回避能力の向上、国際的な金融危機が我が国にもたらす不利益の克服に対して非常に有効である。推計によると、今回の増値税改革によって財政収入は1,200億元の減収が予想されているが、これは単独の税制改革における中国歴史上最大の減税額となり、この政策が中国経済の安定的かつ高度な成長の持続にとって積極的な効用があると信じている。

質問:今回の増値税改革が増値税制度の改善に対してどのように重要な意味を持つのか。
回答:増値税制度の最も優れている点は、生産の専業化によって生じる二重課税を防止することができるところにある。増値税制度は、購入する固定資産に係る税金の控除の違いにより、生産型、収入型および消費型の三種類に分けられる。生産型は購入する固定資産に対して納めた増値税の控除が認められず、課税対象は国民総生産額に相当するため最も大きく、二重課税の程度が最も重い。収入型は固定資産の当期減価償却額に係る部分の増値税控除を認める。課税対象は国民収入額に相当し、生産型に次いで大きい。消費型は購入する固定資産に係る増値税を一括で控除することを認め、課税対象は最終消費額に相当するため最も小さく、二重課税の防止については最も徹底している。現在、世界の140を超える国々で増値税制度が採用されているが、圧倒的多数の国では消費型増値税制度が実行されている。
1994年、財政収入への考慮と投資加熱の抑制という観点から、我が国では生産型増値税制度の採用を選択した。その後、社会主義市場経済体制の着実な発展と経済のグローバル化が一層進行するにつれて、増値税改革の必要性が日増しに目立ってきた。
中国共産党第16期中央委員会第3回全体会議では、適時にこの改革を実施することを明確に打ち出すと共に、「第11期五カ年計画」において期間内でこの改革を完成させることをはっきりと示した。2004年7月1日からは、東北、中部等の一部地域において改革の試験的な試みが既に実施されており、試行段階での順調な運用もあり予想していた結果を得ることができた。2008年の国務院政府活動報告書では、中国全土での増値税改革法案の制定を検討する必要性が提起される。第11期全国人民代表大会で審議、同意された全国人民代表大会財政経済委員会の予算草案に関する審査結果報告では、全国での増値税改革実行に向けて努力することが明確に示された。このような状況下、国務院は、増値税改革を実行して我が国の増値税制度を整備、規範化する共に、徴税制度を科学発展の要求に合わせることを決定する。また、増値税制度の完全な整備のため、全国人民代表大会常務委員会から要求されている5年以内の増値税法制定を完了させることに関しても条件を附した。

質問:増値税改革法案の主要内容はどのようなものか。
回答:今回の増値税改革法案の主要内容は以下のようである。2009年1月1日より、現行の増値税率を変更しないという前提を維持しつつ、中国全土(地域および業種の区別なく)の全ての増値税一般納税人が新たに購入する設備に係る仕入増値税額を控除することを認め、控除が終わらなかった部分の仕入増値税額は次期に繰り越して引き続き控除を行うことができる。徴税漏れが発生することを防ぐため、企業の技術革新と関係がなく、個人消費と混同され消費税の課税対象となる小型自動車、オートバイ及び遊覧ボートは上述した設備から除かれる。増値税改革に対応する措置として、輸入設備の増値税免税政策と外商投資企業が国産設備を購入する際の増値税還付政策は同時に廃止される。また、小規模納税人の徴税率を一律3%へ引き下げ、鉱産物製品に対する増値税率は17%へ戻される。

質問:東北、中部等の一部地域で試験運用された増値税改革の状況はどうであったか。今回の改革法案と試験運用内容では何が異なるのか。
回答:国務院の決定により、2004年7月1日から、東北三省の設備製造業、石油化学工業等の八業種を対象に新たな増値税の試験運用が実施された。2007年7月1日には、試験範囲を中部六省の古くからの工業基地26地域に展開する電力業、採掘業等の八業種に拡大した。2008年7月1日には、試験範囲は内モンゴル自治区東部の五都市と四川大地震の被災地へ広げられた。四川大地震被災地を除く試験地域での試験運用の主な内容は、以下のようである。企業が新たに購入する設備に係る仕入増値税額と企業の未納分増値税との相殺をまず行い、それから企業の増値税額の当年度増加分を限度に控除を行い、控除が終わらなかった部分の仕入増値税残高は次期に繰り越して引き続き控除を行う。
統計では、2007年末までに、東北、中部地域の試験地域で新たに増加した設備に係る仕入増値税額は合計244億元、未納分増値税額との相殺や企業への還付がされた増値税額は合計186億元であった。試行段階での運用は順調に行われ、試験地域の経済発展、設備更新と技術革新を強力に推進すると共に、全国的な増値税改革を遂行するための豊富な経験を蓄積した。
試験運用での内容と比較すると、今回の全国増値税改革法案においては三か所の調整を行った。一、企業が新たに購入する設備に係る仕入増値税額に対して税金の還付ではなく、規範的な控除方式を採用する。企業が新たに購入する設備は、原材料と同様に通常の方法でその仕入税増値額を直接控除する。二、増値税改革を、地域と業種の制限を撤廃して中国全土で展開する。三、増値税改革の内需拡大に対する積極的な働きかけを確保するため、改革後に企業が設備に係る仕入増値税額を控除する際には、増値税額の増量幅による制限を受けないこととする。

質問:控除範囲に含まれる固定資産とは具体的に何を指すのか。家屋、建築物等の不動産を控除範囲に含めることは認められるか。
回答:現行の増値税課税範囲に含まれる固定資産とは主に、機器、機械、輸送工具およびその他生産、経営に関連する設備、工具、器具を指す。したがって、改革後に控除が認められる固定資産とは依然として上述の範囲にあるものを指し、家屋、建築物等の不動産は増値税の控除範囲に含まれない。

質問:今回の改革では、なぜ輸入設備免税政策と外商投資企業の国産設備購入時における増値税還付政策が取り消されなければならないか。
回答:今回の改革によって取り消される輸入設備の増値税免税政策とは、主に≪輸入設備の税収政策に関する国務院の通知(国発[1997]37号)≫と≪国務院官房が対外経済貿易部門等へ伝達する当面の更なる外商投資を奨励することに関する意見の通知(国弁発[1999]73号)≫で規定される増値税免税政策を指す。これらの政策は、我が国が生産型増値税を実行するという背景の下で公布されたものであり、関連産業による外資利用と、海外から先進技術導入を奨励することが主な目的であった。但し、政策の遂行過程においては若干の問題も報告された。主には、輸入免税設備の範囲が比較的広かったため、自身で新たな物を創造することがなされず、設備の国産化と自国の設備製造業の発展に不利益となったこと。また、内資企業の輸入設備免税範囲が外資企業と比べて狭く、税負担が公平ではなかった。増値税改革後は、企業が購入する設備が輸入か国産に関わらずその仕入増値税額を控除することができるため、旧来の政策は新たな法規の下で実行することが可能であり、今までのような輸入設備に対する免税の必要性が存在しなくなったため、当該政策は廃止することとなる。
外商投資企業の国産設備購入時における増値税還付政策も、生産型増値税と輸入設備の増値税免税という背景の下で公布されたものである。増値税改革によって、国産設備も同じように仕入増値税額を控除することができるため、外商投資企業の国産設備購入時における増値税還付政策も廃止するべきである。

質問:金属鉱産物と非金属鉱産物製品の増値税を13%から17%に戻すことにはどのような意図があるのか
回答:1994年の税制改革時において、一部の鉱産物製品では未だ計画価格と計画生産を実施するなど、過去から引き継がれていた問題が比較的多かったため、国務院の承認を経て、1994年5月より金属鉱産物と非金属鉱産物製品の税率を17%から13%へ調整した。この政策は採掘業の安定と発展に一定の役割を果たしてきたが、同時にいくつかの問題も引き起こした。主には、一、再生ができない鉱産資源に対する低税率の適用が、資源節約および環境保護という目的に合わない。二、資源採掘地域の税収収入減少が、資源採掘地域の公共生産物の提供能力を弱めた。三、鉱産資源は基本的に原料として使用されるが、鉱山企業の増値税納付額が少ないことが、次の生産経営主体の仕入増値税額の減少として追加徴収されており、政策の効果が明らかではなかった。四、低税率が適用される貨物とその他貨物を区別することが、徴収者と納付者の双方の業務コストを増加させた。
税務改革後は、鉱山企業が購入する設備は仕入増値税額の控除可能範囲に含まれるため、全体としての税務負担はある程度下がることになる。税負担の公平性、税制の規範化、資源節約と総合的利用の促進のため、金属鉱産物、非金属鉱産物製品の増値税税率を17%へ戻す必要がある。
鉱産物製品の増値税率を引き上げ後、次の生産経営主体での控除可能な仕入増値税額はそれに応じて増加するため、最終製品に係る増値税は増加も減少しない。税負担が前後の生産経営主体間で変わっているが、総量に占める財政収入は変化しない。

質問:今回の改革は中小企業の発展に何の具体措置がありますか。
回答:増値税改革の対象は増値税一般納税人であり、改革後これら納税人の増値税負担は普遍的に減少する。但し、規模が小さく、会計決算が不完全である小規模納税人(個人経営主を含む)においては、売上高と徴税率のみを以て増値税納付額を計算して仕入増値税額の控除を行わないため、その増値税負担は増値税改革によっても減少しない。
現在の増値税政策では、小規模納税人を工業と商業に区別して、それぞれ6%と4%の徴税率を規定している。小規模納税人と一般納税人の税負担水準を保ち、中小企業の発展と就業機会の拡大を促進するため、小規模納税人の徴税率を当然引き下げる必要がある。現実の経済活動において、小規模納税人の多角的経営は大変一般的であり、実際の徴税管理では小規模納税人を工業、商業と明確に区分することは困難であるため、小規模納税人に対して工業、商業という二種類の徴税率を設置して区分することを止め、小規模納税人の徴税率を一律3%へ下げる。
小規模納税人に対する大幅な徴税率水準の低減は、中小企業の租税負担を軽減させ、今よりさらに有利な経営発展環境を提供することになる。この他、財政部と国家税務総局では、増値税と営業税の徴収起算点引き上げ等の政策を通じて、税務政策上での更なる中小企業発展を支える。